来年度からの大学入試における英語の民間試験の活用は中止となった。しかし新テストは予定通りに実施される。現在懸念されているのは国語の記述式の導入である。何が問題なのか。
①採点にブレが生じるのが確実である。
記述式の問題というのは採点者の裁量によって採点にブレが生じる。これは当たり前のことなのだ。記述式でもブレが生じないと説明している人もいるが、それはウソに決まっている。きちんと採点した経験のない人間か、ことばを数式と同じものだと勘違いしている「インテリおバカ」でしかない。ことばというのは本質的に曖昧性がある。だから伝えたいことを過不足なく伝えることは無理なのだ。(逆に言えば伝えたいことをできるだけ正確に伝えることが大切であり、だからこそ記述式が必要なのだ。)
②受験生の自己採点も困難である
採点も困難ならば受験生の自己採点も困難であるのはあきらかだ。高校の国語教師が自己採点を手伝うことになりかねない。ただでさえ働きすぎの教員にまたあらたな負担がかかる。
③大学側の対応がでたらめだ。
自己採点の結果を点数化しきちんと評価に取り入れる大学もあれば、参考程度としか扱わない大学もある。受験生はこのバラバラな対応にどう向かうべきか考えなければならない。記述式試験をほとんど評価にいれない大学を受験しようしている人は記述式はまったくやらないということも可能になるのだ。100分の試験時間の中で記述式をやらなければ他の問題に十分な時間を充てることができる。これは有利になる。しかしそれをやってしまえば、他の大学の受験には大きな不利となる。これは賭けになる。こんな賭けを受験生に強いてしまっていいのだろうか。
④業者の利益誘導型の教育が始まることが懸念される
今回の記述式はベネッセが問題を作り、採点するということである。その対策問題集はベネッセのものを使いたくなるのは当たり前である。もちろんそれ自体が悪いとまではいえない。しかし今回の教育改革によってベネッセは様々なところで学校に入り込んできている。もはや学校はベネッセの下請けである。このままではベネッセの利益のために教育が変化していく危険性がある。
以下話題はずれてしまうがあえて書いておく。
実際に今「JAPAN e-portfolio」というシステムが導入された。これは高校の様々な活動を記録するシステムである。これを大学入試に活用するのでほとんどの高校生はこのシステムに参加しなければならない。この「JAPAN e-portfolio」を管理・運営しているのがベネッセである。もちろんこれだけならばなんの問題もない。ベネッセはこの「JAPAN e-portfolio」に記録するのに便利な学習アプリの「クラッシー」という商品を開発し、各学校に売り込んだ。これは売れる。多くの学校が導入した。果たしてこのような商法が許されるのであろうか。もっと詳しく検証しなければはっきりしたことは言えないが、ベネッセのための教育改革だったのではないかとも感じられる状況なのだ。独占禁止法違反にはならないのか疑問に感じている。
⑤問題の質が安定していない
これまでプレテストなどで記述式の問題はいくつか作られてきた。それなりに評価できる問題もあるが、ひどいものもあった。正解率が0.7%の問題もあり、その問題点についてはこのブログでも書いている。まだまだ記述式の問題の準備が足りていない。
国語の授業改革のためには大学入試が変わらなければならない。だから記述式の導入には賛成である。しかし新テストのような方法での導入は問題がありすぎる。まだまだ説明しきれないことがあるが、今後少しずつこの場で紹介していきたい。
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