ミュージカルを映画化した『ディア・エヴァン・ハンセン』を見ました。SNSと発達障害という現代的な題材を用いて、助け合うことの意味を考えさせる映画だった。
主人公のエヴァンハンセンは、発達障害で苦しんでいる。友人もできず、生きることも精一杯である。自分を肯定的に受け入れるように言われるが、それができないから苦しいのである。
エヴァンはある青年と知り合いになる。知り合いとは言っても、勝手に絡まれてしまっただけだった。その青年は自殺してしまう。ある勘違いから、エヴァンと青年が友人で会ったと、青年の家族は思い込んでしまう。エヴァンは真実を語ろうとするが、それをうまく説明できず、また家族への親切心から青年と友人だったと嘘をついてしまう。その嘘がいつのまにか美談として大きくなっていくきっかけとなり、SNSで大拡散する。SNSの良さと悪さが描かれ、現代社会の特徴が現代人に与える影響をえがくのに成功している。
青年も発達障害であった。SNSによって発達障害をもった人たちの連帯が広まっていく。エヴァンは嘘をついたことへの後ろめたさはあるが、その嘘がいいことに使われていることから、その嘘を隠し通すことになってしまう。しかしその嘘は結局は悲劇を生み、エヴァンは自身の嘘を告白する。誰もエヴァンを相手にしなくなる。その苦しみの中で、エヴァンは本当に青年のことを知り、本当の「友達」のような存在になろうとする。失敗からどう再生するか。再生の物語ともなっている。
構造がおもしろく、しかも現代的な問題がせまってくる。
私たちは何度も傷つき、そのたびにどん底に突き落とされる。諦めたいと思うことがある。しかしそこから再生できること。再生することを支援できること、それが大切なのだ。
学ぶことの多い映画だった。
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