私たちが考える、近未来はだいたいがディストピアと呼ばれるもので、映画になっているものもそういうものが多い気がする。
「TIME」、「アイランド」、「私を離さないで」、「トータルリコール」、枚挙にいとまがない。
そしてその多くの作品で描かれているのが、二極化だ。
非常に綺麗な整理された安定した生活をする人々と、生きることがその日しか保証されていないような底辺に住む人々。
そういう対立が描かれるこ . . . 本文を読む
以前読んだ森博嗣の新書に抽象化することの大切さが書いてあった。
だが、私はその抽象化もまた思考停止に陥る怖さがあるのではないかと思うようになってきた。
抽象化することで、事象や現象が記号化されていく。
その際具体的な差異が捨象されて、根源的な、共通部分だけが残る。
だが、それによって本来捨象されてはならない個別的な事情が見逃されていく可能性がないか。
そういう危惧を感じるようになった。
その端 . . . 本文を読む
成熟とはいつか、それは容易に決められない。精神的な成熟となればなおさらだろう。
私たちは至極不安定な位置でいつも右往左往している。
いつ私がなんらかの形で職を失ったり財を失ったりするか、わからない。
そんなことはないと願いたいが、それは分からないのが正直なところだ。
そんな私が成熟したのかと問われればまだまだだと即答するだろう。
柄谷行人だったかどこかの批評で、成熟というのは未熟を発見するための . . . 本文を読む
息子が生まれて、母親である妻は饒舌になったように思う。
もともと子どもがいなくてもお互い話をしていたつもりだったが、息子が生まれてからはもっと話をしていると思う。
特に話をしていた時期は子どもが生まれてすぐのころだ。
その頃ちょうどSNSや育児ブログでの記事がよく目につく時期だった。
こういうことを書いて叩かれた、炎上した、というような記事だった。
自分に子どもがなければそういう情報は気になな . . . 本文を読む
極度に純化された世界で生きていることを私たちはすぐに忘れてしまう。
都市に生きていると、そこは人間しかいない。
これほど純化して他の生命を排除した世界で生きる動物はいない。
異常だ。
そして私たちはそれゆえ自分たちが互いに干渉しあって生きていると勘違いしている。
本当はもっと別の要素が強いのに、それを棚に上げて、いやまるでそれを口にすることが悪徳でさえあるように、避けている。
なぜこの天災が . . . 本文を読む
息子が生まれてから物語を体験することが多くなった。
絵本を毎日のように読まされて、あぐらを組んだ私の足におしりから近づいてきてどすんと座る、そういう光景が当たり前になった。
彼は絵本の出来事を現実でも探している。
祭りや買い物、電車の乗り換え、あらゆることを絵本から取り出して現実を眺めている。
私たちはいつのまにか、現実を物語にしたものを楽しんでいるように考えているのかもしれない。
実際にはむし . . . 本文を読む
近くのスーパーでも電子マネーによる決算のサービスを少し前から始めた。
その数ヶ月前からキャンペーンを打ち、うるさいくらいにその電子マネーを勧めていた。
私は必要がないと判断して未だに利用していない。
その様子を見ていて違和感を持った。
彼らはノルマや目標があるのだろう。
熱心に、毎回レジを通るたびに、勧めてくれた。
こちらのほうがお得ですよ、と。
しかし、この流れはレジの無人化、人件費の削減 . . . 本文を読む
評価点:87点/2017年/アメリカ/115分
監督・脚本:マーティン・マクドナー
完成度が高い故に、嫌な映画だ。
ミズーリ州の田舎町。
ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、地元の広告代理店を訪れて看板の設置を依頼した。
地元警官が通りかかったとき、その看板を見て驚いた。
その広告は、7ヶ月前にレイプされて殺された少女の捜査が進まないことを非難するものだった。
ミルドレッドはその母 . . . 本文を読む