7月8日 NHK「おはよう日本」
大切なペットが死んでしまったあと納骨し供養できる“ペット霊園”が増えてきた。
しかし仏教ではどうしてもできないとされてきたことがある。
それは “人間と同じ墓に入る”ことである。
”動物は人間とは違う
生まれ変わっても極楽には行けない”と解釈されてきたのが理由だという。
ただペットを同じ墓で眠らせてほしいという飼い主は年々増えている。
仏教の中でも信者数の多い宗派のひとつ
浄土宗で議論が始まった。
都内に住む夫婦。
これまで犬と猫 合わせて7匹を看取ってきた。
子どもや孫のような存在だったペットたち。
長年 自分たちとペットが一緒に入れる墓を探してきたが相談したすべての寺に断られたという。
結局ペット専用の納骨堂で供養してもらうことにした。
自分たちの墓は別の場所にある。
「住む世界が違うということで
宗教界と宗教の倫理上の問題でお断りしたいと。
ほとんどダメ
全部ダメ。」
人間とペットは同じ墓に入ることはできない。
これは仏教の六道輪廻(ろくどうりんね)と呼ばれる世界観によるものである。
動物は“畜生”と呼ばれる苦しい世界に属し
生まれ変わると極楽浄土へ行ける人間とは区別されてきた。
それでも人間とペットが一緒に入れる墓がほしいという飼い主の要望は増える一方だという。
東京世田谷区の浄土宗観応寺の住職 成田淳教さんは
経典を調べたうえで問題はないと判断し
10年前に人間とペットが一緒に入れる墓を作った。
「この中に人間と一緒にペットも入る形になっています。」
希望者は多く
かつてはゼロだった檀家の数は約150にまで増えた。
(観応寺 住職 成田淳教さん)
「ペットの供養をして一緒に入れるならと檀家になるケースもある。」
人間とペットが同じ墓に入ることは仏の教えに反しないのか。
浄土宗の研究所には全国の寺から相談が寄せられている。
研究員の石田一裕さんは2年前から経典や文献の調査を行っている。
探したのは六道輪廻で畜生に属する動物が死んだあとどこへ行くのかを記した記述である。
浄土宗の教えのかなめとされる経典に
従来の解釈では説明できない言葉があった。
皆無解脱(かいむげだつ)。
命が終わると動物も含めて皆が極楽浄土に行けると解釈できるという。
(浄土宗総合研究所 研究員 石田一裕さん)
「“地獄・餓鬼・畜生”仏教でいう苦しいところにある生き物が
命終わったあとは“解脱”
仏さんの世界に生まれ変わる。
仏さんの光に照らされて極楽浄土に生まれ変わることができる。」
6月 研究発表を行う浄土宗学術大会が開かれ全国の浄土宗の僧侶が集まった。
石田さんは
動物も極楽浄土へ行けるため人間と同じ墓に入っても問題はないという結果を伝えた。
(石田一裕さん)
「阿弥陀仏は畜生であっても命終わり(みょうじゅう)の後そのまま極楽浄土に迎える。
そういう例もある。」
(参加した僧侶)
「畜生含めてダメ(極楽に行けない)というものがあったのか?」
(石田一裕さん)
「極楽に行けないという記述は見つけられませんでした。」
浄土宗では今後
ペットを同じ墓に入れたいという問い合わせがあった場合
仏の教えに反しないと答える方針である。
(参加した僧侶)
「人間の家族と同じように大事にされる時代
ペットも往生できることを広めていきたい。」
(浄土宗総合研究所 研究員 石田一裕さん)
「聴衆の皆さんとは意見が共有できたと思う。
教理が“大丈夫ですよ”という形
これを提供していくのが一番の仕事。」
信者数が多いとされる浄土真宗本願寺派と高野山真言宗は
宗派として公式な見解は出していないということである。