映画『ザ・ホエール』を見ました。舞台作品を見るような会話劇で、人間の弱さとその弱さを乗り越える勇気を描く、考えさせられる映画でした。
大学で文学を教えるチャーリーは、同性の恋人に先立たれます。その精神的なショックのために過食状態になり、動くのもままならないほど太ってしまいます。もはやその状態から抜け出せないほどにまでなっています。大学の授業はオンラインで行っています。カメラの故障だと言って自分の姿は生徒に見せません。
チャーリーを助けてくれるのはアランの妹であり看護師であるリズです。彼女はチャーリーを恋人のように支えてくれます。このチャーリーとリズの関係が不思議です。
そこに別れた娘が表れます。チャーリーはアランと付き合う前に、結婚をしていて子供もいたのです。娘はチャーリーに対して悪態をつくのですが、チャーリーはそれでも娘にやさしく接します。そして娘に自分の財産を与えると言うのです。チャーリーは実はかなりのお金を蓄えていたのです。しかしそれほどの蓄えがあるのならば、医療を受けることもできたはずです。それなのにそれを選ばずに娘に財産を残すことを決断していたのです。
この映画は自分が自分の意志で正しいことをすること、自分の人生を自分の力で決定すること、それを問いかける映画でした。
ただしわかりにくい。日本では医療を受けるのが当たり前です。しかしアメリカは全く違います。医療を受けるかどうか、保険に入るかどうか、すべて自己責任なのです。だから日本人には分かりづらいのかもしれません。日本人は国や会社が面倒見てくれると考えてしまっています。だから自分の問題としてしっくりと来ないのです。
日本もだんだん自己責任の国になりつつあります。経済的に国が面倒を見ることが不可能になりつつあるのです。特に自民党と経済界はその方向に舵をきっています。するとこの映画は明日のための映画なのかもしれません。
この映画は舞台作品のように思えました。見終わった後に調べてみたらやはり舞台の映画化でした。『ブラック・スワン』などのダーレン・アロノフスキー監督が、劇作家サミュエル・D・ハンターによる舞台劇を映画化したということです。英米の舞台は刺激的です。
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