ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

野村ダム

2018-04-17 16:28:31 | 愛媛県
2018年3月26日 野村ダム 
 
野村ダムは愛媛県西予市野村町野村の一級河川肱川水系肱川本流にある重力式コンクリートダムです。
大河のない愛媛県南予地方では古くから用水確保は困難をきたし少雨のたびに干ばつ被害や断水が発生しました。特に1967年(昭和42年)には7月上旬から90日も雨がないという異常事態となり安定した水源確保が強く迫られることになります。
肱川では1958年(昭和33年)に鹿野川ダムが建設されていましたが、利水容量を持たない治水ダムでした。そこで建設省は1971年(昭和46年)に肱川上流部への新たな多目的ダム建設事業に着手、これに農水省や南予水道企業団が事業参加してダム建設が進められ、1981年(昭和56年)に竣工したのが野村ダムです。
野村ダムは国交省四国地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、下流の鹿野川ダムと連携した肘川の洪水調節、農水省の南予用水農業水利事業により整備された水路を通じて宇和島市、八幡浜市、西予市、伊方町の3市1町の約7200ヘクタールの樹園地への灌漑用水の供給、同用水を利用し南予水道企業団向けの上水道用水の供給を目的としています。
野村ダムは有効貯水容量1270万立米のうち、特定灌漑容量が1020万とその大半を占めており文字通り南予の水がめと言っても過言ではありません。
またダム完成にともなって出現したダム湖は『朝霧湖』と命名されダム湖100選に選ばれています。
 
その後鹿野川ダム再開発事業で同ダムの洪水調節容量が大幅に増強され、また防災ダムとして山鳥坂ダムの建設が進められています。
一方で2018年(平成30年)の平成30年7月豪雨においては野村ダム、鹿野川ダム双方で過去最大規模の流入量を記録し貯水容量が満水位に到達、これに対応した異常洪水時防災操作(緊急放流)により西予市野村地区及び大洲市で死者9名、浸水家屋3500戸という甚大な洪水被害が発生しました。
この件により緊急放流時の地域への告知方法の見直しが大きな議論になるとともに、緊急災害時において既存ダムの事前放流による洪水調節容量の確保、いわゆる『ダムの事前放流に関する治水協定』が全国各ダムで締結されるきっかけとなりました。
 
 
ダム直下へは立ち入りできず下流の写真はこれが限界。
クレストにラジアルゲート2門、コンジットに高圧ラジアルゲート1門を備えるほか、利水放流管1条があります。
 
左岸から。
 
天端は車両通行可能。
 
国交省直轄ダムらしく周辺は非常によく整備されています。
右岸に『のむらダム』の植栽、ダム周辺の桜は満開。
 
減勢工と放流管
河川維持放流が行われています。
 
ダム湖(朝霧湖)は総貯水容量1600万立米。
ダム湖百選に選ばれています。
 
左岸の艇庫とインクライン。
 
上流から
選択取水設備とゲート
クレストゲートの間にコンジットの予備ゲートがあります。
訪問時は満水状態でした。
 
右岸から俯瞰
ダム湖一帯が公園になっています。
湖面に浮かぶフロートは目的が分かりません。
 
 
追記
野村ダムには350万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに411万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2274 野村ダム(1320
愛媛県西予市野村町野村
肘川水系肘川
FAW
60メートル
300メートル
16000千㎥/12700千㎥
国交省四国地方整備局
1981年竣工
◎治水協定が締結されたダム

山鳥坂ダム

2018-04-17 14:37:48 | 愛媛県
2018年3月26日 山鳥坂ダム 
 
山鳥坂(やまとさか)ダムは愛媛県大洲市肱川町山鳥坂の肱川水系川辺川に国交省四国地方整備局が2026年(令和8年)竣工を目指して建設工事中の治水目的の重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)により肱川水系3番目の多目的ダムとして1986年(昭和61年)に事業着手されますが、激しい反対運動に加えて経済状況の変化を受け水道事業者として事業参加していた松山市の離脱などがあり、2010年(平成22年)に国交省による検討対象ダムとなりました。
結局特定多目的ダム法にに基づく基本計画は破棄され、2013年(平成25年)に洪水調節と不特定利水を目的とする治水ダムとし事業が継続することになりました。
 
訪問時、本体工事は全くの手つかずで道路の付け替え工事が着手されたばかり。
県道55号線の付け替え工事。
 
 
 
1986年(昭和61年)の事業着手から32年、ようやく本格工事へ進み出した山鳥坂ダムですが、本体に手がかかるのはまだまだ先のようです。
 
2944 山鳥坂ダム(1319
愛媛県大洲市肱川町山鳥坂
肘川水系河辺川
FN
96メートル
279メートル
220000千㎥/20300千㎥
国交省四国地方整備局
2032年竣工予定

鹿野川ダム(再)

2018-04-17 03:33:39 | 愛媛県
2018年3月26日 鹿野川ダム(再) 
 
鹿野川ダム(再)愛媛県大洲市肱川町宇和川の肱川水系肱川本流中流部にある国交省四国地方整備局が管理する重力式コンクリートダムです。
肘川は流路延長103キロの一級河川で愛媛県最大の河川ですが、支流の多さに加え大洲盆地を貫流した先の下流部が狭窄となっていることから、豪雨の際のバックウォーター現象による洪水被害が絶えませんした。
1953年(昭和28年)に建設省は肘川流域総合開発事業に着手し1958年(昭和33年)に治水・発電を目的とする鹿野川ダム(元)が竣工し、管理は愛媛県に移管されました。
1981年(昭和56年)に肘川上流に野村ダムが完成しますが、野村ダムは利水に重点を置いたダムだったことから、その後も洪水被害は絶えずさらなる洪水対策が迫られました。
一方鹿野川(元)ダムには不特定利水容量がなく下流の渇水対策に限度があること、貯水池の水質悪化などダム構造上の問題が浮上してきました。
そこで国交省四国地方整備局は2006年(平成18年)に同ダムを国交省直轄管理に移管して鹿野川ダム再開発事業に着手し、2018年(平成30年)に同事業は竣工しました。
再開発事業は
①トンネル洪水吐の新設とクレストゲート改良による洪水調節機能の増強
②選択取水設備と低水位放流施設の新設による不特定利水目的の付加
③曝気循環装置設置によるに貯水池水質改善
の三点からなっており洪水調節容量は従来の1650万立米から1.4倍の2390立米に増強されました。
再開発により特定多目的ダムとなった鹿野川ダム(再)は野村ダムと連携した肘川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、愛媛県公営企業局肘川発電所での最大1万400キロワットの発電を目的としています。
また肘川主要支流である河辺川では治水目的の山鳥坂ダム建設が始まっています。 
 
追記
2018年(平成30年)の平成30年7月豪雨では鹿野川ダム、野村ダム双方で過去最大規模の流入量を記録しサーチャージ水位に到達、これに対応した異常洪水時防災操作(緊急放流)により西予市野村地区及び大洲市で死者9名、浸水家屋3500戸という甚大な洪水被害が発生するとともに肱川発電所が被災し運転不能となりました。
この件により緊急放流時の地域への告知方法の見直しが大きな議論になる一方、緊急災害時において既存ダムの事前放流による洪水調節容量の確保、いわゆる『ダムの事前放流に関する治水協定』が全国各ダムで締結されるきっかけとなりました。
愛媛県企業局肱川発電所は2023年(令和5年)1月の運転再開を目指し復旧工事が進められています。 
 
 
鹿野川ダムは国道197号線にあります。
まずは下流から
クレストには改造されたラジアルゲートが4門並びます。
向かって右手が肘川発電所で、写真では見えませんが発電所わきに新設された低水位放流設備があります。
 
左手が新設工事中のトンネル洪水吐吐口。
 
左岸から
対岸は管理事務所 ダム周辺の桜はちょうど満開。
 
クレストのラジアルゲート
従来のゲートよりも2.8メートル高くなり洪水調節容量が1.4倍に増えました。
 
天端は車両通行可能
2011年(平成23年)に設置された新ゲート操作室建屋はまだまだピカピカ。
 
天端から
トンネル洪水吐建設のための仮設道路が伸びています。
 
愛媛県公営企業局肘川発電所
低水位放流設備の追加に合わせて発電容量は不特定利水容量に変更され、発電は利水放流に合わせて行う利水従属発電となりました。
 
ダム湖(鹿野川湖)は総貯水容量4820万立米と愛媛県第2位の規模。
右手は曝気循環装置。
 
再開発事業によって刷新された選択取水設備。
 
トンネル洪水吐呑口の建設工事が続いています。
 
 
2252 鹿野川ダム(元)
愛媛県大洲市肱川町宇和川
DamMaps
肘川水系肘川
FNP
61メートル
167.9メートル
48200千㎥/29800千㎥
国交省四国地方整備局
1958年
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3600 鹿野川ダム(再)(1318)
愛媛県大洲市肱川町宇和川
肘川水系肘川
FNP
61メートル
167.9メートル
48200千㎥/36200千㎥
国交省四国地方整備局
2018年再開発事業竣工