ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

中筋川ダム

2018-04-19 15:19:29 | 高知県
2018年3月27日 中筋川ダム
 
中筋川ダムは高知県宿毛市平田町黒川の四万十川水系中筋川にある重力式コンクリートダムです。
国交省四国地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、中筋川の洪水調節、既得取水権としての灌漑用水への補給と安定した河川流量の維持、四万十市・土佐清水市・大月町・三原村への灌漑用水の供給、宿毛市への上水道用水の供給、高知西南中核工業団地への工業用水の供給を目的として1998年(平成10年)に竣工しました。
その後2019年(平成31年)に支流の横瀬川に横瀬川ダムが竣工し、中筋川流域での治水、利水は格段に向上しました。
 
中筋川ダム建設に際しては景観設計が採用され、階段状の下流面、左右対称のデザイン、ポールのないスッキリとした天端など周辺環境にマッチしたデザインとなっています。
さらに開かれたダムとして、地元自治体と共同でダム周辺の公園整備が進められました。
 
ダム下から見上げると余所では見られない特徴なデザインに目が奪われます。
クレストには自由越流式洪水吐、その下にはオリフィスゲートが2門が並びます。
実はオリフィスは左右それぞれ越流高が異なりますが、それを感じさせない左右対称のデザインです。
 
ダム下の桜は満開、端正なダムに色を添えます。
 
越流面をズームアップ。
階段状のデザインは越流水を減勢させる効果もあります。
 
下流面
階段のステップは75センチ、最大85段に及びます。
土木屋さん泣かせの施工、まあバブル期に着手されたダムならではですね。
 
天端は車両の通行ができます。
照明は高覧照明を採用しポールのないすっきりとした天端になっています。
 
減勢工
左右のオリフィスゲートの越流高が異なることから、導流壁やフーチングの形状は微妙に異なります。
 
右岸から
どこから見ても端正でハンサムな姿。
 
左手はエレベーター棟、右手は水位計棟
天端下には洗浄用の放水ノズルがあり、洗浄放水時は階段状の堤体を水が美しく流下するそうです。
 
上流面。
 
右岸ダムサイトに管理事務所が、事務所裏手に艇庫とインクラインがあります。
 
毎年5月6月にはダム湖にホタルが舞い蛍湖祭りが実施されます。
祭りに合わせて洗浄放水が行われるそうです。
機会があればぜひ美しい放水を眺めてみたいものです。
 
追記
中筋川ダムには860万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに113万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2328 中筋川ダム(1329)
高知県宿毛市平田町黒川
四万十川水系中筋川
FNAWI
 
73.1メートル
217.5メートル
12600千㎥/12000千㎥
国交省四国地方整備局
1998年
◎治水協定が締結されたダム

山の神池

2018-04-19 12:35:30 | 愛媛県
2018年3月27日 山の神池
 
山の神池は愛媛県南宇和郡愛南町広見の惣川水系左支流(河川名未確認)源流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1963年(昭和38年)に岡の駄馬水利組合により竣工と記されており、現在も同水利組合が管理を行っています。
リアス式海岸が続く南予地区では広範な水田が広がる場所は限られていますが、愛南町広見地区は盆地に水田が広がり大小20基近い溜池が密集しています。山の神池はその一つです。
 
 
堤体下から
堤高17.5メートルとなっていますが見た目は微妙・・・・。
 
天端は車道。
 
右岸の小さな洪水吐。
 
洪水吐導流部はトンネル式。
 
上流面。
 
総貯水容量は12万3000立米。
周りには同規模の溜池がいくつも並んでします。
 
池周辺の桜は満開。
 
右岸の取水設備。
 
こちらの取水設備も現役のようです。
 
山が海岸まで迫り広大な水田地帯はほとんど見かけない南予地区ですが、わずかな平たん地を開拓して水田を作った先人たちの苦労が偲ばれる溜池でした。
 
2255 山の神池(1327)
ため池コード
愛媛県南宇和郡愛南町広見
DamMaps
惣川水系惣川
17.5メートル
76メートル
123千㎥/123千㎥
岡の駄馬水利組合
1963年

大久保山ダム

2018-04-19 00:54:01 | 愛媛県
2018年3月27日 大久保山ダム
 
大久保山ダムは愛媛県南宇和郡愛南町緑甲の僧都川水系大久保川源流部にある灌漑・上水道用水目的のアースフィルダムです。
愛南町が位置する南予地区は瀬戸内沿岸に比べれば降水量は多いものの降雨は夏季に集中し、また大河がなくリアス式海岸が続くという地理的特性から沿岸部を中心に慢性的な水不足に悩まされてきました。
特に1967年(昭和42年)の大干ばつは7月上旬から90日も雨がないという苛烈なもので、一帯農家はもちろん上水道でも断水が続き甚大な被害をもたらしました。
この事態を受け、愛媛県は農水省の補助を受けたかんがい排水事業を採択し灌漑目的のダム建設を決定、さらにこの事業に当時の御荘町・一本松町・西海町によって設立された南宇和上水道企業団(現愛南町水道課)が事業参加し1979年(昭和54年)に竣工したのが大久保山ダムです。
大久保山ダムはかんがい排水事業に合わせて設立された大久保山土地改良区向けの灌漑用水、当時の御荘町・城辺町・一本松町・西海町によって設立された南宇和上水道企業団(現愛南町水道課)向けの上水道用水の水源となっています。
なお大久保山ダムの堤高55.8メートルはアースダムとしては熊本県の清願寺ダムに次いで全国第2位の高さを誇るとともに、洪水吐導流部は全長425メートルと全国のフィルダムの中でも屈指の長さとなっています。
 
愛南町中心部から県道64号を北上すると、梶郷上集落に大久保山ダムを示す小さな案内板があります。
これに従って右手の枝道に入り大久保川沿いの隘路を3キロほど進むと左手に大久保山ダムの大きな下流面が見えてきます。
堤高55.8メートルはアースダムとしては全国第2位の高さ。
 
左岸の洪水吐導流部
全長425メートルとこれまたビッグサイズ。
 
横越流式洪水吐。
 
 
上流面はロック材で護岸されています。
 
天端から下流面
谷間を埋める逆三角形で、途中に地山が残っています。
 
広い天端。
 
総貯水容量は75万立米。
正面に取水塔が見えます。
 
取水塔
管理橋はトラス。
 
上流から
貯水池周辺の桜が満開でした。
 
アースダムとしては日本第2位の高さを誇ります。
天端から見てもその高さは実感できましたが、できればダム下から見上げてみたいものです。
 
2270 大久保山ダム(1326)
愛媛県南宇和郡愛南町縁甲
僧都川水系大久保川
AW
55.8メートル
170メートル
750千㎥/700千㎥
大久保山土地改良区
1979年