ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

鹿野川ダム(再)

2018-04-17 03:33:39 | 愛媛県
2018年3月26日 鹿野川ダム(再) 
 
鹿野川ダム(再)愛媛県大洲市肱川町宇和川の肱川水系肱川本流中流部にある国交省四国地方整備局が管理する重力式コンクリートダムです。
肘川は流路延長103キロの一級河川で愛媛県最大の河川ですが、支流の多さに加え大洲盆地を貫流した先の下流部が狭窄となっていることから、豪雨の際のバックウォーター現象による洪水被害が絶えませんした。
1953年(昭和28年)に建設省は肘川流域総合開発事業に着手し1958年(昭和33年)に治水・発電を目的とする鹿野川ダム(元)が竣工し、管理は愛媛県に移管されました。
1981年(昭和56年)に肘川上流に野村ダムが完成しますが、野村ダムは利水に重点を置いたダムだったことから、その後も洪水被害は絶えずさらなる洪水対策が迫られました。
一方鹿野川(元)ダムには不特定利水容量がなく下流の渇水対策に限度があること、貯水池の水質悪化などダム構造上の問題が浮上してきました。
そこで国交省四国地方整備局は2006年(平成18年)に同ダムを国交省直轄管理に移管して鹿野川ダム再開発事業に着手し、2018年(平成30年)に同事業は竣工しました。
再開発事業は
①トンネル洪水吐の新設とクレストゲート改良による洪水調節機能の増強
②選択取水設備と低水位放流施設の新設による不特定利水目的の付加
③曝気循環装置設置によるに貯水池水質改善
の三点からなっており洪水調節容量は従来の1650万立米から1.4倍の2390立米に増強されました。
再開発により特定多目的ダムとなった鹿野川ダム(再)は野村ダムと連携した肘川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、愛媛県公営企業局肘川発電所での最大1万400キロワットの発電を目的としています。
また肘川主要支流である河辺川では治水目的の山鳥坂ダム建設が始まっています。 
 
追記
2018年(平成30年)の平成30年7月豪雨では鹿野川ダム、野村ダム双方で過去最大規模の流入量を記録しサーチャージ水位に到達、これに対応した異常洪水時防災操作(緊急放流)により西予市野村地区及び大洲市で死者9名、浸水家屋3500戸という甚大な洪水被害が発生するとともに肱川発電所が被災し運転不能となりました。
この件により緊急放流時の地域への告知方法の見直しが大きな議論になる一方、緊急災害時において既存ダムの事前放流による洪水調節容量の確保、いわゆる『ダムの事前放流に関する治水協定』が全国各ダムで締結されるきっかけとなりました。
愛媛県企業局肱川発電所は2023年(令和5年)1月の運転再開を目指し復旧工事が進められています。 
 
 
鹿野川ダムは国道197号線にあります。
まずは下流から
クレストには改造されたラジアルゲートが4門並びます。
向かって右手が肘川発電所で、写真では見えませんが発電所わきに新設された低水位放流設備があります。
 
左手が新設工事中のトンネル洪水吐吐口。
 
左岸から
対岸は管理事務所 ダム周辺の桜はちょうど満開。
 
クレストのラジアルゲート
従来のゲートよりも2.8メートル高くなり洪水調節容量が1.4倍に増えました。
 
天端は車両通行可能
2011年(平成23年)に設置された新ゲート操作室建屋はまだまだピカピカ。
 
天端から
トンネル洪水吐建設のための仮設道路が伸びています。
 
愛媛県公営企業局肘川発電所
低水位放流設備の追加に合わせて発電容量は不特定利水容量に変更され、発電は利水放流に合わせて行う利水従属発電となりました。
 
ダム湖(鹿野川湖)は総貯水容量4820万立米と愛媛県第2位の規模。
右手は曝気循環装置。
 
再開発事業によって刷新された選択取水設備。
 
トンネル洪水吐呑口の建設工事が続いています。
 
 
2252 鹿野川ダム(元)
愛媛県大洲市肱川町宇和川
DamMaps
肘川水系肘川
FNP
61メートル
167.9メートル
48200千㎥/29800千㎥
国交省四国地方整備局
1958年
---------------------
3600 鹿野川ダム(再)(1318)
愛媛県大洲市肱川町宇和川
肘川水系肘川
FNP
61メートル
167.9メートル
48200千㎥/36200千㎥
国交省四国地方整備局
2018年再開発事業竣工

壺芋池

2018-04-16 17:04:59 | 愛媛県
2018年3月26日
 
壺芋池は愛媛県西予市城川嘉喜尾の肱川水系黒瀬川左支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧では1942年(昭和17年)に神内拓男氏の事業により竣工となっており、神内氏が個人所有する灌漑用溜池だと思われます。
全国的に見れば個人が所有する溜池は相当数存在しますが、大半は中小溜池であり河川法のダムの要件を満たすものはここだけじゃないでしょうか?
ただ、ダム便覧の堤高15メートルに対して愛媛県のため池データベースでは7.1メートルとなっており、数字に大きな違いがあります。
 
下流の県道312号から遠望。
 
県道から山道を1~2分歩くと池に到着します。
 
堤体基部はコンクリートの擁壁で、下流面はきれいに刈り払われています。
ここを基準にするとため池データベースの堤高7.1メートルほどしかありません。
基礎地盤をどこにするか?でしょうね。
 
天端。
 
天端からの眺め
下に見える道が県道312号です。
 
取水設備は木栓を差し込む原始的な尺八樋。
 
左岸の洪水吐。
 
堤体左岸縁に続く洪水吐導流部。
 
総貯水容量はわずか6000立米。
 
個人所有のダムという点では非常にレアな存在です。
ただし堤高次第ではダム便覧から消えてしまうかもしれません。
 
3664 壺芋池(1317)
ため池コード
愛媛県西予市城川町嘉喜尾
肘川水系黒瀬川左支流
7.1メートル(ダム基準未達)
60メートル
20千㎥/20千㎥
神内拓男氏
1942年

初瀬ダム

2018-04-16 15:40:47 | 高知県
2018年3月26日 初瀬ダム
 
初瀬(はつせ)ダムは高知県高岡郡梼原町の渡川(四万十川)水系梼原川にある四国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
水量豊富で急流河川である梼原川では昭和初期から檮原水力電気(株)による電源開発が進められ、初瀬ダムも1937年(昭和12年)に同社によって建設されました。
しかし、檮原川流域の発電施設は電力統制令により日本発送電に接収され、1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により新たに誕生した四国電力が事業継承しました。
初瀬ダムで取水された水は約1500メートルの導水路で梼原第二発電所に送られ最大出力8000キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
梼原川沿いに県道26号線を南に進むと初瀬ダムに到着します。
竣工から80年経過した渋~いコンクリート、
中央の4門のラジアルゲートを挟んで左右両側は自由越流式洪水吐が2門ずつ、さらに左岸には魚道があります。
 
右岸の自由越流式洪水吐は高さの異なる二つの導流面が並びまるでラージヒルとノーマルヒルが並ぶジャンプ台のよう。
また側壁の練石積は竣工当時のものでしょう。
 
ゲートも竣工当時のものでしょうか?
扶壁上の階段も戦前らしいつくり。
 
天端には巻き上げ機が並びます。
対岸に管理所。
 
左岸の魚道
残念ながら水を流すのは遡上シーズンのみ。
 
艇庫も浮桟橋もなくロープで繋留されただけの巡視艇。
 
右岸から。
 
右岸側の自由越流面。
 
上流面
対岸に発電所への取水口があります。
 
上流から遠望
かなり堆砂が進んでいます。
 
戦前のダムは多数見てきましたが、初瀬ダムはその中でも特筆すべき渋いダム。
時代感あふれるコンクリートもさることながら、ラージヒルとノーマルヒルが並ぶような減勢工は余所では見れません。
 
追記
初瀬ダムは洪水調節容量のない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに75万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2302 初瀬ダム (1316)
高知県高岡郡梼原町佐渡
渡川水系檮原川
23メートル
112.5メートル
1454千㎥/1121千㎥
四国電力
1937年
◎治水協定が締結されたダム

柳谷ダム

2018-04-16 14:59:14 | 愛媛県
2018年3月26日 柳谷ダム
 
柳谷(やなだに)ダムは愛媛県上浮穴郡久万高原町西谷の仁淀川水系黒川にある四国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1960年代以降、わが国の発電事業においては火主水従が鮮明になりますが、オイルショックを契機に水力発電が見直され各地で水力発電所の新設や再開発が行われました。
柳谷ダムは柳谷発電所の取水ダムとして1989年(平成元年)に竣工し、ここで取水された水は約2キロの導水路で柳谷発電所に送られ、最大出力2万3000キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
国道440号に柳谷ダムへの管理道路入口に到着しますが、門扉がありこの先は関係者以外進入不可。
 
 
ここから柳谷ダムが遠望できます。
これが唯一の撮影ポイント。
 
ズームアップ
ローラーゲートが2基、左岸管理事務所奥に取水ゲートがあるようです。
 
追記
柳谷はは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに14万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2926 柳谷ダム (1315)
愛媛県上浮穴郡久万高原町西谷
仁淀川水系黒川
28.5メートル
98.5メートル
270千㎥/150千㎥
四国電力
1989年
◎治水協定が締結されたダム

大渡ダム

2018-04-16 13:05:28 | 高知県
2018年3月26日 大渡ダム 
 
大渡ダムは高知県吾川郡仁淀川町の左岸潰溜、右岸高瀬にある重力式コンクリートダムです。
国交省四国地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、仁淀川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、高知市への上水道用水の供給、四国電力大渡発電所での最大出力3万キロワットのダム水路式発電を目的として1986年(昭和61年)に竣工しました。
 
国交省直轄ダムらしく周辺整備が進められ、ダム下や右岸高台が公園になっています。
まずはダム下流から、ちょうど周辺の桜が満開になっています。
非常用洪水吐としてクレストにラジアルゲート4門、常用洪水吐としてコンジットに高圧ラジアルゲート5門を装備。
エンドシルの下流にバッフルピアが並びます。
 
堤体直下まで車で入れます。
 
左岸のホロージェットバルブ。
 
右岸高台の大渡ダム公園から。
 
天端は車両通行可能
堤体は右岸側がわずかに湾曲しています。
 
天端中央にはガントリークレーン
補助ゲートの移動に使われます。
 
減勢工とダム下公園。
 
大渡ダムには取水設備が2基あります
手前は四国電力大渡発電所向け、奥はその他利水用。
 
上流から
4門のゲート右側に補助ゲートがあり、補助ゲートの移動にはガントリークレーンが使われます。
 
管理事務所と艇庫・インクライン。
 
仁淀川には大渡ダムをはじめとして多くのダムが建設されていますがその水質は日本有数で、清流として知られている四万十川を凌ぎます。
『四万十川はダムがないから清流』という論調が如何に根拠の薄いものか、大渡ダムがそれを示しています。
 
追記
大渡ダムには4900万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに419万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2323 大渡ダム(1314
左岸 高知県吾川郡仁淀川町潰溜
右岸 高知県吾川郡仁淀川町高瀬
仁淀川水系仁淀川
FNWP
96メートル
325メートル
66000千㎥/52000千㎥
国交省四国地方整備局
1986年
◎治水協定が締結されたダム

筏津ダム

2018-04-16 12:00:38 | 高知県
2018年3月26日 筏津ダム
 
筏津ダムは高知県高岡郡越智町横鼻(左岸)の仁淀川本流上流部にある四国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
高度成長による電力需要拡大を受けて四国電力は各河川で新たな電源開発を進めますが、1958年(昭和33年)に建設された筏津ダムもそんな発電施設の一つです。
筏津ダムではダム堤体内に建設された仁淀川第3発電所で最大出力1万キロワットのダム式発電を行っています。
 
下流から見ると、一言『えのき』
中国電力のダムでよくみられる、扶壁前面に操作室が乗っかりピアがにょきにょき立っているタイプ。
おまけにゲート中央に自由越流式洪水吐が1門あり、導流部が肥満のおなかのようにぷっくり膨らんでいます。
実はこの中に水車や発電機が内包されています。
 
魚道をズームアップ。
 
とにかく独特の越流面に目が行きます。
右岸で取水された水はすぐに向きを変え堤体下を横断します。
このコンクリートの下に水車や発電機が内包されて発電します。
 
普段は天端は通行可能ですが、今回は工事中のため立ち入り禁止。
 
上流から
わかりづらいですが、一番右手が発電所の取水口です。
 
取水口をズームアップ。
取水された水はすぐに左手に向きを変え、堤体を横断します。
 
上流から遠望。
 
左岸管理所から。
 
このずんぐりの中に発電所が隠れています。
 
ダム下にコンクリートの塊
職員さんに伺ったところ減勢施設の一部で激流に洗われこのような姿になったとか?
 
追記
筏津ダムはは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに156万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2310 筏津ダム (1313)
高知県高岡郡越知町横鼻
仁淀川水系仁淀川
25.5メートル
141.7メートル
1837千㎥/678千㎥
四国電力
1958年
◎治水協定が締結されたダム

桐見ダム

2018-04-15 02:49:03 | 高知県
2018年3月26日 桐見ダム
 
桐見ダムは高知県高岡郡越智町五味の仁淀川水系坂折川中流部にある高知県土木部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、坂折川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への放水補給を目的として1988年(昭和63年)に竣工しました。
また河川維持放流を利用して最大出力600キロワットの管理用水力発電を行っています。
 
非常用洪水吐としてクレストに自由越流式ゲートが6門、常用洪水吐として上下2段のオリフィスゲート、コンジットに高圧ラジアルゲートを装備。さらに利水放流管と発電放水口があります。
訪問時は放流管から河川維持放流が行われていました。
 
ダム右岸を県道が通っておりアプローチは簡単。
親柱に坂折川の銘。隣には竣工記念碑。
 
天端から
放流管から河川維持放流が行われています。
直下はコンジットゲートの操作室。
 
ダム湖(桐見湖)は総貯水容量816万立米。
 
天端は車両通行可能。
 
左右両岸には波返しのついた堤趾導流壁。
 
右岸高台に展望広場がありダムを俯瞰できます。
 
アングルを変えて。
左奥が管理事務所。
 
管理事務所裏手の艇庫とインクライン。
 
上流面
左から選択取水設備、建設当時は珍しい堤体一体型
中央はコンジットゲートの予備ゲート
右手に上下2段のオリフィスゲートが通常期と洪水期で使い分けます。
 
追記
桐見ダムには541万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに180万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2324 桐見ダム(1312
高知県高岡郡越知町五味
仁淀川水系坂折川
FN
69メートル
156メートル
8160千㎥/6460千㎥
高知県土木部
1988年
◎治水協定が締結されたダム

面河第3ダム

2018-04-13 16:07:05 | 愛媛県
2018年3月26日 面河第3ダム
 
面河第3ダムは愛媛県上浮穴郡久万高原町中津の仁淀川本流上流部にある四国電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
水量豊富な仁淀川上流域では昭和初期から伊予電鉄(当時)によって電源開発が進められ、電力管理法や配電統制令による日本発送電及び四国配電の接収ののち、戦後の電気事業再編政令により四国電力が事業を継承しました。
面河第3発電所も戦前伊予電鉄によって建設された発電所ですが、発電能力増強のために1980年(昭和55年)から再開発が行われ1984年(昭和59年)に新生面河第3ダムおよび面河第3発電所が竣工しました。面河第3発電所では最大出力2万2000キロワットのダム式水力発電を行っています。
 
面河第3ダムは国道33号線にあり、久万高原町の柳谷大橋から高知方面に進むと右手にダム湖が広がってきます。
左岸ダムサイトの四国電力の門扉前に車を止めて見学します。
巨大なローラーゲートが4門、堤高は42メートルありますが基礎地盤が水中に没しているためそれほどの高さには見えません。
 
ゲートピアのジグザグの階段が目立ちます。
 
ダム敷地は立ち入り禁止。
対岸左手が面河第3発電所です。
発電所の有効落差は52メートルなので発電所は相当深い場所に作られたようです。
 
上流から。
 
インクラインや桟橋はなく巡視艇はクレーンで昇降させます。
 
下流の橋から
いかにも発電用ダムといった風。
 
ダム直下の河原へ下りることができました。
すぐ左手が面河第3発電所になります。
 
それにしても大きなローラーゲートです。
 
追記
面河第3ダムはは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに390万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2279 面河第3ダム (1311)
仁淀川水系仁淀川
42メートル
162メートル
6218千㎥/2410千㎥
四国電力
1984年
◎治水協定が締結されたダム

関地池

2018-04-13 11:22:57 | 愛媛県
2018年3月25日 関地池
 
関地池は愛媛県西予市宇和町信里の肱川水系宇和川にある灌漑用目的のアースフィルダムです。
関地池の起源は古く江戸初期の寛永12年(1635年)に、宇和島藩初代藩主伊達秀宗の命により築造されたとされています。
戦後1952年(昭和27年)から1962年(昭和32年)にかけて農林省(現農水省)の補助を受けた県の事業により大規模な拡張工事が行われ現在の規模となりました。
管理は西予市上町土地改良区が行っています。
関地池の由来について現地説明板では、当初難工事で築造が進まない中『お関』という名の親子連れの巡礼が人柱になることを申し入れ、その後工事がはかどっったそうです。そこで『お関』さんのおかげでできた池ということで関地池になったと書かれています。
江戸時代の溜池築造に際しては各所にこのような人柱の伝承が残っています。
一方池の左岸には池に向かってボールを打つ水上ゴルフ場があります。広島県福山市の溜池ではおなじみですが、四国では西条市の城ノ谷池でゴルフ場跡を見かけただけ。四国で営業している水上ゴルフ場は関地池だけのようです。
 
国道56号線に関地池公園や宇和水上ゴルフ場を示す看板があり、これに従うと池の堤体が見えてきます。
訪問時は桜祭りに備えて多くの吹き流しや幟が立てられていました。
堤体は2段に見えますが、これは堤体中段を道路が通っているためです。
 
右岸に洪水吐があり、数日前までの雨で水位が上がった影響で越流しています。
転波により鱗が見えます。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
左岸の斜樋。
 
総貯水容量100万立米と溜池としては大規模な貯水池。
左岸に水上ゴルフ場があります。
 
水上ゴルフ場をズームアップ
「池に向かって打て!」
かなりの盛況です。
 
天端は車両通行可能
桜祭りの幟が立っていますが桜はまだまだ蕾、代わりに菜の花が満開です
桜祭り際には天端が来場者の車でいっぱいになるそうです。
 
下流面と祭りの吹き流し。
 
左岸の洪水吐
緩やかに湾曲しており、右岸側壁の洗堀を防ぐために中央に導流壁が作られています。
 
越流部
突起はゴミや流木の流下を防ぐためのものでしょうか?
 
2251 関地池(1310)
ため池コード
愛媛県西予市宇和町信里
DamMaps
肘川水系宇和川
22.5メートル
155メートル
1000千㎥/1000千㎥
西予市宇和町土地改良区
1962年

布喜川ダム(布喜川調整池)

2018-04-12 17:42:58 | 愛媛県
2018年3月25日 布喜川ダム(布喜川調整池)
 
布喜川ダム(布喜川調整池)は愛媛県八幡浜市布喜川の千丈川水系流田川にある灌漑および上水道用水を目的とする重力式コンクリートダムです。
大河がない愛媛県南予地方では古くから用水確保は困難を極め慢性的に水不足に悩まされてきました。
これを打開するため農水省は建設省(現国交省)による肘川上流部への野村ダム建設事業に参加し、同ダムを水源とした南予地方全般にわたる南予用水農業水利事業に着手します。
布喜川ダムは同事業の一環として1985年(昭和60年)に建設された調整池で、野村ダムから導水された灌漑用水・上水道用水の需給ギャップを調整しています。
事業全体は1996年(平成8年)に竣工し、当ダムを含む施設全般は南予用水土地改良区連合が受託管理を行っています。
また南予用水中央管理所もここに置かれ、南予用水全体の管制が行われています。
なおダム便覧では布喜川調整池で掲載されていますが、ここでは現地案内板に従い布喜川ダムと記すことにします。
 
南予用水概要図(農水省HPより)
 
ダム下から
クレストに自由越流式洪水吐が1門、オリフィスゲート1門装備。
 
ダム左岸を県道が通りダムサイトには駐車場もあります。
駐車場わきの布喜川ダムの説明板。
 
下流面。
いかにも農業ダムといったつくり。
 
ダムの規模に比べて大きな取水設備。
 
総貯水容量は19万7000立米。
貯留の大半は野村ダムからの導水によります。
 
左手はこの調整池から分かれる5号支線向け揚水機場。
 
数日前までの雨で水位が上がり美しい転波越流が見られました。
 
天端は市道で車両通行可能。
 
左岸から下流面。
ダム管理所と併せて南予用水中央管理所が置かれています。
 
左岸から上流面。
 
2276 布喜川ダム(布喜川調整池)(1309
愛媛県八幡浜市布喜川
千丈川水系流田川
AW
33.7.1メートル
110メートル
197千㎥/150千㎥
南予用水土地改良区連合
1985年

八代ダム

2018-04-12 16:45:01 | 愛媛県
2018年3月25日 八代ダム
 
八代ダムは愛媛県八幡浜市八代の千丈川水系八代川源流部にある灌漑用目的のアースフィルダムです。
八幡浜を含む南予地方はリアス式海岸特有の傾斜地と温暖な気候を生かして愛媛県有数のミカン生産地となっていますが、灌漑用水の確保が長年の懸案事項でした。
1967年(昭和42年)の大干ばつをきっかけに愛媛県内各地で灌漑用水源の整備が進みましたが、八代ダムもその一つで農林省(現農水省)の補助を受けた県の事業により1975年(昭和50年)に建設されました。
管理は八幡浜土地改良区が行っています。
 
八幡浜市中心から国道378号線を南下し県道28号を分けると、横峠という小さな峠手前で左手に市道が分かれます。
この道を辿り、最初の三叉路を左折するとあとは果樹園の中を数多く分岐する枝道には目もくれずひたすら進みます。
走ること10分も経たずに八代ダムのダム下に到着します。
 
堤高は24.2メートル
右岸(向かって左手)に洪水吐導流部があります。
 
取水設備からの底樋
愛媛県ではよく見られる扁額の入った立派な樋門です。
 
下流面
犬走りを挟んで2段構成。
 
天端には轍があります。
 
上流面はコンクリートで護岸、総貯水容量2万6000立米の小さな溜池です。
 
右岸の横越流式洪水吐。
 
洪水吐導流部。
 
天端からの眺め
回りは一面ミカン畑、海は見えそうで見えない。
 
右岸の斜樋。
 
ほぼミカン山の頂上に位置する八代ダム。
小さな溜池ですが、周辺の果樹園にとってはほんとに貴重な水源です。
 
3365 八代ダム(1308)
ため池コード
愛媛県八幡浜市八代
千丈川水系八代川
24.2メートル
93.2メートル
26.3千㎥/26.3千㎥
八幡浜市土地改良区
1975年

伊方ダム(伊方調整池)

2018-04-12 15:12:19 | 愛媛県
2018年3月25日 伊方ダム(伊方調整池)
 
伊方ダム(伊方調整池)は愛媛県西宇和郡伊方町川永田の伊方新川上流にある灌漑および上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
大河がない愛媛県南予地方では古くから用水確保は困難を極め慢性的に水不足に悩まされてきました。
これを打開するため農水省は建設省(現国交省)による肘川上流部への野村ダム建設事業に参加し、同ダムを水源とした南予地方全般にわたる南予用水農業水利事業に着手します。
伊方ダムはは同事業の一環として1989年(平成2年)に建設された調整池で、ここまでトンネルで来た南予用水北幹線水路は、調整池に併設された揚水機場からポンプアップされ佐田岬半島先端までパイプラインで導水されます。
ダム及び灌漑用諸施設は南予用水土地改良区連合が受託管理しています。
 
南予用水概要図(農水省HPより)
 
八幡浜から国道197号線を西進、川永田トンネルの先で左手の旧道に入ると伊方ダムが見えてきます。
農業用ダムではよく見られる自由越流式洪水吐1門だけのシンプルな構造。
 
転波越流で鱗が現れています。
 
天端は立ち入り禁止ですが、左岸の道路から俯瞰できます。
左手は伊方揚水機場でダムで貯留された水は揚水機場からポンプアップされ、佐田岬半島先端までパイプラインで送水されます。
 
手前が取水設備、右奥が低水位放流設備のバルブ、対岸は管理事務所になります。
 
上流から
貯水池は総貯水容量10万4000立米と小さな溜池なみ。
 
ダム左岸高台の道路から海が見えます。
天端は立ち入り禁止の為確認できませんが、間違いなく天端からも海が見えるでしょう。 
ここまでトンネルだった南予用水が、この先はパイプラインに変わります。
鉄道でいえば複線が単線に変わるための接続ポイント、それが伊方ダムです。
 
2278 伊方ダム(伊方調整池)(1307
愛媛県西宇和郡伊方町川永田
伊方新川水系伊方新川
AW
29.1メートル
108メートル
104千㎥/89千㎥
南予用水土地改良区連合
1989年

渕ヶ谷池

2018-04-12 14:19:29 | 愛媛県
2018年3月25日 渕ヶ谷池
 
渕ヶ谷池は愛媛県八幡浜市保内町宮内の喜木川水系宮内川右支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には1952年(昭和27年)に土地改良区の事業により竣工と記されている一方、渕ヶ谷ダム記念碑では昭和25年完工となっています。
いずれにしても土地改良区による団体営事業、もしくは受益農家の持ち出しで建設されたと思われます。
現在の管理者は保内町土地改良区です。
 
八幡浜市宮内の国道378号線から枇杷谷集落を抜け、ダートの林道を500メートルほど進むと渕ヶ谷池に到着します。
池の左岸に記念碑があります。
 
天端は林道が通り道はさらに奥へと続いています。
 
上流面。
 
左岸の洪水吐
コンクリートで水路が切ってあります。
 
洪水吐の側壁は緑色片岩の石積。
 
導流部の両壁もやはり緑色片岩の石積で、導流部には石が張られています。
 
下から見上げると
右手石積の間から木が生え相応に成長しています。
この石積は竣工当時のものとみていいのではないでしょうか?
 
下流面
草がきれいに刈られておりいまだ貴重な水源であることが伺えます。
 
総貯水容量3万4000立米の小さな溜池です。
 
右岸の取水設備
水位が高く水没していますが階段式の池栓です。
 
通常割れやすい結晶片岩は石積みや石垣では使われないのですが、池のある佐田岬半島は三波川変成帯に属し結晶片岩しかないのでやむを得ずこの石を使ったということでしょう。
同様に片岩が使われている溜池としては福岡県八女市の金堀谷溜池がありますが、非常に珍しい溜池であることは間違いありません。
 
2239 渕ヶ谷池(1306)
ため池コード
愛媛県八幡浜市保内町宮内
喜木川水系宮内川右支流
16メートル
37メートル
34千㎥/34千㎥
保内町土地改良区
1952年(ダム便覧)1950年(現地記念碑)

大谷池

2018-04-12 12:26:47 | 愛媛県
2018年3月25日 大谷池
 
大谷池は左岸が愛媛県伊予市上三谷、右岸が愛媛県伊予郡砥部町七折の大谷川本流上流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。
大谷川下流域は天井川のため干ばつや洪水被害が頻発していました。
1925年(大正14年)に中、当時南伊予村村長であった武智惣五郎は私財を投じて耕地整理組合を設立し、大谷池築造事業に着手しました。
その後事業は県営に移管されますが、地盤の脆さや台風被害、さらには戦争突入による資金・人員不足の中、村民・組合員の奉仕的働により終戦間際の1945年(昭和20年)3月にようやく大谷池は完成し、流域住民の悲願が達成されました。
1967年(昭和42年)から道前道後平野農業水利事業からの補給がスタート、2000年(平成12年)~2005年(平成17年)にかけての県営ため池等整備事業により大規模改修が行われ現在に至っています。
管理は大谷池土地改良区が行い838ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
大谷池は総貯水容量175万9000立米と愛媛県内最大のため池で2010年(平成22年)には農水省のため池百選に選ばれています。
一方で、大谷池は松山周辺では知らぬものがないほどのミステリースポットとなっています。この根拠は定かではありませんが、築堤に際して多数の殉職者を出していることが主因ではないかと推察されます。
 
ダム下は工事のため立ち入りできませんでした。
 
下流面
堤高39メートル、堤頂長190メートルとアースダムとしては立派な堤体です。
 
右岸ダムサイトには10基近い記念碑や顕彰碑が並びます。
手前は池建設に尽力した武智惣五郎氏の顕彰碑。
 
右岸にある斜樋の操作室
六角形の洒落た建屋です。
 
総貯水容量179万立米は県下溜池としては最大。
この日は黄砂の影響もあり猛烈な春霞、こんな写真しか撮れませんでした。
 
天端は車両通行可。
 
左岸の洪水吐導流部。
 
横越流式洪水吐。
 
上流面は石で護岸されています。
 
左岸には築堤殉職者供養のための社と供養塔があります。
これがミステリースポットになった主因か?
 
池完成までに幾多の困難を乗り越えた大谷池、なによりも10基近い記念碑や顕彰碑が先人たちへの感謝と悲願達成の喜びを物語っていると思います。
一方で中予では知らぬものがないといわれるミステリースポット。それはそれで悪くはないかと思います。
なお天端から微かに海が見えるようですがこの日は猛烈な霞みのため確認できず、よって海が見えるダム認定は保留とします。
 
2237 大谷池(1305)
ため池コード
ため池百選
左岸 愛媛県伊予市上三谷
右岸 愛媛県伊予郡砥部町七折
大谷川水系大谷川
37メートル
190メートル
1759千㎥/1759千㎥
大谷池土地改良区
1944年

銚子ダム

2018-04-12 10:56:41 | 愛媛県
2018年3月25日 銚子ダム
 
銚子ダムは愛媛県伊予郡砥部町川澄の重信川水系砥部川左支流銚子川源流部にある灌漑目的のロックフィルダムです。
砥部町一帯は砥部川両岸に開けた斜面を利用して果樹園が広がり中予地区屈指の柑橘生産地となっていますが、水利に乏しく度々干ばつ被害を被ってきました。
特に1967年(昭和42年)の大干ばつは愛媛県全土に甚大な被害をもたらし、これを機に県は各地で灌漑施設の整備を進めます。砥部町でも農林省(現農水省)の補助を受けた県営かんがい排水事業が着手され、その水源として1977年(昭和52年)に竣工したのが銚子ダムです。
かんがい排水事業全体も1991年(平成3年)に完了し、ダムを含むかんがい排水施設は伊予郡砥部町土地改良区が受託し、当ダムで貯留された水は砥部町内472haの樹園地に灌漑用水と防除用水として供給されます。
 
国道379号線から銚子川の渓谷の奥に銚子ダムの堤体を遠望できます。
国道からの標高差は約150メートル、恰も谷間を埋め尽くす城壁のようです。
 
ロックフィルの堤体をズームアップ。
 
国道379号線に銚子ダム公園を示す案内板があり、これに従うとダムサイトに到着します。
安山岩が並ぶ下流面。
 
天端は車両通行可能。
 
ダム竣工記念碑とかんがい排水事業竣工記念碑が並びます。
 
右岸の洪水吐導流部
導流部はこの先で途切れ自然の岩盤を流下します。
 
円形越流式洪水吐。
 
上流面。
 
ダム下を望遠で切り取ると
砂防ダムか副ダムかはわかりませんが、洪水吐から流下した水はここで減勢されるようです。
 
トップの写真を撮った国道379号線が遠望できます。
 
よくこんなところにダムをつくったなというのが印象ですが、ここに作らざるを得ないほど砥部町樹園地の用水確保は困難を極めていたということなんでしょう。
松山市の立岩ダム、今治の朝倉ダム、そしてこの銚子ダムといい1967年(昭和42年)の干ばつが契機となって愛媛県内では規模の大きな灌漑用フィルダムが各地に建設されました。
 
追記
銚子ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに10万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2269 銚子ダム(1304)
愛媛県伊予郡砥部町川澄
重信川水系銚子川
47.2メートル
142メートル
780千㎥/770千㎥
伊予郡砥部町土地改良区
1977年 
◎治水協定が締結されたダム