つかの間でもいい。違う人生を生きてみたい。
5月26日、京都シネマにて鑑賞。キム・キドクが原案・製作をしているということもあって、少し気になっていた作品です。韓国トップスターW主演だということです。でも私はあまりこのお二人の方のことは知りません(笑)京都シネマにはシアターが3つあります。その1つのシアターではあの「重力ピエロ」が上映されていて、遅い時間なのにお客さんがいっぱい。こちらはというと、その前の上映は結構入っておられたようですが・・・・・。ふたを開けるとたったの3人のみ!ということでガラガラ状態。まさに貸し切りみたいでした。
まあこんな日もあるか。
一人の年配の女性はどうも韓国映画スターのファン?のようで、前の席に座って釘付けでした。どちらのファンなのか?分かりませんが。
さてどんな作品かというと・・・・・。
本物のYAKUZAに出演依頼?
それまで順調だった、ボン監督(コ・チャンソク)によるスタ(カン・ジファン)主演のアクション映画の撮影が今行き詰まっているのは、監督からアクションのリアルさを求められるスタが共演者を本気で殴りつけ大ケガをさせてしまったため。これにはスタのファンもキレてしまい、見舞いを終えて出てきた病院の前でスタはファンから卵をぶつけられる始末
映画はつくりものだと分かっていても、アクションはリアルに!と要求される。そんなしかし本気で殴るわけにはいかないでもリアルにといわれると暴力的に見せるために手を出さないと臨場感はでないよね。
誰でもそう思うはずだが、共演者が誰もいなくなったスタが思い出したのは、あの日高級クラブで顔を合わせ、サインをもらいにきたホンモノのヤクザ、ガンペ(ソ・ジソプ)。あの時の話では、ガンペは昔端役で映画に出ていたらしい。当然暴力はお手のものだから、このアクション映画の俺の相手役にあいつならピッタリ。そう思ったスタはボン監督を差し置いて勝手にガンペに対して出演依頼に臨んだ。
何故?本物のYAKUZAに出演依頼したのか?冒頭に高級クラブでガンペが女優のカン・ミナ(ホン・スヒョン)とすれ違ったことから、人気スターのスタが別室に来ていることを知り、ガンペがスタのサインをもらいに行くというところからスタートする。それが2人最初の「対決」になるのだ。ホンモノのYAKUZAを前にしてスタがビビらないのは、スタにも多少腕に自信があるためだが、「短い人生、ムダにするな!」とカッコいいお説教をしている姿をみる姿は何とくヤバそう。ぐっとガンペが我慢したのは何故なのか?また、スタから出演依頼を受けたガンペが、アクションシーンはガチンコで闘うことを条件としてオーケーしたのは一体なぜ?
スタが提案した素人俳優の起用、ましてやホンモノのYAKUZAの起用に難色を示すボン監督をスタが説得して撮影が始まったわけだが、殴り合いのアクション前の追っかけっこなどのアクションシーンで意外にガンペは苦戦。いくらケンカが強くても、酒とたばこに浸っているためか?しかしここで弱音を吐いたのではヤクザの名がすたる。とばかりにガンペは懸命に俳優業にのめり込んでいったが、俳優業は意外に難しそうだ。
スタほど大スターになれば、女性問題についてマスコミの追跡への用心も大切。共演者に対しては無茶なアクションをするスタだが、その方面への用心は怠りなく、恋人のウンソン(チャン・ヒジン)とは車の中で密会し、室内灯もつけずにただひたすらHに励むだけ。スタはそれで十分満足のようだが、女は不平不満を訴える。顔も見せられないようなHはもうイヤ、喫茶店で会うこともできない恋人関係もイヤと言い出し、「それが変わらないのなら、もう会わない」と宣言したからスタは困惑気味。「女はいくらでもいる」と思っているものの、会えなくなるとかえって話したくなるもの。撮影での悩みを抱えている時などは余計にそのことを思う。
そんなある日、2人の密会現場を盗み撮りしたビデオが送りつけられてきたから大変!スタのマネージャーであるイ室長(パク・スヨン)が脅迫者たちとの折衝にあたったが、金額をつりあげてくる脅迫者たちに対するスタのアイディアは、ホンモノのヤクザであるガンペを使うこと。そんなことをしたらかえって事態はヤバくなるのでは?また、スタのために一生懸命尽くしているように見えるイ室長の言動も、どこか怪しげだが・・・?
女に対する誠実性の無さがないスタに対し、ヤクザのガンペは女に対しては意外にもプラトニックぽいようだ。実はガンペは一目会った時から女優のカン・ミナにホレたようだが、ヤクザの自分が堅気の女に手を出してはダメだとわきまえているようだ。しかし、アクションにリアルさを求めるのなら、GOUKANだってリアルに、とばかりに、共演者ミナのGOUKANシーンではホントにおそったようだが・・・?
しかし、ミナが一人海の中へ入っていくシーンを撮影ではなく本気だと錯覚したガンペは、その救出のため猛然と海の中へ入って行ったから、せっかくの撮影はおじゃん。しかしこれによって俄然ミナのガンペに対する愛が深まったのは当然。スタとガンペは女性に対する姿勢も好対照。
ガンペのボスであるペク会長(ソン・ヨンテ)は今収監中の身で、裁判に向けて弁護士といろいろ打ち合わせ中。ガンペとの面会中にガラスに書いた碁盤上で囲碁対局というのは珍しい風景だ、雑談めいた会話の中でペク会長は情報を収集しているようである。今日の面会におけるペク会長のガンペに対する助言の言葉は「下の奴らをあまり信じるな」だが、はたしてその心は?
トップが収監されるとナンバー2が裏切り、組織の乗っ取りを狙うのはありがちな話、今回、それを狙っているのがパク社長(ハン・ギジュン)。ある日ペク会長の自宅に泥棒が入り、裁判での有罪を根拠づける証拠が盗まれたから大変。こりゃ一体誰の仕業?そりゃ、パク社長に決まっている。そこでペク会長がガンペに下した命令は「殺せ!」。ペク会長への忠誠を誓っているガンペが速やかにその命令を実行したのは当然。ところが、縛り上げて顔を覆い、カッコ良く「あの世への旅費を」と言ってパク社長のポケットに数枚のお札を入れて海に沈めようとした時、ガンペはなぜか「遠くへ行け。死人として生きろ」というスタの台詞を。一体何で?ヤクザと俳優の二足のわらじを履いているうち、いつの間にかガンペの人間性が変化してきたのか?
ところが海外に追放され、二度と現れないはずのこのパク社長が映画後半大きな役割を果たすことになる。
映画づくりの中心となるのは監督だが、資金、キャスティング、ロケ地の選択、照明、衣装、美術から大道具、小道具に至るまで映画づくりにはチームワークが何よりも大切。ボンが執念を燃やして監督しているこの映画はスタの相手役不在によって1度は挫折しかけたが、今は俳優業も板についてきたガンペの熱演のおかげ(?)で、撮影は絶好調。あとはクライマックスとなる、2人の対決シーンを残すのみ。
そんな状況下、ガンペがいきなりスタの相手役を降板すると言い始めたから大変。これは、ガンペがヤクザとして命を懸けてやらなければならない任務が急浮上してきたためだが、もちろんそんな事情を細かく説明するガンペではない。 ガンペのこんな態度にボン監督もスタもブチ切れたのは当然。しかしミナからの「途中で投げ出すのは良くないわ」などという常識的なお説教にガンペの決心が揺らぐはずもない。さあこれでは、せっかくの快心作も途中でお蔵入りになってしまうこと確実だ。深刻な事態となる。
キム・ギドク監督作品は90分と短いのが特徴だが、チャン・フン監督初作品は113分とそれに比べれば長い。ガンペとスタの違いも良く表現されている。テンポもあり、ストーリーが切り替えられていくから、時間が経つのはあっという間。明るいスタとどこか愁いのあるガンぺというキャラだが、意外に暗いと感じない。
本作のクライマックスは、干潟を舞台とした泥まみれになっての対決シーン。「主役は最初にいったん負けるが、最後には勝つ。映画のストーリーはそう決まっている」とスタは言っていたが、「ファイトシーンではガチンコ対決」と約束した以上、最後の対決での勝利者は監督にもわからないようだ。撮影現場でのアドリブは結構あるらしいが。俳優の強さによって勝者が決まるなどという、筋書きのない映画づくりってホントにあるのだろうか? 「ある事情」によって再び撮影現場に現れたガンペの挑発に乗る形でスタとのクライマックス対決が実現したが。これにはチャン・フン監督も大満足だったとか。ガンペの俳優業が次第に上達したのと同じように、スタも格闘技上達のためハードなトレーニングを積んだようだから、さて最終対決の勝者はガンペ?それともスタ?
映画製作は成功!打ち上げに行こうとスタがを誘うも断るガンぺ。車に乗って何処かへ立ち去る。気になったスタは彼の後を追いかける。追いついたスタにガンぺは「あんたがカメラになってこれからフィルムを回せ」と伝える。その後、映画でない衝撃的な映画のラストが待っている。(映画評論 映画は映画だから抜粋)
※チャン・フンという監督は、キム・ギドク監督の撮影現場で、映画作りを一から学んだ1975年生まれの若き監督だそうだ。そんな彼がキム・ギドクの原案に自ら脚色を加え、今回監督デビューを果たしたわけだが、キム・ギドク監督作品と同じような低予算映画でありながら韓国で140万人以上を動員する大ヒットとなり、韓国映画評論家協会賞では新人監督賞を受賞したらしい。
キム監督曰く、自分の作品で国内で観客動員を10万人あげることは難しいと話す。そんな路線は変わらず貫くようだが、一方でこのような多くのお客さんが動員出来る作品作りにも手をつけたいようだ。
(感想)韓国二大スターW共演ということだけでも、観客動員は出来るのでしょうが、やはりキム監督のモチベーション的なものは結構強く出ていた作品のように思います。最後の衝撃シーンはどことなくそんな感じがしました。うけ狙い考えて作ったのかな??
メディア | 映画 |
上映時間 | 113分 |
製作国 | 韓国 |
公開情報 | 劇場公開(ブロードメディア・スタジオ) |
初公開年月 | 2009/03/14 |
ジャンル | ドラマ |
映倫 | PG-12 |
http://www.eiga-eiga.jp/
この映画大好きなんです。
ソ・ジソブのあの目、男ながらゾクっとする格好良さです。韓国の俳優は目力がある人がホントおおいですよね。おばさまがたが夢中になるのも少し解る気がしました。^^;
キム・ギドク監督作の哲学性が好きな私にとっては、
キム・ギドク監督作に師事していた新人監督の『映画は映画だ』は
娯楽性が強くて馴染めなかったけど、
主人公の男性が女性に対し唐突に強引な行動をとっても
結果的には女性の心をしっかり得るところはキム・ギドク流を強く感じました。
男性にとってはこういう愛の求め方が理想(純愛)なのかもしれないですね。
見た事のあるかっこいいお兄ちゃんスターが登場し、結構の賑わいでしたが、映画としては面白かったですよ。
これでもか、の繰り返し感覚は、韓国映画テイストです。が日本にかって存在した、日活や東映スター全盛のノスタルジーを感じてしまいました。
白と黒のコントラスト感覚が映画全編にあって、よくできた作品です。
二大スター・・って言われてましたが、この二人、ほとんど知りませんでした。
でも、やっぱ映画館の中は、いつもと空気が違ってましたが。
ギドク先生が監督しちゃうと、もっとあっさり、空疎な感じがしちゃうんじゃないかなと思いますが、ねばっこい韓国風味で、おもしろかったです。
韓国の方々には、この監督の方があうんじゃないかなと。
受け狙いも、その方がノーマルかもです。
あたしは、とっても楽しませてもらいました。