ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

面河ダム

2018-04-11 15:57:05 | 愛媛県
2018年3月25日 面河ダム 
 
面河ダムは愛媛県上浮穴郡久万高原町笠方の仁淀川水系割石川源流部にある愛媛県公営企業局が受託管理する多目的重力式コンクリートダムです。
愛媛県の道前・道後両平野は大河がないうえに、瀬戸内海気候により年間降水量が1300ミリ程度と少雨であり古くから灌漑用水の確保は困難をきたしていました。
戦後の食糧難から食糧増産が強く求められる中、農林省(現農水省)により仁淀川水系割石川上流にダムを建設し、同ダムより流域変更して道前道後地区に灌漑用水を導水する道前道後平野農業水利事業がまとめられました。
1957年(昭和32年)に国営事業として道前道後平野農業用水、道後平野工業用水、発電の共同事業として事業が着手され、1967年(昭和42年)に中核施設である面河ダムの完成をもって事業は無事竣工しました。
受益地である道前道後地区では水系を超えてもたらさせるこの水を、事業に協力した仁淀川下流の高知県への敬意も含めて『虹の水』と呼んでいます。
面河ダムで貯留された水はトンネル導水路で西条市丹原町の中山川逆調整池に送られ、この過程で愛媛県公営企業局が運営する道前道後第1~第3発電所にて最大出力合計2万5100キロワットの発電を行います。
道前平野へは逆調整池から放流された水が、道後平野及び工業用水は逆調整池の千原取水塔で取水された水が、それぞれの幹線水路にて受益者に供給されます。
面河ダム自体は農林省(現農水省)の事業によって建設されましたが、運用開始後は発電事業者である愛媛県公営企業局が受託管理をしています。
 
道前道後平野農業水利事業概要図(農水省HPより)
 
まずはダム下へと向かいますが、国道497号線からダム下へ続く道がが荒れており運転には気を使いました。
クレストにはローラーゲートが1門、昭和30年代着工のダムらしく導流壁は直線状。
ダム下には愛媛県公営企業局が運営する道前道後第一発電所があります。
 
クレストをズームアップ
ゲート操作室と取水設備建屋が並びます。
 
続いてダムサイトへ。
ダム手前100メートルほどに関係者以外立ち入り禁止の立て札がありますが四国堰堤ダム巡りのハンコがその先にあるためここは気にせず進入します。
右岸から
ゲート操作室と取水設備。
 
右岸親柱の『面河堰堤』のプレート。
 
天端
ゲート部分だけわずかに前面に張り出しています。
 
導流部と減勢工
左手は愛媛県公営企業局道前道後第一発電所。
 
総貯水容量2830万立米のダム湖
割石川本流のほか、11の取水堰を通じて支流からもくまなく集水しています。
 
巨大な取水設備
昭和30年代設計だとこんな大きな設備になっちゃいます。
今ならこの数分の1のスケールでしょうね。
 
 
右岸の艇庫、写真の裏側にクラインがあります。
 
追記
面河ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに584万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2258 面河ダム(1303)
愛媛県上浮穴郡久万高原町笠方
仁淀川水系割石川
AIP
73.9メートル
159メートル
28300千㎥/26800千㎥
愛媛県公営企業局
1967年
◎治水協定が締結されたダム

大明神池

2018-04-11 13:07:59 | 愛媛県
2018年3月24日 大明神池
 
大明神池は左岸が愛媛県西条市福成寺、右岸が同旦之上の北川水系北川上流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1962年(昭和37年)に土地改良区の事業により竣工と記されていますが、記念碑等がないためそれ以上の詳細は不明です。
管理は西条市庄内土地改良区が行っています。
 
下流から
堤高25.8メートルのなかなか立派な下流面
昨秋に刈り払いが行われたようです。
 
堤体左岸にある底樋樋門
愛媛県では多くみられる扁額が入った立派なポータル。
 
天端。
 
コンクリートで護岸された上流面。
 
天端から
海越しに西条市中心部が遠望できます。
 
南には冠雪した石鎚山が望めます。
 
総貯水容量は45万立米。
 
左岸の斜樋。
 
右岸から下流面。
 
右岸の横越流式洪水吐。
 
2254 大明神池(1302)
ため池コード
愛媛県西条市福成寺
DamMaps
北川水系北川
25.8メートル
212.4メートル
450千㎥/450千㎥
西条市庄内土地改良区
1962年

除ケの堰堤

2018-04-11 11:38:05 | 愛媛県
2018年3月24日 除ケの堰堤
 
除ケの(よけの)堰堤は愛媛県東温市山之内の重信川本流上流部にある直線重力式石積砂防堰堤です。
道後平野を貫流する重信川は上流部は急流河川となっている一方、平野出口では扇状地を形成し通常は伏流水となりながら洪水の際には多量の土砂を流下させ、下流域に多大な洪水被害をもたらしてきました。
そこで愛媛県は砂防対策として重信川上流部での砂防堰堤建設に着手し1935年(昭和10年)に竣工したのが除ケの堰堤です。
堰堤本体には瀬戸内から取り寄せた花崗岩1万7000個が伝統工法によって石積みされ、建設から80年以上経過した現在でもその造形美と砂防機能を維持しています。
除ケの堰堤その技術的、土木遺産としての価値を評価して2001年(平成13年)に国の有形文化財に登録されたほか、Bランクの近代土木遺産に選定されています。
 
東温市の国道11号新横河原橋交差点から県道152号を北上すると、右手に砂防堰堤築造記念碑が現れます。
 
竣工記念碑の先に除ケの堰堤説明板と登録有形文化財のプレートが設置されています。
 
 
堰堤直下の河原に下りることができます。
堰堤は表面石張直線重力式堰堤2段で構成されており、数日前までの大雨で流量が増し激しく越流していました。
 
地元の方に伺うと、このあたりの重信川は伏流水となるため普段はほとんど水がなく、大雨になると一転水量が増すのだそうです。
 
ダムならば激しい越流は見ごたえがあるのですが,、ここの場合は肝心の石積みがほとんど見えず厄介な越流です。
 
左岸側になんとか石積みを確認することができました。
長方形の切石が丁寧に布積みされています。
 
越流自体は迫力あるものでしたが、やはり石積堰堤は石を見てナンボかと思います。
そういう点では残念な堰堤見学となってしまいました。
 
除ケの堰堤
重信川水系重信川
砂防堰堤
石積直線重力式堰堤(2段)
主堰堤高12メートル 副堰堤高7メートル
主堰堤長115メートル 副堰堤長92メートル
愛媛県
1935年

中山川逆調整池

2018-04-11 01:28:58 | 愛媛県
2018年3月24日 中山川逆調整池
 
中山川逆調整池は愛媛県西条市丹原町千原の中山川源流部にある愛媛県公営企業管理局が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
愛媛県の道前・道後両平野に仁淀川水系面河ダムから流域変更による導水を行う『道前道後平野農業水利事業』に合わせて建設された道前道後第1~第3発電所の逆調整池として1963年(昭和38年)に竣工しました。
発電による放流水の増減に伴う水位変動を緩和するとともに、逆調整池から放流された水は道前平野へ、調整池にある千原取水塔で取水された水は道後平野へ送られます。 
 
道前道後発電所概要図(愛媛県HPより)
 
国道11号線の『桜三里』を過ぎると右手に中山川逆調整池を示す案内板がありダムへの道が分かれています。
訪問時は工事中のため車の進入ができなかったので、路肩に車を止めて徒歩でダムへと向かいました。
歩くこと2~3分で右手に中山川逆調整池のゲートが見えてきます。
 
ズームアップ
実は中山川逆調整池を下流側から見れるのはこのアングルだけ。
 
右岸から
天端への道は立ち入り禁止。
 
道後平野土地改良区への灌漑用水と工業用水を取水する千原取水塔。
 
逆調整池ということで総貯水容量は17万7000立米とさほど大きくはありません。
 
堆砂対策および湖岸整備の工事中でした。
 
道前道後平野農業水利事業の根幹をなす貴重な施設ですが、工事中ということもありバタバタとした見学となってしまいました。
 
3682 中山川逆調整池(1301
愛媛県西条市丹原町千原
中山川水系中山川
20.8メートル
54.7メートル
177千㎥/150千㎥
愛媛県公営企業管理局
1963年