とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

『ザ・ドクター』を見ました。

2021-11-27 16:59:39 | 演劇
 パルコ劇場で『ザ・ドクター』を見ました。近年の閉塞的で暴力的な陰湿な言論状況を見事に描き、怒りと絶望に苦しむ現代人を描く傑作です。すばらしい舞台でした。

作:ロバート・アイク 
翻訳:小田島恒志  
演出:栗山民也
出演:大竹しのぶ
橋本さとし 村川絵梨 橋本淳 宮崎秋人 那須凜 天野はな 久保酎吉 
明星真由美 床嶋佳子 益岡徹

 大竹しのぶ演じるエリート医師・ルースのもとへ、自ら妊娠中絶処置を行った一人の少女が運び込まれる。生死をさまよう少女のもとへ「彼女の両親から臨終の典礼を頼まれた」と神父が現れるが、ルースは面会謝絶を理由に彼の入室を拒否する。このことで、ルースは世間から激しいバッシングを受ける。

 例えば皇室のスキャンダルで昨今の日本のマスコミは大騒ぎした。死ぬまでたたき続けるぞというマスコミの姿勢に私はうんざりしたし、犯罪性まで感じた。おそろく私と同じようにマスコミに対する嫌悪感を感じていた人は多かったはずだ。しかし、その意見は受け入れることなく、マスコミは暴走する。現代はそういう時代なのだ。

 権力のある官僚が森友問題をもみ消し、一人の公務員が死ぬほどの苦しみを味わっていた。それを誰もが感じていながら、いつの間にか死んだ公務員を見せしめにして、権力に逆らうとこうなるとしか感じられないような状況を作ってしまった。現代とはそういう時代なのだ。

 誰もが権力の横暴さに気が付きながら、そしてそれに苦しめられながらも、いざ自分が戦うとなると尻込みをするような状況を作り出している。社会は表面では平穏でありながら、その裏側では不満のマグマがたまっていく。現代とはそういう時代なのだ。

 そんな時代の閉塞感を見事に描いた舞台だった。見事である。

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