9月16日 編集手帳
太古の昔、
空は地につきそうなほど低く、
人は天地の間を這(は)って進んだ。
老いた首長が池の中の棒を拾って考える。
この棒で空を押し上げれば、
人は立ち上がれるようになり、
みんなが幸せになれる、と。
望んだ通りに地を這う人はいなくなった。
曲がってしまった棒を首長が投げ放つと、
その手に戻ってきた。
オーストラリアの先住民に伝わるブーメランの由来という(『スロースポーツに夢中!』岩波書店)。
それは狩猟やスポーツの道具になったが、
人々に何一つ恩恵をもたらさない飛び道具もある。
またしても弾道ミサイルが日本の上空を飛んだ。
国連安全保障理事会が追加制裁決議を採択した直後の愚行である。
世界の安全を脅かす行為には制裁という“ブーメラン効果”を及ぼす。
国際社会の意思が届かない相手に対し、
水も漏らさぬ制裁の履行で、
その効果を肌身に感じさせねばなるまい。
美しい話を語り継いできた人々には失礼ながら、
ブーメランの伝説を北朝鮮にあてはめてみる。
もとの棒はミサイル開発に要した資金であり、
技術だろう。
独裁者に首長の心あらば困窮する幾人もが救われように。