2021年5月27日 NHKBS1「国際報道2021」
中国サッカー界はこれまで巨額の資金で外国の有名選手を獲得する
いわゆる“爆買い“が注目されてきたが
いま一転して地道な取り組みが始まっている。
去年中国リーグで優勝したチームのグラウンドはいま放置され誰もいない状態になっている。
昨シーズン トップリーグで優勝を果たした「江蘇FC」。
その強豪クラブに何が起きたのか。
事情を聞こうとクラブを訪ねると
(記者)
「解散したのですか?」
(警備員)
「撮影はやめて!」
(解散したのですか?」
(警備員)
「公式の通知はもう出ています。」
ウェブサイトでクラブからファンに通知されたのは“運営停止“の文字。
詳細な説明は無い。
中国政府肝いりのサッカー強化政策のもと
多くのクラブが行なってきたのが外国の有名選手や監督の“爆買い”。
たとえば
元ブラジル代表 オスカル選手は推定年俸30億円。
元アルゼンチン代表 テベス選手は推定年俸46億円。
“サッカーバブル”とも言われ
スポンサー企業が過剰投資を続けてきた。
しかしこうした放漫な経営や新型コロナの影響なども加わり
業績が悪化。
現在は1部から3部まで57クラブがある中国リーグだが
この3年で約20が解散やリーグの脱退を余儀なくされている。
(スポーツ評論家 顔強さん)
「中国のクラブはファンより商業目的を大事にしてきました。
企業がクラブに投資するのは市場戦略で利益を得るためです。
サッカーはただ道具として利用され
これでは長続きしません。」
そんなサッカー界に今新たな動きが起きている。
5年前に設立され現在2部リーグに所属する「南通支雲」。
クラブが掲げる経営方針は“地域密着”である。
シーズン前には地元 江蘇省南通市のファンに向けたイベントを開催。
日頃応援してくれているファンを表彰式でねぎらった。
ファンクラブの会員数は5年で3倍以上に増加。
活動資金の補強に一役買っている。
(ファン)
「チームとファンは“水と魚の関係”です。
水と魚は切り離せません。
地元チームを応援し続けますよ!」
さらにコンビニエンスストアは店内にグッズコーナーを設置。
壁一面を使ってクラブを紹介し
さらなるファン獲得に力を入れている。
(「南通支雲」謝監督)
「クラブを支えるのはファンの応援です。
勝ち負けやお金もうけだけではなく
多くの社会的責任を負っています。
企業の広告看板として存在するだけでは社会的責任を失ってしまいます。」
そして今サッカー人口のすそ野を広げようと地道な取り組みも始まっている。
子ども向けのサッカー教室。
教室を開いた1人 元Jリーガーの楽山孝志さんは中国のスーパーリーグでプレーした経験もある。
教室には現在200人余が参加している。
楽山さんは
サッカーを楽しむ環境をつくることこそがサッカーの健全な発展につながると考えている。
(TGF楽山サッカー塾 楽山孝志コーチ)
「これまでは広告媒体のひとつとしてサッカーをやる。
本来のそれ以外のところで
クラブが成り立つための収益やどうしなければならないという部分がすっぽりなかった。
サッカーが好きな文化を小さい時から感じて育ち
その子たちが将来サポーターに
好きなチーム 地域のチームのために何かしよう
そうなっていくと本当に思う。」