11月20日 編集手帳
世間に称賛が渦巻いたのを思い出す。
カルロス・ゴーン社長(当時)率いる日産自動車が、
最大3兆円近くあった負債を完済したと発表したのは2003年春のことだった。
当時の本紙「時事川柳」に次の句がある。
<ゴーン氏に日本改革まかせたい>。
ルノーから倒産寸前の日産に派遣された経営者は一躍、
時の人となった。
「企業の通信簿」とも呼ばれる有価証券報告書を、
氏の像や言葉をかさねて読んだ投資家もおいでだろう。
きのう流れたニュースもまた、
通信簿とともにあった。
東京地検特捜部がゴーン氏を逮捕した。
報酬を有価証券報告書に過少に記載した疑いがあるという。
捜査と軌を一にしていたか、
日産は資金の重大な私的流用があったとして取締役会に会長職の解任を提案すると発表した。
すぐれた性能の車を次々に作り、
ユーザーに喜ばれ、
世界第2位(昨年)のグループに押し上げた栄光の陰に、
私欲まみれの不正があったとすれば残念というほかはない。
その人の高額報酬が話題になったのはいつ頃だったか。
約8年前、
川柳欄を飾った一句が予見的である。
<報酬にゴーンと頭殴られる>