「源氏物語を読む」シリーズの19回目、「薄雲」です。自分の備忘録として書き残しておきます。
光源氏31歳冬から32歳秋の話。この巻は登場人物の心の揺れが描かれます。
・女性の視点
明石の君は、姫君をどうすればいいか悩みます。源氏との間の子供なのだから源氏に引き取られることもやむをないのかもしれませんが、とは言え自分のもとでこれまで育ててきた子供です。手放したくないのは当然です。姫君の将来を考えれば源氏のもとに置いたほうがいいのでしょうが、継子のように扱われるのも心配です。悩みぬいた末、結局はて姫君を源氏に委ねることを決断します。明石の姫君の心情の表現は、女性の視点が明確に表れています。当時も男性社会であったわけですが、その中で女性の視点での物語が生成しているというのは、画期的なことです。
・紫の上の心の揺れ
明石の君と同じように、姫君をあずかる紫の上も心が揺れます。自分が生んだのはない源氏の娘を育てる気持ちはどうだったのでしょうか。紫の上は姫君の可愛らしさに魅了されていきます。このあたりの心の揺れはまさに現代小説です。
・藤壺の死
翌年、太政大臣(頭中将と葵の上の父)が亡くなります。そして3月に病に臥していた藤壺も37歳で亡くなります。一つの物語が終わりを告げます。
・秘密がばれる
法要が一段落した頃、藤壺の時代から仕えていた夜居の僧が、冷泉帝に出生の秘密を密かに告げたます。その時の冷泉帝の心も大きく揺れます。子供の心も大きく揺れ動くのです。
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