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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

「迷惑動画」は何を暴いたか。

2023-02-10 21:19:28 | 不定期コラム
大手回転寿司チェーン店における迷惑行為を動画としてインターネット上に投稿したことが話題になっている。
私はどこのだれがしたのかあまり興味がないのでニュースは追っていない。
どうやらこれまでの他の迷惑動画同様に、痛烈な私刑が流行っているようだ。

株価も大きく下がり、業務形態そのものを見直せざるをえない事態につながりそうだ。
私はこれについて、少し違った視点から考えてみたい。
そのため、「誰が悪いのか」「どのような罰が適当か」といった責任論はいったん保留する。
承認欲求やスマホの功罪などもこの際度外視する。
私の興味はそんなところにはないからだ。

迷惑行為を行った当事者がどのような意図で一連の行為があったのか、私は知らないし、本人に聞き出すこともできない。
だが、少なくともここまで話題になったのは、一つの深刻な本質を衝いていたからだろう。
それは、「やろうと思えばどこまでも不潔な不遜な行動が取り得る業務形態だった」ということだ。
言い換えれば、こういう人間が多いかどうかは別として「可能である」という行為が他の客を不安にさせる、ということだ。
あるいは、外食産業は客に依存する形で営業していたということだ。

ここで問い直されるべきは、SNSへの再教育ではない。
可能であるなら、それをSNSに上げようが、動画にしようが、できてしまう、という点だ。
それは「常識的にしない」というようなことではない。
銃の乱射を考えて見れば良い。
ライフルを持っていても、【常識的に】銃を乱射したりしない。
けれども、それは【構造的に】起こってしまうものになっている。
だから規制すべきだという議論になる。

この一連の話も、【構造的に】可能であれば、その構造を改善する以外に改善の手立てはない。
炎上した高校生? をいくら追い込んでも、それは改善されることはない。
そして、この点に対して、実は外食産業は客に依存する形で営業していたのだということが明らかになってくる。

要するに、客の【常識】なるものに依存することで、効率化を図り、人件費を削り、安く提供してきた。
私を含めた一般的な顧客は、その安さに惹かれて、せっせと商品を口に運んでいた。
安いからこそ訪れ、訪れるからこそ安く提供できた。
その点においては、利用したことがあるすべての人間による共犯関係が成り立っていた。
しかし、その【構造】そのものが不自然でいびつなものだったということだ。

その意味で、起こるべくして起こった出来事であり、安く提供されていることへの疑問を、我々消費者自身が問い直すべき事件である。
過剰な炎上や私刑は、そのことを覆い隠してしまいたいが故の行為のようにさえ見える。
「俺たちは悪くない、あいつだけが悪いのだ」と。

しかし、それだけではない。
この一連の事件は、人間扱いしなかった客がどのような行動に出るのかということを象徴するものでもある。
考えてみれば、回転寿司の営業形態は極めてシステマティックに行われている。
徹底的に合理化されたシステムは、できるだけ直接的に人と人とがやりとりしない没交渉の中で、支払いまでが完遂するようになっている。
だからこそ、コロナ禍でも人気を保っていた。
それはすなわち、客を人間扱いしないというシステムだ。
まるで工場に運ばれてくる餌をついばむニワトリのように、私たちは注文した寿司を口に運ぶ。
メニューのタッチパネルから好きなモノを選び、会計もわずか数秒店員に確認されるのみだ。

人間は人間に対峙して初めて人間になる
この回転寿司の店内では、同じグループの客のみが自分を人間扱いしてくれる相手であり、店員との交渉はほぼない。
だからといって小うるさい大将にうんちくを垂れてほしいというのではない。
人件費の削減や没交渉を客側が望んだことでもある。
問題は、人間と対峙するシステムであれば、この一連の迷惑行為は起こりえなかったということだ。

だからこの騒動は、人間として扱ってもらえなかった客が、まさに家畜化したことを決定づける出来事なのだ。

この騒動はだからこそ、外食産業の今後のあり方を問うにはふさわしい。
人間扱いされていなかった者がどのような反逆行為に転じるのか。
なるほど当人たちはそんな思いや志はなかったことだろう。
しかし、結果的に彼ら/彼女らの行動は、私たちがいかに客として虐げられていたかということを示すものとなった。

こうした【構造的】問題を解決するにはおおよそ二つしかない。
一つは人間と対峙することを復活させるか。
しかしこれだけオートフォーメンション化と合理化を進めた上で、人件費を増大させることは不可能だ。
だから結論はもう一つしかない。
客から完全に自由さを剥奪して、ますますオートフォーメンションを完遂させることだ。
あらゆるサービスを有料化して必要最小限のみを提供する。
すべては自己責任で選べるので、安く安全に食事を終えることができる。
完全に個別化されたブロイラー工場のようなシステムだ。

そのとき、私たちはお金を払って自らを家畜化するというWIN-WINを完成させるだろう。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
探し求めていた答えに出会い、感謝。 (舶匝)
2023-02-12 22:28:10
あの動画は、
回転寿司という営業形態の終焉を、
突き付けたケースだと思います。

当方は
https://blog.goo.ne.jp/hakusou_onlinechecker/e/ed18fc6ed887ba6788cfd01d70ef5a99 にて、
焼肉食べ放題店での食中毒や自販機荒らしを念頭に置いて、検討。それらと比較するだけでも、回転寿司は「隙だらけ」の営業形態だと気付きました。
返信する
コメントありがとうございます。 (menfith)
2023-02-13 13:15:25
管理人のmenfithです。
体調下降気味です。
とりあえず生きることを目標に、日々を耐えています。

>舶匝さん
書き込みありがとうございます。

「終焉」と言えるだけの事件かどうかは私にはわかりません。
ただ、株価の暴落は何らかの対策を講じさせるだけの威力のあるものでしたね。

なり手がいないこともあり、外食産業全体が、淘汰されていく時期にあるのかもしれません。
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