ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

別所上池(浦伐池)

2018-04-05 16:03:05 | 愛媛県
2018年3月23日 別所上池(浦伐池)
 
別所上池は愛媛県今治市大三島町宮浦にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧では経緯度が記載される一方位置未確認とされ、また所在地と設置河川にも矛盾があります。
ただダム便覧の安部塁氏の『位置未確認ダムを探して・・・別所上池』から宮浦本川左支流明治川源流部にある『浦伐(うらぎり)池』が別所上池である公算大として、今回は浦伐池を訪問しました。
ただしダム便覧に掲載された河川やダムの諸元については矛盾があるため、ここではため池データベースの浦伐池のスペックを採用します。
 
便覧には1937年(昭和12年)に当時の大三島町の事業として建設と記されています。
一方ため池データベースや今治市のハザードマップ、農水省の資料ではすべて浦伐池となっています。
2015年(平成27年)に農水省の補助を受けた愛媛県の事業で改修が行われ、堤体、洪水吐、取水設備等が刷新されました。
 
県道21号線から大山祇神社南側の鶴姫ロードを東に折れ、川沿いの道を進みます。
すぐに隘路となりますが構わず進むと急坂の先に池が現れます。ただし池には転回スペースがないので注意が必要です。わが家のBMWは向きを変えるのに10回以上の切り返しを余儀なくされました。
池は2015年(平成27年)の改修で刷新され、基礎にはコンクリートブロックが積まれ、右岸に洪水吐があります。
ただどう見ても堤高は15メートル以上あるとは思えません。
ため池データベースでは堤高は10メートルとなっています。
 
洪水吐の先に底樋樋門があり維持放流が行われています。
 
洪水吐脇には宮祇池と記された石碑があり、浦伐池のほかに宮祇池の呼び名もあるようです。
大山祇神社の裏手の池とでもいう意味でしょう。
 
改修されたばかりでコンクリートは真っ白
上流面はコンクリートで護岸され洪水吐はラビリンスです。
 
ラビリンス越流頂を真上から。
 
ラビリンスをこのアングルで見るのは初めてです。
 
 
右岸の洪水吐導流部。
 
天端からは海が見えます。
対岸は広島県の大崎上島。
 
天端と下流面
改修で植えられた芝生がようやく根付いてきたところ。
 
土砂吐が開けっ放しで、防災専用ダムのように流入水はそのまま流下しています。
取水設備として傾斜式のシャフトが一本、さらに多孔式斜樋が設置されています。
 
安部塁氏の検証で浦伐池が別所上池である可能性が非常に高いと思われます。
一方でため池データベースでは堤高は10メートル。
仮にここが別所上池だとしてもダムの要件は満たしていません。
 
2234 別所上池(浦伐池)(1283)
ため池コード
愛媛県今治市大三島町宮浦
宮浦本川水系明治川
10メートル(ダム基準未達)
50メートル
7.千㎥/7.5千㎥
管理者未確認
1937年

三戸池(田高田上池)

2018-04-05 14:49:04 | 愛媛県
2018年3月23日 三戸池(田高田上池)
 
三戸(さんと)池(田高田上池)は芸予諸島大三島北部、愛媛県今治市上浦町盛の竹下川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧では1908年(明治41年)に盛地区の事業により竣工と記されています。
大三島では明治以降ミカン栽培が始まり、当池もミカン栽培向け水源として建設されたようです。
便覧や農水省の資料では田高田上池となっている一方、ため池データベースや現地標識は三戸(さんと)池となっており、ここではデータベースに倣い三戸池と記すことにします。
 
西瀬戸自動車道(しまなみ海道)大三島インターから大三島を周回する県道51号線を反時計回りに北上し、盛集落で左手に折れ標高をあげてゆくとミカン畑の先に三戸池の堤体が現れます。
堤体左岸(写真右手)に洪水吐導流部がありますが、木が覆い被さり撮影できません。
 
堤体はフェンスで囲まれ立ち入り禁止。
警告看板では三戸池谷頭と記され、地元では三戸池の呼び名が一般のようです。
谷頭は管理人や責任者の意のようです。
 
天端右岸の建物
どういう役割かわかりません。
 
天端は立ち入り禁止で、池側にはフェンスが張られています。
イノシシ除けだそうです。
 
そう古くない時期に改修が行われたようで、上流面はまだ白いコンクリートで護岸されています。
また堤体中央に斜樋らしきシャフトが見えます。
 
総貯水容量は7万8000立米と小さな溜池ですが、雨の少ない大三島では貴重な水源です。
 
天端から
左が高根島、右は生口島で奥は佐木島になります。
また右下の集落が盛地区となります。
 
3657 三戸池(田高田上池)(1282)
ため池コード
愛媛県今治市上浦町盛
竹下川水系竹下川
17.3メートル
70メートル
78千㎥/78千㎥
三戸池谷頭
1908年

上浦ダム

2018-04-05 13:10:42 | 愛媛県
2018年3月23日 上浦ダム
 
上浦ダムは愛媛県今治市上浦町井口の大三島本川源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
大三島は愛媛県に属する芸予諸島最大の島で、平地が少ない一方温暖な気候を生かしみかん栽培が盛んでした。
上浦ダムは島内東部のみかん畑を中心にした農業施設整備の一環として農水省の補助を受けた愛媛県の事業で1978年(昭和53年)に竣工し、当初は上浦町が、その後の市町村合併に伴い現在は今治市が受託管理を行っています。
その大三島のみかん栽培ですが、1991年(平成3年)以降のオレンジ輸入自由化を受けて不振となり、島内各所に放棄された果樹園が見られます。ネーブルやレモン栽培で柑橘生産を活性化させている東隣の生口島とは明暗を分けています。
 
西瀬戸自動車道(しまなみ海道)大三島インターから国道317号線~県道21号で大山祇神社方面に西進し院主集落の先で左手の市道に入り直進すると上浦ダムが見えてきます。
ダム手前には揚水機場があります。
 
堤頂は31メートル 下流面は刈り払われています。
ダム右岸(写真左手)に洪水吐からの導流部がありますが、逆光と樹木によりうまく撮影できませんでした。
 
そのまま進むとダムサイトに到着。
堤体は左岸側が湾曲しています。
 
天端と上流面
天端両側にはガードレール、上流面はコンクリートで護岸されています。
 
天端からの眺め
右は生口島、左は高根島で奥は佐木島。
 
総貯水容量は15万5000立米。
 
右岸奥にある斜樋。
 
右岸から。
 
右岸の横越流式洪水吐。
 
アングルを変えて。
 
大三島東部の農業を支える上浦ダムですが、島内のみかん栽培は不振を極めています。
 
2266 上浦ダム(1281)
愛媛県今治市上浦町井口
大三島本川水系大三島本川
30メートル
162メートル
155千㎥/155千㎥
今治市
1978年

中野ダム

2018-04-05 11:33:56 | 広島県
2018年3月23日 中野ダム
 
中野ダムは芸予諸島生口島中部、広島県尾道市瀬戸田町中野の中野川水系中野川源流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
瀬戸田町のある生口島は明治時代から続く製塩業を基幹産業としていましたが、1971年(昭和46年)の塩専売法制定により多くの製塩業者が廃業に追い込まれ、製塩業から柑橘を中心とした農業へ事業転換が迫られることになります。
そこで新規果樹園地開拓に伴うかんがい排水施設の整備を行うために、農林省(現農水省)の補助を受けた広島県の畑地帯総合土地改良事業が着手され、その中核施設として1975年(昭和50年)に竣工したのが中野ダムです。
運用開始後は当時の瀬戸田町が、その後の市町村合併により現在は尾道市が受託管理を行っています。
中野ダムの完成により安定した灌漑用水源が確保された生口島は、その後のオレンジ自由化の逆風をレモンやネーブル・はっさくなど付加価値の高い産物に特化することで乗り越え、シトラスの島として日本有数の柑橘産地となっています。
 
今回は因島から西瀬戸自動車道(しまなみ海道)で生口島に向かいました。
生口島北インターから県道81号線を反時計回りに西進し、旧瀬戸田町中心街を南に折れ果樹園の中を南下するとロックフィルの中野ダムが見えてきます。
花崗岩を積み上げた白いリップラップですが、逆光のため色彩感がないのが残念。
 
 
車道を上がるとダムサイトに到着します。
右岸の横越流式洪水吐。
洪水吐に沿って藤棚が作られています。
 
洪水吐導流部越しに。
天端から海が見えるダムです。
 
天端
車両も入れますが、ダートなので歩いて見学します。
 
ダム下には揚水機場がありその先に果樹園地が広がっています。
正面は高根島で左手には三原瀬戸を挟んで竹原方面、右手には三原市の佐木島が見えます。
 
下流面。
 
左岸の取水設備。
 
湖畔に集水トンネル吐口があります
年間降水量が1300ミリ程度の瀬戸内海気候のため、自己流域にとどまらず周辺河川から集水しています。
 
ダム湖インレットに堰堤が沈んでいます。
ダム建設前からあった砂防なのか?ダム建設に合わせて貯砂ダムとして建設されたものかは不明です。
 
上流から
総貯水容量は41万6000立米。
 
1978 中野ダム(1280)
広島県尾道市瀬戸田町中野
中野川水系中野川
A
R
44メートル
170メートル
416千㎥/416千㎥
尾道市
1975年

奥山ダム

2018-04-05 10:25:10 | 広島県
2018年3月23日 奥山ダム
 
奥山ダムは広島県尾道市因島中庄町の大川源流部にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
もともと当地には奥山大池という灌漑用溜池がありましたが、因島北部への灌漑用水拡充を目的とする広島県の畑地帯総合整備事業により再開発が進められ、2009年(平成21年)に奥山ダムとして生まれ変わりました。
奥山ダムは自己流域での集水に加えて大山新池から地下水路により補給を受け、因島北部の重井地区を中心に151ヘクタールの畑地に灌漑用水を供給しています。
管理は尾道市が受託しています。
 
農業用コンクリートダムらしく、洪水吐は自由越流式クレストゲート1門だけ
あとは利水放流設備があります。
 
ダム直下まで立ち入れます。
もろ逆光なので撮影には苦労しました。
 
これが放流設備。
 
下流面。
 
上流面
対岸に管理事務所、堤体に取水設備がビルドインされています。
 
 
減勢工とエンドシル。
 
総貯水容量は29万1000立米。
自己流域からの集水に加えて山向こうの大山新池から地下水路で補給を受けています。
 
天端。
 
竣工記念碑。
  
3135 奥山ダム(1279)
広島県尾道市因島中庄町
大川水系大川
32.7メートル
106メートル
291千㎥/277千㎥
尾道市
2009年

大山奥池

2018-04-05 09:38:22 | 広島県
2018年3月23日 大山奥池
 
大山奥池は広島県尾道市因島中庄町の大山川水系左支流(河川名未確認)源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧では広島県の事業で1943年(昭和18年)に竣工と記されています。
2018年(平成30年)時点ではダム便覧には経緯度は記載されていませんでしたが、広島県の『ため池ハザードマップ』に大山奥池が掲載されており位置を確定することができました。
 
下流から大山下池、大山新池、大山奥池と3基の溜池が並び、最奥が大山奥池となります。
ダム便覧や広島県のため池データベースでは堤高17.1メートルとなっていますが、どう見ても数メートルしかありません。
ダムの堤高は基礎地盤からなので見た目の高さだけでは判断できませんが、池下の畑が盛土された様子もなく、この堤高はいまいち信憑性に欠けます。
 
池の脇に小さなお堂があります。
 
中には石仏が数体鎮座。
 
左岸上流から。
 
天端は未舗装の車道
対岸に民家が2軒あり生活道路になっています。
 
洪水吐は見当たらずこのポンプで水量調節をしているようです。
 
貯水池は小さく便覧では総貯水容量3万8000立米となっています。
 
アングルを変えて天端を撮影
左手が池ですがかなり草が伸びています。
 
3688 大山奥池(1278)
ため池コード
広島県尾道市因島中庄町
DamMaps
大川水系大川
17メートル
41メートル
38千㎥/38千㎥
管理者未確認
1943年