平凡にして偉大なるすべての父と母へ――。
評価:+5点=75点
京都シネマにて鑑賞。
ジェット・リ―がアクションを封印して挑んだ話題作。ジェット・リ―はまさに父の姿でした。
父とハンディを持つ息子の物語。作品全体がとても柔らかいタッチで描かれています。
冒頭、21歳になったターフーと心中を試みるシーンから始まる。2人で海に飛び込むが、ターフーは足かせをほどいて水面へ上がっていく。実はシンチョンは自身が癌で余命わずかと知り、自分が逝った後の息子の生活を案じた上の行動だった。
ターフ―は自閉症で重度の知的障害を持っており、父シンチョンが亡くなった後、一人で生きて行くのは明らかに困難です。
実はその昔、私も知的障害者の施設で働いていました。多くの自閉症の人たちとも接してきました。今は以前ほどではありませんが、でも僅かながら日々支援しています。
関わった親御さんからも自分が亡くなった後が心配だと話されることもありました。受け入れ先の問題はかなり深刻です。受け入れ先がかなり少ないというのも現実だし。
中国の福祉事情はどうなのでしょうね。親亡き後の行き場はやはり厳しいのかしら。映画の中で父シンチョンが施設探しをしますが、なかなか困難そうでした。多分日本以上に大変なんでしょうね。
そういうことを考えると、シンチョンがターフ―に日常生活において最低限自分で出来ることを教えるというのは必要不可欠ですよね。
父の息子への深い愛情劇に心を打たれつつ、その背景にある現実の厳しい問題を突きつけられている感じでした。
ターフ―を演じたウェン・ジャン
1984年、西安生まれ。本作が5本目となる。この人の演技にびっくり!自閉症の特徴をとても上手く掴んでいた。あの手の動かし方がとても印象的で。。。。。本当にハンディあるのか?と思うくらい凄かったです。
何とこの作品で2010年上海国際映画祭メディア部門で主演男優賞をゲット。これは納得です。
女ピエロ・リンリンと仲良くなる。これはターフ―にとって恋?電話に出る方法を教えたりするリンリン。
水族館の巡業が終了したリンリンは、他の地にと去って行く。ターフ―は彼女を探して街に出て行く。父はいなくなったターフ―の行方を心配して探したら、マクドナルドの人形の横に座って眠っていた。ピエロだったリンリンに想いを馳せていたのかもしれない。
このシーンは何とも微笑ましいでした。感情表現を上手く出来ないターフ―だけど、彼女への思いがヒシヒシと伝わってきます。
あらすじ(goo映画より)
中国、チンタオ。妻に先立たれたワン・シンチョン(ジェット・リー)は、自閉症の息子ターフー(ウェン・ジャン)を男手ひとつで育てていた。シンチョンは自身が癌で余命わずかと知り、21歳になったターフーと心中を試みる。2人で海に飛び込むが、ターフーは足かせをほどいて水面へ上がっていく。向かいの家に暮らす女性チャイ(ジュー・ユアンユアン)はそんな事情を知らず、帰宅した2人を温かく迎える。シンチョンは水族館の仕事の合間に、自分の死後息子を預かってくれる施設を探す。同時に、ターフーに1人で生きていくために必要なことを、ひとつひとつ教えていく。一方チャイは、父子の留守中にシンチョンの主治医が訪ねてきたことから、シンチョンの病気や心中のことを知る。シンチョンに想いを寄せていたチャイは、彼の力になろうとする。かつて世話になった養護施設のリュウ先生のお陰で、ターフーを受け入れてくれる施設を確保する。シンチョンは最期の日まで、息子と施設で暮らすことにする。そのころターフーは、水族館に巡業で来ていたサーカス団の女ピエロ・リンリン(グイ・ルンメイ)と仲良くなっていた。シンチョンは死期が近づき、あることをターフーに教える決意をする。
最後の日まで息子とともに施設で暮らすことにし、自活するために必要なことを教えていく。水族館ではモップのかけかたを教え、館長に息子を雇って欲しいとお願いする。
そうそうもうひとつ印象的なのは、卵の料理やゆでたまご。父亡き後も彼は卵を自分でゆでていたね。
作品紹介(goo映画より)
自閉症の息子を持つ父親が、自分の余命がわずかだと知らされたとき、息子に何を残していけるのかを考え、行動する――。厳しい現実に直面し、自分を上手く表現する事ができない息子の将来を案じ、ひとりで生きていく術を教え込んでいく…。脚本に惚れ込んだアクションスター、ジェット・リーがノーギャラで出演しているのが話題の本作。自身初となる“アクションなし”で、息子を思う普通の父親を切々と演じている。脚本・監督は、『北京ヴァイオリン』の脚本で知られるシュエ・シャオルー、撮影はウォン・カーワイ作品などのクリストファー・ドイル、音楽に久石譲と、国際色豊かなスタッフが集結、父と子の絆を描くこの感動作を盛り上げている。
シュエ・シャオルーは本作で監督デビュー。この脚本は彼女の14年間の自閉症施設でのボランティア活動を元に生まれたそうです。
メディア | 映画 |
上映時間 | 98分 |
製作国 | 中国 |
公開情報 | 劇場公開(クレストインターナショナル) |
初公開年月 | 2011/07/09 |
ジャンル | ドラマ |
映倫 | G |
http://kaiyoutendo.com/
そういう施設で働かれてたことがあったのですか。。。それはいろいろと思うところがありますよね。
ターフーは戸惑いながらも父の思いを受け止めることができましたが、厳しい現実がいっぱいあるんでしょうねぇ。
いろんなことを考えさせられました。
めでたいコメント、ありがとうございます。
うれしいような、微妙なような・・・。
このシーンは本当に印象的でした。
リンリンへ=ピエロ(笑)
せめてマクドナルドの人形に愛をこめて
って感じでしょうか。
水族館で泳ぐターフ―の姿も良かったですね。
実は個々にあった施設選び出来るような
現状でないのが、今の日本です。
悲しい事ですが。それだけ施設の数が足りない
んです。ショートスティ(短期入所)という制度もあるんですが、これも希望してもなかなか大変なんです。
高齢者の施設の方が幾分緩やかかもしれませんが。それでも公的な施設は一施設で500人が待機ということも聞きますから。
ということで、グループホームや民間施設も
増えていますね。
それだけにターフ―の父のように、のんびり
構えていたらダメなんでしょうが。
意外にもこんなケースも多いはず。なかなか
子供を手放せないという方もおられますし。
どうにもならなくなって気づくというケースも
結構あると思います。
私も失敗(笑)すみませんでした!!
ハンディを抱える親御さんの気持ち
本当に分かります。
ジェット・リ―が演じることで、多くの
方が観てくれるのではないかと思いました。
バナーをクリックしてくれる人が多いと
良いですね。
どちらもお薦めです!
出来たら2本とも観て欲しいです。
全体的には青を基調とした色彩がこの映画のトーンと合っていて、これがとても良かったです。
中国の福祉事情はわからないので何とも言えないですけど、
知的障害者や自閉症と言っても障害の度合いや性格は千差万別なので
親が自分の子に合った施設を探すのは相当な労力を要するし、
そういう施設があったとしても受け入れてもらえるとは限らない。
近年は自立支援法の影響でグループホームに出す傾向だから
施設の受け皿はより一層狭くなっています。
だからこそ、親は子供が幼い時から必死になって子供の適性に合う施設を探すものなので
この作品の父親のように子供が大人になってから親が余命わずかになってから
焦って探しているようでは遅いんですよね・・・。
なんか、この作品の父親のやっていることは
切羽詰まってからのやっつけ仕事みたいな気がしてしまって・・・。
それを親子愛だと美化して演出してもなんかピンとこなかったです・・・。
所詮、映画とは言え「現実はもっと厳しいぞ!」と言いたくなりますよ・・・。
面白そうですね。
次はこれにしようか「猿」にしようか迷うところです…
今もこの問題を抱えていらっしゃる名もなき沢山の方々の
問題を、気負うことなく
ただただ己を捨て、子を案じ、愛しむ、、、
ジェット・リーがとっても良かったです
KLYさんのところでも、mezzotintさんのところにも
バナーをみつけてとっても嬉しいです~
そして期待通りに素晴らしい作品だったのがまた嬉しかったです。
父親の無償の愛情、それはしっかりと大福に伝わっていましたよね。だから哀しいけれど最後は希望が持てました。
ジェット・リーの新たな一面を見せられた思いです。