2021年5月25日 読売新聞「編集手帳」
20世紀を代表するサッカー選手の一人、
オランダのヨハン・クライフ氏は指導者としても名をはせた。
名門バルセロナの監督に招かれ、
現在もチームが受け継ぐ攻撃サッカーの基礎を築いたといわれる。
日本のプロ野球でいえば、
野村克也さんのような人で至言にこと欠かない。
その一つに<横パスは問題の解決にならない>がある。
要は、
敵を倒すつもりならなぜ縦パスを蹴らないのかと、
皮肉と鼓舞の両方を短いことばに込めたらしい。
縦パスを早いうちに蹴っていたかどうか。
英国をはじめ、
ワクチン接種の進む国から届く映像にうらやましいと思わない日はない。
ロックダウンから解放され、
カフェで口元を気にせず談笑したり、
夕暮れのバーで祝杯を上げたり…。
日本とは対照的な光景だろう。
他の先進国に比べて調達が遅れたうえ、
市町村の集団接種がなかなか加速しない。
東京、大阪で自衛隊を活用した大規模な接種が始まったほか、
宮城、群馬、愛知では県が特設会場を設けるなど市町村任せにしない動きも広がる。
現状は何とか縦パスを蹴った段階だろう。
次はどう効率よくゴールを決めていくか。