1月28日 NHK「おはよう日本」
ナチスによる負の歴史を反省し過去と向き合ってきたドイツ。
しかし最近極右政党の台頭などにより反ユダヤ主義が再びくすぶり始め
ユダヤ教徒の間では危機感が高まっている。
去年10月
ドイツ東部で起きた銃撃事件。
ユダヤ教の礼拝所が狙われ
2人が死亡。
反ユダヤ主義の思想を持つ男による犯行だった。
ベルリンに住むユダヤ教徒のザタノフスキさん。
銃撃当時 礼拝所の中には友人がいたが幸いけがはなかった。
(ユダヤ教徒 ザタノフスキさん)
「友人が居合わせたと聞いたとき
危険を感じました。」
近年ドイツではユダヤ教徒を標的にした犯罪が増加。
一昨年は前年より20%増加している。
背景として極右政党の台頭や排他的な右派生徒の躍進が指摘されている。
(ユダヤ教徒 ザタノフスキさん)
「ドイツはユダヤ教徒が生活できる国であり
過去の歴史と向き合ってきた国だと思っています。
しかしすべての人が歴史から学んでいるわけではない。」
ドイツは過去の歴史に本当に向き合ってきたのか。
それに疑問を投げかける調査結果が最近明らかになった。
ドイツで行われた世論調査で
ホロコーストを
“全く”又は“ほんの少ししか知らない”と答えた若者が4割にのぼったというのである。
専門家は
“教育現場で教える立場にある教師自身がナチスドイツの歴史を十分に把握しておらず
それが生徒の無関心を招く一因になっている”
と指摘する。
(ベルリン工科大学反ユダヤ主義研究センター アーノルト主任研究員)
「ホロコーストを学ぶことを拒絶したり不快に思う状況が一部で見られます。
“自分には何の関係もない”という考えや
“なぜドイツ人は未だに学ぶ必要があるのか”という考えが生まれている。」
こうした状況に危機感を持ったザタノフスキさん。
差別や憎しみがどんな悲劇を生むのか
子どもたちに直接語りかける活動を仲間と始めた。
この日あった子どもたちはみなユダヤ教徒と会うのは初めてである。
「ユダヤ教徒について何か知っている?」
「知らないです。」
ザタノフスキさんは
ユダヤ教徒の宗教や暮らしだけでなく激しく迫害された歴史も丁寧に説明した。
「ユダヤ教徒の店で物を買うなっていう運動があったんだよ。」
「もう過去のことかな?」
「今もまだ人種差別的な人はいる。」
「誰であっても親切にすることが大切。」
「肌の色や国の違いで非難してはいけない。」
負の記憶ほど風化を食い止めるのは難しいと感じているザタノフスキさん。
それでも対話を重ねることで
“次の世代にも過去の教訓を刻んでいきたい”としている。
(ユダヤ教徒 ザタノフスキさん)
「対話をすることで
人に対する寛容さや理解が生まれました。
ホロコーストはドイツにとって抵抗なく簡単に学べる歴史ではありません。
けれど現在そして将来のために
知ることは非常に重要なのです。」
“ナチス”という負の歴史に向き合い続けてきたドイツで
くすぶり始めた反ユダヤ主義。
記憶の風化をいかに食い止めるか
若い世代への働きかけが始まっている。