6月7日 キャッチ!
5年前 福島第一原子力発電所の事故を受けて
54の国と地域が日本からの食品輸入に対する規制を実施。
その後 政府の働きかけなどもあって
今年に入ってEUが大幅な規制緩和に踏み切ったほか
これまでに18カ国が規制を撤廃している。
こうした動きと合わせて
アジアや欧米などに特産品の売り込みを続けてきた福島県。
コメについては
一昨年にシンガポール
去年にはマレーシアへの輸出にこぎつけ
今年にはイギリスにも輸出が決まっている。
中東カタールの首都ドーハ。
6月 高級スーパーで日本産のコメの販売を記念するイベントが行われた。
販売が始まったのは福島県猪苗代町のブランド米「いなわしろ天のつぶ」。
かみごたえがあり
すしなどに合う高級米である。
その深みのある味わいに買い物客の反応は上々だったが
気にかけていたのはやはりその安全性だった。
福島県の食品のカタールへの輸入には規制があり
コメに関しても放射性物質の検査証明書が必要になっている。
(来店客)
「福島産だから唯一の心配は証明書のことです。
日本の検査ですから証明書も信用しています。」
中東で初めてとなる福島県産のコメの販売にこぎつけた猪苗代町。
町の職員 小板橋さんはイベントでの反応に好印象を持てた。
(猪苗代町 農林課 小板橋敏弘さん)
「世界的に日本食はブームになっている。
中東でも日本食のレストランはたくさんある。
なかなかいい市場と感じている。」
原発事故後 農産品の輸出がほとんどストップした福島県。
日本食品を数多く輸入するアジア各国での商談会をはじめ
イタリアで去年開かれた食をテーマにした国際博覧会「ミラノ博」でPRするなど
輸出復活に向けて積極的に取り組んできた。
そして今年2月には
UAEアラブ首長国連邦のドバイで開かれた
世界最大級の食品見本市「ガルフード」に参加。
成長を続ける中東の市場をねらう120か国5,000の企業が参加するなか
日本が設けたパビリオンに猪苗代町も初めてブースを構えた。
中東ではここ数年
和食レストランやすしを販売する店が増え
日本の食材へのニーズが拡大しているにもかかわらず
日本産のコメの輸出が少ないことを知り
未開拓の市場に打って出ることにした。
日本全国から複数の団体が参加したが
コメを展示したのは猪苗代町のみ。
小板橋さんたちはここでも英語版の検査証明書を用意して
その安全性をアピールした。
(猪苗代町 農林部 小板橋敏弘さん)
「お米の特徴よりも
原発はどうなんだ
放射能はどうなんだ
という話をさせていただく方が多い。
海外の人は証明書を提出すると理解いただける。」
イベントでの懇切丁寧な説明の末
カタールとUAEで営業する日本食材の輸入販売業者との取引が決まった。
日本のコメにとって今追い風が吹いていることも
商談成立につながった理由の1つだったという。
これまでジャポニカ米のシェアを握っていたカリフォルニア産だが
高価とされる日本産との価格差が縮まっている。
(輸入販売業者 露木輝之さん)
「カリフォルニア米に限らず
コメの相場自体が平均して上がっているので
以前あった驚くような価格の差は無くなりつつある。
日本産にもチャンスがあると思っている。」
そこで小板橋さんたちは
捕食用の食材として定着しているカリフォルニア米のシェアを
質の良さで切り崩そうと
売り込みをさらに強化することにした。
訪れたのはドバイにあるアジア料理の高級レストラン。
すしなどを出すこのレストランはカリフォルニア産を使っているが
シェフからはより質の高いコメを求める声が聴かれた。
(シェフ)
「日本にはよく行くし
腕の良いすし職人も知っているから
本場の味に近づかないと私にとって納得できません。」
「いなわしろ天のつぶ」のおいしさについて
3袋を囲んでシェフと話す小板橋さんたち。
和食を出す現地レストランのレベルの高さを再認識し
中東におけるチャンスが拡大したのを実感したという。
(猪苗代町 農林課 小板橋敏弘さん)
「良いものを使おうという熱意が感じられる本物志向の地域。
販路を拡大し
名前を覚えてもらい
中東と一緒にやっていきたい。」