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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ウォール街(V)

2011-02-24 22:22:36 | 映画(あ)
評価点:73点/1987年/アメリカ

監督:オリーバー・ストーン

テーマはむしろ現代風。けれどもすこし脇が甘い。

1980年代後半、アメリカは金融バブルに沸いていた。
ウォールストリートマンのバド・フォックス(チャーリー・シーン)は自分の顧客を儲けさせることに心血を注いでいたが、うまくいかない。
そんなある日、父親が働くブルースター航空でちょっとした情報を手に入れる。
これを機にと考えた彼は、伝説のマネートレーダーであるゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)に面会を申し入れるが…。

映画「ウォール街」が「ウォール・ストリート」として続編が公開されることになった。
僕は前作を見ていなかったので、予習としてこの作品を見ることにした。
もうずいぶん昔の映画だというのは確かだ。
しかし、今見ると「歴史は繰り返される」という言葉を身にしみて感じることができる。

チャーリー・シーンもマイケル・ダグラスもみんな若い。
公開中の「ウォール・ストリート」を観る気ならこの作品を観ておくことをお薦めする。

▼以下はネタバレあり▼

僕はこの映画を観ながら、なんだかゲッコーが「羊たちの沈黙」のレクターのように見えた。
ゲッコーのカリスマ性は、確かに続編を作りたくなるようなものがある。
当時の映画としてはここまでマネーゲームについておもしろく描いた作品はなかったのだろう。
画期的だったのだろうし、今観ても十分おもしろい。

話は非常に単純だ。
なぜなら、この映画も結局「父殺しの物語」であるからだ。
父親が象徴しているのは、額に汗して実際に触れる物を作っていくという職人。
それはアメリカがそれまで自動車などの産業を基幹としてきたことと通じる。
飛行機を作っているわけだが、自動車と置き換えた方がよりわかりやすいかもしれない。
アメリカはずっと、物を作り続けて大きくなってきたのだ。

それに対して、息子は金融バブルを象徴する。
アメリカが巻き込まれている不況(当時)は実は本当は無かったお金を巡る「バブル」であった。
そのことを身をもって体験するのが、息子のバドなのだ。

彼がラストで逮捕されてしまうことがこの映画が考えていることを如実に示している。
「マネーゲームは犯罪だ」ということなのだ。
インサイダー取引がこの映画のテーマではない。
それはただのテクニック、トリックに過ぎない。
テーマは紛れもなくお金を巡る、危機感と倫理意識の発現である。

その諸悪の根源にして、アメリカの悪意としてゲッコーが位置づけられる。
「羊」でちょうど犯罪のサガを象徴していたのがレクターであるのと同じだ。
底が見えない恐ろしさがあり、その印象がまさにマネーゲームにとりつかれた男という印象を受ける。
彼が持つものは最新のものばかりで、携帯電話の走りも持っている。
美術にも造詣が深く、口には葉巻をくゆらせる。
まさに成金のカリスマであり、冷酷な判断だけで生き残ってきたような男だ。
片腕として使ってきたバドの計画をあっさりフイにしてしまうあたりがさすが助演男優賞を勝ち取るだけのことはある。

おもしろく、学ぶ点はおおい作品だが、脇の甘さも目立つ。
バドが父親からお金を借りるほど生活に苦しんでいたところが、父親にお金を渡せるほどに収入が増える。
それにともなって女性もよってくる(語弊はあるが、劇中ではその表現が適切であろう)。
それほど生活が変化したのに、彼の生活が物的に変化したことがわかりにくい。
小道具などで、変化したことをもっとわかりやすくしておけば、ラストの「お金よりも物作り」という決断まで話が劇的になったはずだ。
ラストのカタルシスが低めなのは、彼がどれ程変わったのか分かりにくいからだろう。

また、女性への扱いもひどい。
ゲッコーとゆかりのある女性だったにしても、あっさりお金がなくなると去っていく女性というのはどうなのだろう。
もっと彼女の内面を描かなければ、バド自身がなぜ彼女に惹かれて住まわせているのかまで見えてこない。
1987年の映画だから仕方がないのか。

公開中の次回作ではそのあたりが「娘との関係修復」となっていて時代をとらえているが。

珠玉の作品、とまでは言えない、佳作だ。

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2 コメント

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Unknown (ヒカル)
2011-02-27 02:00:19
「ウォール・ストリート」の批評、楽しみにしてます。
返信する
現在構想中。 (menfith)
2011-02-27 22:41:41
管理人のmenfithです。
ちょっと見たい映画が増えてきました。
けれども相変わらずなぜか仕事に追われ気味です。
一月でもう4月ですね。
速い速い。
やるべきことと、やりたいこと、折り合いをつけないといけませんね。

>ヒカルさん
書き込みありがとうございます。

「ウォールストリート」は現在構想中です。
ほぼ頭の中ではできあがっているので、もう少し待って下さい。
できれば明日には、と考えていますが、予定は未定なので…。
返信する

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