世界の街角

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シリーズ⑱:コノーイ30番窯址

2016-12-03 08:38:56 | 窯址・タイ
<続き>

タイ芸術局の案内板には遺跡番号30番とある。そこでタイトルには30番窯址と表示した。
チャリエンからバン・コノーイに向かう道の右側、つまり道とヨム川の中間に在る。窯址は自然の傾斜を利用して築かれたようである。

メジャーを持参し測長した訳ではなく、目分量であるので正確ではないが、長さは7-8mで幅は2.5m程度であろうか。煉瓦構築の地上式の横焔式単室窯である。観て感じた特徴は燃焼室長さが、焼成室の長さに比較し、短いように思われる。また煙道の直径が大きいように見える。素人判断であるが、相当な高温つまり青磁釉が十分に溶け、且つ還元焼成が可能な完成度の高い窯であったろうことが想定される。
焼成室には、焼台が散乱しており、中には黒釉が掛かった焼台も見ることができる。この窯の中の陶片を戴くほどの度胸は、持ち合わせていないので、周辺を探してみた。表層で採取できる陶片は、いかにも少ない印象で、僅かながらでも掘り下げる道具が必要であろう。そのような道具は持ち合わせておらず、従って下写真の小さな破片しか入手できなかった。

まさにシーサッチャナーライの代名詞とも云える陶片を拾うことができた。鍔付きの盤片で、櫛歯文と外壁に鎬状の掻取りをみる。高台が残る青磁碗片も入手できた。下の3点の破片は、青磁釉の下に鉄絵文様がほどこされていたが、あまりにも小片なので、何の絵付けか判読できない。
驚くべきは、左上の最大陶片である盤の青磁釉薬の厚さである。厚さ1mmはゆうに超えて、まさにガラス破片の断面をみるようである。これは相当の高温でないと無理であろう。この1点をみても窯業技術の高さが伺われる。
このコノーイ30番窯の操業年代についての考察であるが、表層採取の陶片や窯の状態から判断するに、完成度が高くなった時点、つまり操業の最盛時の1470-1480年代以降と思われる。この時代は輸出陶の最盛時と重なる。日本に伝世するサンカローク陶はこの時期のものであろう。




                                   <続く>