ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

壺芋池

2018-04-16 17:04:59 | 愛媛県
2018年3月26日
 
壺芋池は愛媛県西予市城川嘉喜尾の肱川水系黒瀬川左支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧では1942年(昭和17年)に神内拓男氏の事業により竣工となっており、神内氏が個人所有する灌漑用溜池だと思われます。
全国的に見れば個人が所有する溜池は相当数存在しますが、大半は中小溜池であり河川法のダムの要件を満たすものはここだけじゃないでしょうか?
ただ、ダム便覧の堤高15メートルに対して愛媛県のため池データベースでは7.1メートルとなっており、数字に大きな違いがあります。
 
下流の県道312号から遠望。
 
県道から山道を1~2分歩くと池に到着します。
 
堤体基部はコンクリートの擁壁で、下流面はきれいに刈り払われています。
ここを基準にするとため池データベースの堤高7.1メートルほどしかありません。
基礎地盤をどこにするか?でしょうね。
 
天端。
 
天端からの眺め
下に見える道が県道312号です。
 
取水設備は木栓を差し込む原始的な尺八樋。
 
左岸の洪水吐。
 
堤体左岸縁に続く洪水吐導流部。
 
総貯水容量はわずか6000立米。
 
個人所有のダムという点では非常にレアな存在です。
ただし堤高次第ではダム便覧から消えてしまうかもしれません。
 
3664 壺芋池(1317)
ため池コード
愛媛県西予市城川町嘉喜尾
肘川水系黒瀬川左支流
7.1メートル(ダム基準未達)
60メートル
20千㎥/20千㎥
神内拓男氏
1942年

初瀬ダム

2018-04-16 15:40:47 | 高知県
2018年3月26日 初瀬ダム
 
初瀬(はつせ)ダムは高知県高岡郡梼原町の渡川(四万十川)水系梼原川にある四国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
水量豊富で急流河川である梼原川では昭和初期から檮原水力電気(株)による電源開発が進められ、初瀬ダムも1937年(昭和12年)に同社によって建設されました。
しかし、檮原川流域の発電施設は電力統制令により日本発送電に接収され、1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により新たに誕生した四国電力が事業継承しました。
初瀬ダムで取水された水は約1500メートルの導水路で梼原第二発電所に送られ最大出力8000キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
梼原川沿いに県道26号線を南に進むと初瀬ダムに到着します。
竣工から80年経過した渋~いコンクリート、
中央の4門のラジアルゲートを挟んで左右両側は自由越流式洪水吐が2門ずつ、さらに左岸には魚道があります。
 
右岸の自由越流式洪水吐は高さの異なる二つの導流面が並びまるでラージヒルとノーマルヒルが並ぶジャンプ台のよう。
また側壁の練石積は竣工当時のものでしょう。
 
ゲートも竣工当時のものでしょうか?
扶壁上の階段も戦前らしいつくり。
 
天端には巻き上げ機が並びます。
対岸に管理所。
 
左岸の魚道
残念ながら水を流すのは遡上シーズンのみ。
 
艇庫も浮桟橋もなくロープで繋留されただけの巡視艇。
 
右岸から。
 
右岸側の自由越流面。
 
上流面
対岸に発電所への取水口があります。
 
上流から遠望
かなり堆砂が進んでいます。
 
戦前のダムは多数見てきましたが、初瀬ダムはその中でも特筆すべき渋いダム。
時代感あふれるコンクリートもさることながら、ラージヒルとノーマルヒルが並ぶような減勢工は余所では見れません。
 
追記
初瀬ダムは洪水調節容量のない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに75万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2302 初瀬ダム (1316)
高知県高岡郡梼原町佐渡
渡川水系檮原川
23メートル
112.5メートル
1454千㎥/1121千㎥
四国電力
1937年
◎治水協定が締結されたダム

柳谷ダム

2018-04-16 14:59:14 | 愛媛県
2018年3月26日 柳谷ダム
 
柳谷(やなだに)ダムは愛媛県上浮穴郡久万高原町西谷の仁淀川水系黒川にある四国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1960年代以降、わが国の発電事業においては火主水従が鮮明になりますが、オイルショックを契機に水力発電が見直され各地で水力発電所の新設や再開発が行われました。
柳谷ダムは柳谷発電所の取水ダムとして1989年(平成元年)に竣工し、ここで取水された水は約2キロの導水路で柳谷発電所に送られ、最大出力2万3000キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
国道440号に柳谷ダムへの管理道路入口に到着しますが、門扉がありこの先は関係者以外進入不可。
 
 
ここから柳谷ダムが遠望できます。
これが唯一の撮影ポイント。
 
ズームアップ
ローラーゲートが2基、左岸管理事務所奥に取水ゲートがあるようです。
 
追記
柳谷はは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに14万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2926 柳谷ダム (1315)
愛媛県上浮穴郡久万高原町西谷
仁淀川水系黒川
28.5メートル
98.5メートル
270千㎥/150千㎥
四国電力
1989年
◎治水協定が締結されたダム

大渡ダム

2018-04-16 13:05:28 | 高知県
2018年3月26日 大渡ダム 
 
大渡ダムは高知県吾川郡仁淀川町の左岸潰溜、右岸高瀬にある重力式コンクリートダムです。
国交省四国地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、仁淀川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、高知市への上水道用水の供給、四国電力大渡発電所での最大出力3万キロワットのダム水路式発電を目的として1986年(昭和61年)に竣工しました。
 
国交省直轄ダムらしく周辺整備が進められ、ダム下や右岸高台が公園になっています。
まずはダム下流から、ちょうど周辺の桜が満開になっています。
非常用洪水吐としてクレストにラジアルゲート4門、常用洪水吐としてコンジットに高圧ラジアルゲート5門を装備。
エンドシルの下流にバッフルピアが並びます。
 
堤体直下まで車で入れます。
 
左岸のホロージェットバルブ。
 
右岸高台の大渡ダム公園から。
 
天端は車両通行可能
堤体は右岸側がわずかに湾曲しています。
 
天端中央にはガントリークレーン
補助ゲートの移動に使われます。
 
減勢工とダム下公園。
 
大渡ダムには取水設備が2基あります
手前は四国電力大渡発電所向け、奥はその他利水用。
 
上流から
4門のゲート右側に補助ゲートがあり、補助ゲートの移動にはガントリークレーンが使われます。
 
管理事務所と艇庫・インクライン。
 
仁淀川には大渡ダムをはじめとして多くのダムが建設されていますがその水質は日本有数で、清流として知られている四万十川を凌ぎます。
『四万十川はダムがないから清流』という論調が如何に根拠の薄いものか、大渡ダムがそれを示しています。
 
追記
大渡ダムには4900万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに419万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2323 大渡ダム(1314
左岸 高知県吾川郡仁淀川町潰溜
右岸 高知県吾川郡仁淀川町高瀬
仁淀川水系仁淀川
FNWP
96メートル
325メートル
66000千㎥/52000千㎥
国交省四国地方整備局
1986年
◎治水協定が締結されたダム

筏津ダム

2018-04-16 12:00:38 | 高知県
2018年3月26日 筏津ダム
 
筏津ダムは高知県高岡郡越智町横鼻(左岸)の仁淀川本流上流部にある四国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
高度成長による電力需要拡大を受けて四国電力は各河川で新たな電源開発を進めますが、1958年(昭和33年)に建設された筏津ダムもそんな発電施設の一つです。
筏津ダムではダム堤体内に建設された仁淀川第3発電所で最大出力1万キロワットのダム式発電を行っています。
 
下流から見ると、一言『えのき』
中国電力のダムでよくみられる、扶壁前面に操作室が乗っかりピアがにょきにょき立っているタイプ。
おまけにゲート中央に自由越流式洪水吐が1門あり、導流部が肥満のおなかのようにぷっくり膨らんでいます。
実はこの中に水車や発電機が内包されています。
 
魚道をズームアップ。
 
とにかく独特の越流面に目が行きます。
右岸で取水された水はすぐに向きを変え堤体下を横断します。
このコンクリートの下に水車や発電機が内包されて発電します。
 
普段は天端は通行可能ですが、今回は工事中のため立ち入り禁止。
 
上流から
わかりづらいですが、一番右手が発電所の取水口です。
 
取水口をズームアップ。
取水された水はすぐに左手に向きを変え、堤体を横断します。
 
上流から遠望。
 
左岸管理所から。
 
このずんぐりの中に発電所が隠れています。
 
ダム下にコンクリートの塊
職員さんに伺ったところ減勢施設の一部で激流に洗われこのような姿になったとか?
 
追記
筏津ダムはは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに156万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2310 筏津ダム (1313)
高知県高岡郡越知町横鼻
仁淀川水系仁淀川
25.5メートル
141.7メートル
1837千㎥/678千㎥
四国電力
1958年
◎治水協定が締結されたダム