いま渇望の底から手をのばし、かすかな愛にふれる。
引き続き北欧作品。京都シネマにて鑑賞しました。
福祉が最も充実している北欧、その一つがデンマーク。そんなイメージなのに、えぇ~こんなに悲惨な生活を送っている人たちがいるとは知りませんでした。もちろんフィクションなのだろうけど、、、、、。イメージだけで決めつけちゃあいけないなと実感しました。
闇の部分が描かれた作品。
原作はデンマーク出身の若手作家 ヨナス・T・べグトソンの小説「SUBMARINO」を元にデンマークのトマス・ヴィンターベア監督が映画化。
「SUBMARINO」とは、水の中に無理やり頭を沈められるという拷問の事を言うらしい。邦題の「光のほうへ」とは正反対で物凄い重さを感じます。タイトル一つで随分違いますね。
さて実際デンマークには約5000人のホームレスがいるといわれているそうです。そしてそのうちアルコールや薬物の問題を抱えていたり、刑務所から出所したばかりで住むところがないケースが大部分を占めるようです。
だからこの作品に描かれているのは、まさに今のデンマーク事情なのかもしれません。
登場する兄弟はそんな厳しいデンマークで、悲惨の状況で必死に生きている人たち。
幼少期から、2人はアルコール依存症の母親と暮らしていたが、愛される事も無く・・・・。唯一心を癒すものは幼い弟。育児放棄した母に代わって愛情を注ぐのだった。
タバコをふかしながら、盗んだミルクを与えるニックの姿が印象的だ。名前がない弟に電話帳からやみくもに名前を選ぶ。そして洗礼のまねごと。
ところが弟はある日突然あっけなく死んでしまう。
ここから時は経ち、成人した2人のスポットがあてられる。
兄のニック。
幼少時期のニックよりも骨太な雰囲気。ちょっとイメージが変わります。
交際していたアナと別れ、自暴自棄になって人を殴り、最近まで刑務所に入っていた。現在は臨時宿泊施設で暮らしながら、酒と肉体を鍛えることで時間を埋めている。
施設の設備も良さそうです。金まわりもそんなに悪くない感じ。贅沢な事を望まなければ、これは良いんじゃないでしょうかね。
でもこの生活にどっぷり浸かって、いつまでもこんな浮草暮らしは良いものか?なんて思いますけどね。
イヴァンは精神的な病に見舞われているような感じがしましたが。
そういう設定ではないのか?性的欲望の強い人物でもありました。
ある日、アナの兄イヴァン(モーテン・ローセ)と街で偶然再会する。イヴァンはニックを、今は結婚して子供もいるアナのところへ案内する。アナと目が合うと、ニックは逃げるように立ち去る。
その夜、ニックはイヴァンに、アナが自分たちの子供を妊娠したが中絶し、そのままいなくなったことを打ち明ける。
一方ニックの弟は妻を交通事故で亡くし、幼い息子マーティンをひとりで育てていた。ある日、息子をちゃんと育てられないなら引き離すとソーシャルワーカーに言われると、生活保護を断ってその場を飛び出す。
しかし彼は家に着くと息子をリビングに残して、バスルームで慣れた手つきでクスリを打つのだった。
生活保護を受けている親子の部屋は意外にも小奇麗、そんな切羽詰まった感じはしません・・・。
さてお互い辛い過去を封印するために関わらずに生きてきた兄弟は、母親の死をきっかけに教会で再会します。兄は母親の遺産を弟に譲ろうとするが、弟は慌てて、もうクスリはやっていないと答える。兄はマーティンが心配だと告げ、2人は別れる……。
思いがけない遺産!大金を得るニックの弟は、その金を元に仕事を始める。福祉局の援助を受けず、自力で稼ぐという姿勢は素晴らしいけど、、、、。
選んだ道が間違っている。大金を稼げるという甘い考えは、結局自分の首を絞めることになる。
息子を愛する気持ちがあるなら、真っ当な道を選ぶべきなのだろうが。。。。母に及んだアルコール依存症と同じく意思の弱さを象徴しているようにも見える。
そうそう弟には具体的な名前はつけられていないんです。それが気になるので、ずっとチェックしていたんだけど、「ニックの弟」もしくは「マーティンの父」という風に呼ばれていた。
ニックが心配していたようにマーティンの行く末に暗い影が、、、、。
デンマークの充実した福祉政策は確かに素晴らしい。でも現実はその政策と裏腹に5000人ものホームレス化って?どうなんだろう。先にも述べたが、刑務所から出所しても手厚い待遇を受けられる制度や生活保護を受けていても、幼稚園に通えたり、快適な住まいでの生活保障制度・・・。これらは果たして本当に地に落ちた人たちにとって、本当に必要な政策なのか?という疑問。
ラスト近くで兄弟はまた出会いますが、何と獄中での再会。心残りな会話のやり取りの末にこれで会う事もなく終わります。
邦題のタイトル通り、光のほうへ行けるのかしら?
作品紹介(goo映画より)
愛された記憶もなく、また、愛情を注いだはずの幼い命を守り切れなかった経験が、少年だった兄弟にどれだけ深い傷を負わせたことか。登場人物は誰もが絶望の淵に沈み、そこから這い上がることを夢みながらもがき苦しんでいる。愛する術を知らない無防備な人々の苦悩の中に再生への希望を描いた本作は、デンマークの作家ヨナス・T・ベングトソンの小説「SUBMARINO」を、カンヌ国際映画祭審査員賞受賞の『セレブレーション』や、銃で平和を唱える若者を描いた『DEAR WENDY ディア・ウェンディ』のトマス・ヴィンターベア監督が映画化。デンマーク・アカデミー賞では弟役のペーター・プラウボーが助演男優賞に輝いたのをはじめ5部門を制している。
メディア | 映画 |
上映時間 | 114分 |
製作国 | デンマーク |
公開情報 | 劇場公開(ビターズ・エンド) |
初公開年月 | 2011/06/04 |
ジャンル | ドラマ |
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