8月28日 NHKBS1「国際報道2020」
新型コロナウィルへの感染を防ぐため世界各地で生活習慣に変化が起きている。
中国ではおなじみの中国料理の食事の場面で新たな取り組みが始まっている。
エビの蒸し餃子にダチョウのロースト。
素材を生かした優しい味わいが特徴の広東料理である。
“食は広州にあり”という言葉で知られる食の都 広東省広州。
創業85年の老舗 広州酒家。
店内に流れる映像で紹介されているのは新型コロナウィルスへの感染対策。
特に力を入れているのが「取り箸」の導入である。
中国料理では大人数で円卓を囲んで料理を直に箸でつつくのがおなじみの光景である。
しかしこの店では
食べる時に使う箸の他に新たに取り箸を1人ずつ導入した。
箸を介して感染が広がるのを防ぐためである。
(客)
「いくつも箸があって面倒ですが
慣れれば問題ありません。」
さらに個室では客の要望に応じて事前に1人分ずつ取り分けるサービスも行っている。
(広州酒家 感染対策担当)
「店がしっかり対策をしていると分かれば
安心して来てくれます。」
実はこうした対策は2003年にSARSが広東省から広がった時にも呼びかけられていた。
しかし手間とコストがかかることや
同席者との親近感を重視する中国の人には抵抗感があり
定着しなかった。
業界団体は研修会などを通じて
今度こそ新たな食文化のスタイルとして定着させたいと考えている。
(広東調理協会 会長)
「取り箸の取り組みと伝統的な観念の間には対立するところがあります。
中国の伝統的な食文化にとって新たな歴史の始まりとしたいのです。」
上海にある企業の中にはビジネスチャンスにつなげようと動き出したところも。
今年4月から取り箸の生産に乗り出し
月に5万膳の取り箸を作っている食器工場。
(取り箸を製造する食器会社 社長)
「皆さんの健康促進に貢献できるよう
休日返上で作っています。」
今後はネット販売にも力を入れ
取り箸を定着させようと意気込んでいる。
飲食店での取り組みが進む一方で
取り箸を使う習慣が家庭の食卓でも徐々に広がりを見せている。
デパートの食器売り場の一角には新たに取り箸を扱うコーナーも設けられた。
WHOと中国の保健当局は合同で行った調査から
ヒトからヒトへの感染の約8割が家庭内で起きていることが判明。
取り箸の効果に期待が高まっているのである。
上海市内に6人で暮らす一家。
家族の間で感染が広がることに不安を感じ
取り箸を使うことにした。
ところが食事に夢中になるとこれまでと同じように
つい自分の箸で取ってしまうことも。
(娘)
「まだ慣れないけど
良い習慣だと思ってやり続けます。」
(父)
「取り箸は安全です。
家だけでなく外に行っても積極的に使っていきます。」
中国料理の世界に取り箸が定着するのか。
1人1人の意識の変化がカギを握りそうである。