6月7日 おはよう日本
霜降り肉が特徴で
日本独自で改良が重ねられてきた和牛。
その値上がりが止まらない。
小売価格の推移を見ると
一般的な肩肉で3年前100g400円台だったのが
今年は600円以上まで値上がりしている。
こうした和牛の価格上昇に伴って
これまで比較的手ごろだった和牛以外の国産牛まで値上がりしている。
最大の理由は和牛の子牛が減っていることである。
日本最大の和牛の産地 鹿児島の市場。
4月の子牛の取引価格は
1年前は1頭平均65万円だったが
平均でも86万円。
価格は過去最高にまで跳ね上がった。
子牛が不足し
これが和牛の価格高騰を招いている。
(競り参加者)
「買えません。
もう買える数字でもない。
異常だと思う この高い相場は。」
背景にあるのは子牛の生産農家の減少である。
子牛の生産を40年以上続けてきた農家も
体力の限界から今年離農した。
子牛の生産を担ってきたのは
規模が小さく
70代以上の農家が中心である。
高齢化にともなってこの5年で全国で3割近く減り
子牛の減少を引き起こしている。
こうした事態に対応を迫られているのが大手食肉加工メーカーである。
グループで市場で買った子牛を育てて
肉を出荷している。
和牛の販売額は年間420億円にのぼる主力事業である。
しかしいま市場で子牛が思うように調達できなくなっている。
このためグループでは3年前から宮城県で自ら子牛の生産に乗り出した。
担当の山崎征二さん。
飼育頭数を徐々に増やしているが
必要とする子牛の数には及ばない。
問題になっているのがコストである。
牧草などのエサはすべて輸入に頼っていて
年間7億円以上。
さらに牛から出る糞尿の処理にも莫大な費用がかかる。
(大手食肉加工メーカー 山崎征二さん)
「もっと大きくしたいけど
ここでやるのはもう精いっぱい。」
そこで活路を求めたのが
九州から1600キロ離れた北海道である。
酪農王国として知られる北海道で
和牛の子牛を生産しようという計画である。
まずは九州で飼育していた和牛の母牛を2日かけて北海道に運ぶ。
今年2月 温暖な九州から氷点下20度の北海道浦幌町に
50頭の和牛が到着した。
長時間の移動と寒暖差
慣れない環境で健康な状態を保てるのか
心配がつのる。
(牧場担当者)
「33度の寒暖差
それが一番の気がかり。
大きなリスクにもかかわらず九州から母牛をここに運んできたのは
酪農王国北海道ならではのメリットがあるからである。
九州では課題だったエサの調達。
自前の畑で安く生産できる。
さらに牛の糞尿は牧草の畑に堆肥にしてまけるため
処理費用も安く済む見通しである。
母牛が箱ばれて2か月。
無事冬を越したことが確認できた。
(大手食肉加工メーカー 山崎征二さん)
「順調にきてあと3か月くらいで種付けも始まる。
安心します。
ほっとした。」
今年中に合わせて600頭の母牛を輸送し
今後も需要が見込める和牛の大きな生産拠点にしていきたい考えである。
(大手食肉加工メーカー 山崎征二さん)
「まず1歩踏み出すことができた。
これから拡大の余地を検討しながら
そういう方向性でやっていきたい。」
今北海道では
酪農を生かして
和牛の子牛を一気に増やそうそうという企業も現れている。
1,700頭の乳牛ホルスタインを飼育し
生乳の生産規模は国内最大規模の会社。
ホルスタインの母牛から生まれてきたのは真っ黒な子牛。
和牛の赤ちゃんである。
ここではホルスタインから毎日のように和牛が生まれて居る。
(牧場責任者)
「お腹の中には肉牛の子牛が入っている。
和牛の受精卵移植をしてホルスタインだけど生まれてくるのは和牛の子牛。」
ホルスタインから生まれるのは
本来ホルスタインのはず。
しかし子宮に和牛の受精卵を移植すると
ホルスタインからでも値段が高い和牛が生まれる。
いわば牛の代理出産である。
ここで生まれた子牛たちは
およそ9か月後市場で売られ
全国各地へ。
そこで2年近く育てられ出荷される。
ことしホルスタインから生まれる和牛は約900頭になる見込みである。
4年後にはその数を3,000頭規模にまで拡大する計画である。
(畜産・酪農会社 延與雄一郎社長)
「やるからには圧倒的にコストが下がる方法を追求していく。
持続可能な生産基盤は確立できるというのを頑張って示していきたい。」