歌う介護士

看取りをしたご入居者から「あなたの声は癒される」と。お一人一人を思い浮かべながら、ずっと歌い続けています。

施設版「おくりびと」

2009-04-26 01:17:28 | Weblog
その人と家族の「やりたいことをする」「行きたいところへ行く」などを実現するケアを行うようにしている。
ターミナルケアを行っているので、家族とともに最後に立ち会うことになる。

施設のターミナルケアは、自然のままに看取ることを前提にする。
この2年間で7人の方を送り、3人が病院で、4人は施設で看取った。
満床35人の施設では看取りが多いほうだろう。
その4人とも、私が最後を看取ることになった。
これは偶然だが、ご縁なのだと思う。

24日に「早く戻りたい」と退院して大喜びだった方が、あっけなく亡くなった。
退院が決まってから、嬉しくて興奮していたと家族が言う。
退院当日も笑顔で、はっきり判る発語で喋りっぱなしだった。
この方にしては今までなかったこと。
昼食・夕食とも、しっかり食べたという。
「みんなにビールを」
「ご馳走して・・・」
ジャア、一緒に食べましょう。というと自分はいらないと首を振る。
若いときから人にふるまうのが大好きだったと家族が言う。
「昔に戻ったのね。」
しまいには「饅頭を買ってこい」ということになったらしく、たくさん差し入れを頂いた。

翌日午後、出勤し、顔を見に行くと、
しきりに何か話しかけ、手を伸ばして私の手を握る。
残念ながら声がでなくて何を話したかったのか聞き取れなかった。
「後でまた来ますね。」と、申し送りに出るため離れる。
その1時間後、
「危ないです!」とピッチに連絡が。
すぐ階段を降りていくと、すでに下顎呼吸が始まっていた。

受診付き添いで行った時に心肺停止になったときは、一緒に行っていた家族は動転して体が震えておられるほどだったが、今回は、そのとき一度生還しておられるし、ある程度覚悟がついていたらしく、しっかりなさっていた。

「おくりびと」は見ていないが、私たちは死後の看取りまで行う。
医師の死亡確認が済むと、身体を清拭し、家族が希望の衣装を着せる。
化粧をして血色をよくし、義歯があれば義歯も入れる。
旅立ちの準備まで私たちの手で行っている。
中には一緒に化粧を施していただく家族もいる。
今日は、家族は参加せず私たちだけで行った。
葬儀社の手配もするが、これらのことは葬儀社には任せることはしない。
お世話させていただいた方への私たちの思いが籠められる。

この方の最期の衣装は、クリーム色のシャツに濃紺の三つ揃いのスーツ、アスコットタイというダンデイなスタイルだった。

いろいろ話しかけながら着替えを行う。
全て終わると汗びっしょりになる。

「お疲れ様でした、ゆっくりお休みください。ありがとうございました。」