2月6日 国際報道2019
欧米の人々にも広がり始めた“生きがい”という言葉。
きっかけとなったのは1冊の本。
その名も「I KI GA I」である。
2年前にスペインで出版されて以来
43か国で翻訳され
40万部の大ヒットとなった。
国籍や人種を問わず生きづらさを感じている人々の間で共感を呼んでいる。
(フランスの編集者)
「現代社会は変化のスピードがとても早く
今と明日のことしか考えられなくなっている。
この本は生きる意味について興味深いメッセージを与えている。」
「I KI GA I」の著者
スペイン人のエクトル・ガルシアさん(37)。
12年前に来日しITエンジニアとして東京の企業に就職。
朝から晩まで仕事に追われるなか
自分が選んだ道は正しかったのか迷うようになったという。
(著者 ガルシアさん)
「自分は何でこういうことをやっているんだろうって。」
そんなときガルシアさんの人生を大きく変える出来事があった。
旅行で訪れた沖縄の村。
そこで出会ったお年寄りたちとの交流である。
80を超えてもなお現役として地域の活動に参加する人々。
畑仕事に精を出しとれた作物で収入を得ながら笑顔で生き生きと暮らす姿は
ガルシアさんにとってまさに理想の生き方だった。
そのとき頭に浮かんだ言葉は
日本語の「生きがい」だった。
得意なことや好きなことをして社会からも必要とされる。
さらにそこで収入も得られる。
こうしたことが重なり合って人は「生きがい」を感じられると考えたのである。
(著者 ガルシアさん)
「人に会ったら笑顔があった。
すごくシンプルなことだが
みんな生きがいを持って笑顔で生きていくのが一番だと気づいた。」
この沖縄での体験をもとに「生きがい」の概念を本に記したところ
ヨーロッパの国々を中心に大人気となったのである。
人生に意義や満足感 幸福感をもたらすこと
それこそが「生きがい」なのです
(著者 ガルシアさん)
「僕はスペイン人ですけどスペインには『生きがい』の言葉はない。
英語も同じ。
英語は meaning of life(生きる意味)。
『生きがい』はすごく意味の深い言葉。
自分の人生が無駄でないという気分は大事。」
なぜ「I KI GA I」はヨーロッパの人々に受け入れられたのか。
ヨーロッパでは仕事を収入を得る手段として割り切って考える人が多いとされる。
そうした人たちにとって
特技や趣味といったプライベートの部分を仕事にも生かすという
「I KI GA I」の発想が新鮮に映っているという。
パリに暮らすラムセイエさん(31)。
食糧問題に取り組みたいと
フランスでもトップクラスの農業学校に進学。
希望を胸に農業省の外郭団体に就職したものの
思うように成果が出せず
退職してしまう。
自分はいったい何がしたいのか。
改めて見つめなおしたときにヒントを与えてくれたのが「I KI GA I」だった。
小さいころから人を喜ばすことが大好きだったラムセイエさん。
人々を笑顔を引き出すことで社会に貢献し
さらに収入も得ることができる生き方を模索する中で
イベントの企画会社を自ら起ち上げた。
(ラムセイエさん)
「私が企画したイベントで
人々が喜んでくれて本当にうれしかったです。
『I KI GA I』が自信を与えてくれたのです。」
ヨーロッパでは「I KI GA I」を企業経営に活用しようという動きも出始めている。
企業コンサルタントのドンクルシュさん。
企業の幹部社員を対象に
「I KI GA I」の考え方を学ぶ新たな研修メニューを考案した。
「この研修は志向の奥底を探るためにいくつかの質問をします。」
ドンクルシュさんは
企業の幹部が従業員の生きがいを引き出すことができれば
1人1人の生産性も上がり
業績向上にもつながると考えている。
(参加者)
「非常に興味深い。
私自身の隠れた才能も分かった気がします。」
「自分が何をしたいのか
何が強みなのか
徹底して考えることが必要だわ。」
(企業コンサルタント ドンクルシュさん)
「人生の中で何をしたいのか
大事なことは何か
誰もが考えることですが
『I KI GA I』の特徴は何といってもシンプルで分かりやすいことです。
それによって人々は前に進んでいけるのです。」