ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

志河川ダム

2018-04-10 19:27:59 | 愛媛県
2018年3月24日 志河川ダム
 
志河川(しこがわ)ダムは愛媛県西条市丹原町志川の中山川水系志河川にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
少雨に加えて大河のない愛媛県の道前・道後両平野への水利を図るため、仁淀川水系から流域変更により両平野に導水する道前道後平野農業水利事業が1967年(昭和42年)に竣工し、両地区は安定した用水確保という悲願を達成しました。
しかし1980年代に入り施設の老朽化や稲作から園芸農業への転換など、社会・農業情勢の変化により新たな用水確保が迫られてきました。
そこで農水省は『道前道後平野農業水利事業Ⅱ期』に着手し、新たな道前平野向け水源として2010年(平成22年)に志河川ダムが竣工しました。
志河川ダムは道前平野における面河ダムの補給がない期間(10月7日~6月5日)における農業用水の補給を行っており、管理は道前平野土地改良区が受託しています。 
また2016年(平成28年)には利水放流を利用した志河川ダム発電所が増設され、最大49.9キロワットの小水力発電が開始されています。
 
道前道後平野農業水利事業概要図(農水省HPより)
 
国道11号線に志河川ダムを示す標識があり、これに従うとダムが見えてきます。
まず目につくのがコートの襟を立てたような漸縮型堤体導流壁。
 
導流壁は左岸に偏り左右非対称になっています。
加えて転波越流も美しい。
 
左岸上流から
満水です。
 
インクラインはなく浮桟橋に巡視艇が繋留されています。
 
転波越流の鱗がきれいです。
 
減勢工にはバッフルピアが5基並びその下流にエンドシルがあります。
右手は利水放流設備。
 
天端からは燧灘が遠望できます。
 
ダム湖は総貯水容量130万立米。
 
天端は車両通行可能
打ちっぱなしの取水設備建屋のデザインも斬新。
 
こちらから見ても取水設備のデザインが際立ちます。
 
新しいダムということでコンクリートが美しいということもありますが、特徴的な導流壁といい取水設備の斬新なデザインとしいスタイリッシュな志河川ダムです。 
 
3001 志河川ダム(1300
愛媛県西条市丹原町志川
中山川水系志河川
48.2メートル
117メートル
1300千㎥/955千㎥
道前平野土地改良区
2010年

黒瀬ダム

2018-04-10 15:17:59 | 愛媛県
2018年3月24日 黒瀬ダム
 
黒瀬ダムは愛媛県西条市黒瀬の加茂川水系加茂川中流部にある愛媛県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、加茂川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、西条市への工業用水の供給、住友共同電力(株)黒瀬発電所での最大出力2000キロワットのダム式水力発電を目的として1972年(昭和47年)に竣工しました。
 
西条市街から県道12号を石鎚山方面に進むと左手に黒瀬ダムの堤体が見えてきます。 
クレストに真っ赤なラジアルゲート2門を装備しています。
 
木の陰になって見えませんが、導流壁左岸側(向かって右手)に利水用の放流管、非常用ゲート、ホロージェットバルブがあります。
 
クレストゲートをズームアップ
左右でゲートの形状が異なり、右岸側(向かって左手)のゲートにはフラッシュボードがついています。
ダムで捕捉したゴミや流木を下流に流すためのものですが、河川法の改修で現在はゴミ・流木の放流は禁止されており、フラッシュボードを使うことはないでしょう。
 
導流部先端はジャンプ台式で先端にシュートブロックが設置されています。
 
あいにく電気ケーブルの工事のため天端は立ち入りできません。
 
取水設備。
ダム湖(黒瀬湖)は総貯水容量は3600万立米と県営ダムとしてかなりの規模です。
 
案内板。
 
工事のため見学場所は限定されてしまいました。
機会があれば再訪したいところですが、遠方ゆえそうもゆかないのがつらいところです。
 
追記
黒瀬ダムには800万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに740万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2262 黒瀬ダム(1299
愛媛県西条市黒瀬
加茂川水系加茂川
FNIP
61.7メートル
207.7メートル
36000千㎥/34000千㎥
愛媛県土木部
1972年
◎治水協定が締結されたダム

鹿森ダム

2018-04-10 14:00:58 | 愛媛県
2018年3月24日 鹿森ダム
 
鹿森ダムは愛媛県新居浜市立川町の国領川水系国領川(中上流では足谷川)中流部にある愛媛県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、国領川の洪水調節、新居浜市への工業用水の供給、工業用水の供給過程で住友共同電力(株)山根発電所での最大出力6700キロワットのダム水路式水力発電を目的として1962年(昭和37年)に竣工しました。
また1965年(昭和40年)に竣工した住友共同電力別子ダムで取水され東平発電所で発電に使われた水も鹿森ダムで受け入れており、吉野川水系銅山川の水を流域変更して新居浜に導水するいわゆる『別子分水』の調整池としての役割も持っています。
2010年(平成22年)には鹿森ダム直下で県道47号線の付け替えが行われ、ループ橋である青龍橋が完成、埼玉県の滝沢ダムや北海道の朝里ダムなどとともにループ橋とセットになったダムとして知られています。
 
県道47号の交通量はさほど多くなく、徒歩でループ橋を進みます。
 
クレストゲートをズームアップ。
 
非常用洪水吐としてクレストに赤いラジアルゲートが1門、その右手(左岸)に常用洪水吐のコンジット高圧ラジアルゲートがあります。
訪問前の大雨で水位が上がりクレスト放流が行われています。
 
天端の立ち入りはゲート手前まで。
 
天端から見たループ橋。
 
ダム湖は『別子の湖』
総貯水容量は159万立米と県営ダムとしてはさほど大きくありません。
 
昭和30年代竣工のダムらしく大掛かりな取水塔。
 
ラジアルゲートの左にコンジットゲートの予備ゲートがあります。
 
右手の仮設道路はダム湖のごみや流木を運搬するためのものです。
 
2253 鹿森ダム(1298)
愛媛県新居浜市立川町
国領川水系国領川
FIP
57.9メートル
108.6メートル
1590千㎥/1310千㎥
愛媛県土木部
1962年

別子ダム

2018-04-10 12:40:26 | 愛媛県
2018年3月24日 別子ダム
 
別子ダムは愛媛県新居浜市別子山の吉野川水系銅山川源流部にある住友共同電力(株)が管理する重力式コンクリートダムで、新居浜の住友グループ各社向け工業用水および電力供給を目的としています。
旧別子山村にあった別子銅山を起源とする住友財閥は戦前より銅山の表玄関であった新居浜を拠点とし、銅山川上流の水利権を行使して1912年(明治45年)には銅山川の水を流域変更して新居浜に導水する『別子分水』を開通させました。
戦後の経済発展を受け、住友化学のコンビナート建設をはじめとして住友グループは新居浜への集積を加速する一方新たな工業用水や電力確保に迫られることになります。
そこで当地の住友グループ向け電力を担っていた住友共同電力により1965年(昭和40年)に建設されたのが別子ダムです。
ここで取水された水は住友共同電力東平発電所に送られ最大出力2万キロワットの発電に使われたのち、国領川上流部にある愛媛県営鹿森ダムを経由して新居浜の住友グループ各社に供給されています。
 
別子ダムは県道47号線沿いにありますが、民間企業所有のダムということで立ち入はできず見学ポイントは限定されています。
富郷ダムから県道を西に進むと谷間の奥に別子ダムが見えてきます。
 
クレストに赤いラジアルゲートが1門、まっすぐな導流壁が特徴的です。
 
 
上流面。
 
ダム湖は総貯水容量562万8000立米。
 
県道わきの管理事務所。
 
別子銅山を起源として新居浜は住友の企業城下町として発展し、現在でも『工都新居浜』と表現されるほどです。
新居浜及び住友グループを縁の下から支えているのがこの別子ダムと言っても過言ではありません。
 
(追記)
別子ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2257 別子ダム(1297)
愛媛県新居浜市別子山
吉野川水系銅山川
IP
71メートル
143メートル
5628千㎥/5420千㎥
住友共同電力(株)
1965年
◎治水協定が締結されたダム

富郷ダム

2018-04-10 10:24:38 | 愛媛県
2018年3月24日 富郷ダム
 
富郷ダムは愛媛県四国中央市富郷町津根山の吉野川水系銅山川上流部にある水資源機構が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
1953年(昭和28年)の柳瀬ダム、1975年(昭和50年)の新宮ダムの完成により、銅山川から流域変更して愛媛県東部の宇摩地区へ導水する銅山川分水事業は一段落を迎えました。
しかし瀬戸内海臨海工業地帯の発展による水需要増加はなおも続き、さらなる水源確保が迫られることになります。
水資源開発公団(現水資源機構)は柳瀬ダム上流への新たな多目的ダム建設に着手し、2000年(平成12年)に竣工したのが富郷ダムです。
富郷ダムは水資源機構法による多目的ダムで、柳瀬ダム・新宮ダムと連携した銅山川及び吉野川中下流を対象とした洪水調節、四国中央市への上水道用水と工業用水の供給を目的とするほか、愛媛県公営企業局富郷発電所で利水従属発電を行っています。
 
下流から
堤高は106メートルで銅山川3ダム中最高を誇ります。 
 
右岸から
非常用洪水吐としてクレストにラジアルゲート4門、常用洪水吐としてオリフィスに高圧ラジアルゲート1門、コンジットに高圧ラジアルゲート2門を装備。
 
減勢工とエンドシル
対岸は左から利水放流用のジェットフローゲート、その右手は愛媛県公営企業局富郷発電所。
 
右岸の展望公園へと続く螺旋階段。
見た目はおしゃれですが実際に歩くとかなり傷みがひどく荒れています。
 
螺旋階段を登り切った展望台から。
 
天端の各建屋は柔和な四角形で統一され高さを抑えたすっきりとしたデザイン
扇型の管理事務所はなんだかリゾートホテルみたい。
 
天端から減勢工。
 
ダム湖の銅山湖は総貯水容量5200万立米で銅山川3ダム中断トツの規模。
 
天端は歩行者のみ通行可能
右岸斜面には水資源機構らしく富郷ダムの文字。
 
上流から
4門のラジアルゲートに挟まれてオリフィスおよびコンジットの予備ゲートが並んでいます。
 
建設省により『開かれたダム』に指定されたこともあり、環境整備はも素晴らしく居心地のいいダムです。
ただせっかくの公園整備も利用者が少ないようで、ダム下公園は立ち禁。右岸展望広場への螺旋階段も痛みが目立ち、こちらも早晩立ち入り禁止になりそう。
人里離れた山中のダム故やむを得ないところはありますが・・・
 
追記
富郷ダムには1250万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに375万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2275 富郷ダム(1296)
愛媛県四国中央市富郷町津根山
吉野川水系銅山川
FWIP
106メートル
250メートル
52000千㎥/47600千㎥
水資源機構
2000年
◎治水協定が締結されたダム

柳瀬ダム

2018-04-10 01:46:28 | 愛媛県
2018年3月24日 柳瀬ダム
 
柳瀬(やなせ)ダムは愛媛県四国中央市金砂町小川山の吉野川水系銅山川にある国交省四国地方整備局が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
四国は四国山脈を挟んで多雨地域と少雨地域に分かれ、吉野川流域や太平洋側では洪水被害が頻発する一方、瀬戸内海沿岸では慢性的な水不足に悩まされてきました。
宇摩地域と呼ばれる愛媛県東部、現在の四国中央市も長く水不足に悩み、法皇山脈南側を流れる吉野川水系銅山川の水を導水する『銅山川分水』が悲願となっていました。
1928年(昭和3年)に愛媛県は灌漑・発電を目的とする柳瀬ダム建設計画を採択しますが、戦争により事業は中断、終戦後、愛媛県は灌漑・発電に加え洪水調節目的を付加して建設省の補助を獲得し、補助多目的ダムとして柳瀬ダム建設事業が着手されました。
その後建設省所管の国営事業に格上げされ1953年(昭和28年)に柳瀬ダムは竣工、江戸時代末期に銅山川疏水事業が請願されて約100年、宇摩地区の悲願である銅山川分水がここにようやく実現しました。
 
柳瀬ダムは新宮ダム富郷ダムと連携した銅山川及び吉野川中下流を対象とした洪水調節、四国中央市への灌漑・上水道・工業用水の供給、四国中央市への分水を利用した愛媛県公営企業局銅山川第一発電所での水力発電を目的とするほか、河川維持放流を利用して銅山川第二発電所で利水従属発電を行っています。
柳瀬ダムの完成より銅山川分水は実現しましたが、その後の瀬戸内海臨海工業地帯の発展による水需要増加を受け1975年(昭和50年)に下流に新宮ダムが、2000年(平成12年)に上流に富郷ダムが完成しました。
なお柳瀬ダムは国交省四国地方整備局が管理を行っていますが、当初愛媛県により事業着手されたことから特定多目的ダムではなく、補助多目的ダムという括りになります。
 
今回は新宮ダムから酷道と言われる国道319号線を西進して柳瀬ダムに至りました。
右岸高台にある管理事務所から堤体を俯瞰できます。
クレストには4門のローラーゲートが並びます。
ダム右岸では改修工事に備えボーリングによる地質調査が行われていました。
 
扶壁上にゲート操作室が乗っかています。
このスタイルは昭和10年ごろから登場し、昭和30年代にかけて特に中国電力で多く採用されています。
 
管理事務所から階段を下ってダムへと降ります。
上流面。
 
天端から
一番上が管理事務所。
 
金砂湖と名付けられたダム湖は総貯水容量3220万立米。
右手はインクライン。
 
特徴的なゲート操作室。
 
ゲートピアにはスリットが入っています。
 
減勢工
河川維持放流は取水口から発電所経由で行われるため、ダム下は水無川の様相。
 
ダム湖に並ぶ2基の取水塔
左手は四国中央市への銅山川分水路の取水塔
右手は銅山川第二発電所経由の河川維持放流向けの取水塔。
 
天端左岸から
ゲートピア上部の管理橋へは螺旋階段が続いています。
 
柳瀬ダムは日本100ダムにも選ばれていますが、見学ポイントが限られ特にダム下から眺めることができないのは残念です。
 
追記
柳瀬ダムには760万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに440万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2243 柳瀬ダム(1295)
愛媛県四国中央市金砂町小川山
吉野川水系銅山川
FAWIP
55.5メートル
140.7メートル
32200千㎥/26600千㎥
国交省四国地方整備局
1953年
◎治水協定が締結されたダム