彼が最後に呟いた言葉は、”アラスカの罠にはまった”でした・・・・・。
9月30日、この日は、「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」とこの作品を鑑賞しました。東宝シネマズ二条で観た「イントゥ・ザ・ワイルド」、俳優ショーン・ペンが監督した2001年の「プレッジ」以来実に6年ぶりとなる新作です。
原作はジャーナリストで登山家のジョン・クラカワーが書いたノンフィクション「荒野へ」。1992年の夏、アメリカ最北部アラスカ州の荒野でクリストファー・マッカンドレスという若者の死体が発見された。この出来事はマスコミに取り上げられ、全米の多くの人々の関心を引いた。何故なら彼の死があまりにも謎めいていたからだった。東海岸の裕福な家庭で育ち、優秀な成績で大学を卒業。そんな人生のエリートコースを約束されていた若者が全てを捨てて旅立ち、2年間のさすらいの果てにアラスカで早すぎる最期を迎えたのである。この誰もが「なぜ?」と疑問を抱く大いなる謎の解明に挑んだのが、ジョン・クラカワーである。綿密な追跡取材を基に発表したこの作品は一躍ベストセラーとなり、センセーショナルな反響を呼び起こした。
その作品に激しく揺さぶられた読者のひとりがショーン・ペンだった。何とか映画化したいという情熱で、10年近い歳月を費やし、ついに映画化権獲得を得てこの「イントゥ・ザ・ワイルド」を完成させた
主役に抜擢されたのは、エミール・ハーシュという若い俳優さん。最近ではウォシャウスキー兄弟監督の“スピードレーサー”(08)に主演しているそうです。(この映画は未見です)ちょっとデカプリオ似ているような気もします。
映画はアラスカでのクリスの姿を映しながら、それと平行して卒業したシーン、両親、妹との絡み、旅の途中での出会いが映し出されます。彼は裕福な家庭に育ち、両親は彼に卒業祝いとして新車を与えようとしますが、「車なんか欲しくない。何も欲しくない!」とそっけなく答えます。まもなく所持金の2万4000ドルを慈善団体に寄付して、両親や妹カーリンに何も告げることなく、中古の車に乗り、行方をくらました。これがクリスの壮大なる旅の始まりとなる。途中アリゾナ州のミード湖で鉄砲水に見舞われたクリスは惜しげもなく、車を捨て、そして名前もアレクサンダー・スーパートランプという別名を名乗ることに。彼は全てを捨てたのは、物資社会からの脱出して新たに生まれ変わる。ルールにも束縛されない自由を得るためだった。
旅の途中、様々な人との出逢い。
ヒッピーのカップル、レイニーとジャンのトレイラーに乗せてもらう。複雑な過去を引きずるジャンはクリスに音信不通の息子の面影を重ね合わせる。
サウスダコタ州では大農場を営むウェインの元で働く。陽気なウェインをクリスは兄のように慕う。アラスカに行くんだと荒野のど真ん中で生きるとまくし立てるクリスの無鉄砲さに諌めようとするが。ある違法行為でウェインは逮捕される。働く場所を失ったクリスは、再びさすらいの旅へ・・・・。
コロラド州でカヤックに乗り、スリルな急流くだりを体験。メキシコへの国境を越えたのち、再びカルフォルニアへ。1991年の暮れ、アウトサイダーの集まる場所スラブ・シティのコミュニテイでレイニーとジャンに再会新たに16歳の少女、トレイシーとの出逢いが。彼女はクリスにしかしクリスには、恋よりも何よりも大切な目的があった。
1992年1月、クリスはカルフォルニアのソルトン・シティでロン・フランツという老人と出会う。ロンはクリスが仕事もせず、野宿をしながら、旅をすることに不思議だと感じていた。しかし何故か同時に親しみを感じる。互いの身の上話で打ち解け、二人で岩肌の山を登るハイキングに興じ、数週間のうちに世代を超えた友情を育んでいく。やがて別れの日がロンは再び孤独な日々に戻ることが恐ろしくなる。“養子にしたい。私は君の祖父になりたい”と切実に申し出るが、クリスはアラスカ行きを止めることはできなかった。
いよいよクリスとの別れの日がやって来た。ロンの思いは・・・・。
クリスの旅は再び始まる。
1992年5月、ついにクリスは旅の最終目的地点アラスカの山岳地帯に到着。わずかな食糧と狩猟用のライフルを背負い、雪の降り積もった 険しい大地を踏みしめながら、山を越え、川を渡り、ひたすら奥地へと進む。やがてクリスは雨風にさらされ、ぽつんと放置されたバスを発見する。それは2年間に渡る旅の目的を成し遂げるには格好の“住家”だった。
静寂と野生動物によって支配されたその広大な空間はまさにクリスが夢見ていた絶対的な孤独の荒野だった。見るもの、触れるものすべてが新鮮で驚きの大自然には、クリスの想像が及ばない“罠”が潜んでいた。
ここからが凄いです。彼は様々なアクシデントに遭遇します。かなりリアルに映し出されています。自然の驚異に何処まで彼は立ち向かえるのでしょうか。
人間も動物も、食べないと生きてはいけません。野性動物は、やはり強いです。人間はやはりこういう環境には慣れていません。わずかな食糧で、ここへ来た彼にとって、一番の問題は食糧が底をついたことかもしれません。ライフルを持って動物を撃ち、調理して食べるのです。でもそういつも獲物は現れない。次第に米もなくなり、どうしても獲物を捕獲しないとね。印象深いシーンは大きなへら鹿を捕獲し、解体するところ、ロンの忠告だった?か忘れましたが、手早くしないとハエがたかり、蛆虫が沸く。そういう状態になると、駄目だと。まさにそのことが現実に起こりました。やむなく、その鹿の遺体は野鳥の餌に・・・・。
クリスの目の前に立ちはだかった自然の驚異。それはその後も起こります。力尽きた彼はその場所から撤退することに。来た道を戻ろうとするのですが、川の増水状態を目の前にします。渡ろうとしますが、濁流に呑み込まれそうに・・・・。危うく溺れるところでしたが、助かります。結局バスへ戻ることに。
本は孤独を癒す唯一のものだった。日記も書き続けます
空腹状態は極限にまで達します。野生の食用になる植物を探し始めます。を読んで食べられる野草の採集を続けます。しかしここにも落とし穴が・・・・。
文献の見間違えが彼の体に異変を起すことに毒性のあるものを食べてしまう。それは飢餓状態を起し、意識にも障害が起こると書き記されていたのだ。
痩せ衰え、歩行も困難になるクリスの最期は壮絶なものだった。
役作りのために18kgまで減量したエミール・ハーシュの凄い演技は本当のクリスかと思うくらいの迫真さを感じる。
ところで一方彼の家族は・・・・・。
こんな悲しい結末を向かえるクリスの状況はまったく知ることもなく、彼の実家では、両親、父親ウォルト(ウィリアム・ハート)と母親ビリー(マーシャ・ゲイ・ハーデン)が警察や私立探偵にわが子の捜索を依頼し、妹カーリン(ジェナ・マローン)は彼の胸のうちに思いを馳せていた。マッカンドレス家には複雑な事情があり、繊細なクリスの気持ちを理解していたカーリンは彼が姿を消した理由がわかるような気がした。クリスが自分を探さないで欲しいと願っていることも。
親の心、子知らずという言葉がありますが、この場合は子の心、親知らずなんでしょうか。彼にとっての家族の存在ってなんだったのでしょう?色々疑問は残ります。
本当の自由には、必ずリスクはつきものだと思います。今回の結末は彼がそのことを頭においていたかどうか?いや餓死寸前で多分気づいたのだと思います。彼が漠然と、アラスカという大地に憧れ、目指した。そのときはきっとそこまでの自然の驚異には気づいてなかったのだと思います。あまりにも無防備だったのは事実だし、自然の厳しさに打ち勝てる状況ではないですよね。この生き方がいいか?どうか?はそれぞれの価値観だろうし。受け入れられる人もあれば、否定する人もあるでしょう。どんな生き方を選んだとしても、きっとリスクはつくのだと肝に命じる必要があると思います。きっと生きて戻るつもりだっただろうに、悲しい結末で若い生涯を終えたことには何ともいえません。
ラストは本当のクリスの写真が映しだされます。このショットと同じです。
監督・製作・脚本: | ショーン・ペン |
原作: | ジョン・クラカワー | |
『荒野へ』(集英社刊) |
キャスト
キャサリン・キーナー | ジャン・バレス | |
ヴィンス・ヴォーン | ウェイン・ウェスターバーグ | |
クリステン・スチュワート | トレイシー | |
ハル・ホルブルック | ロン・フランツ |
オフィシャル・サイト
http://www.intothewild.com/ (英語)
明確な目的があれば生きて返れたのかな?
と考えてしまいます。
緩慢な自殺か?自暴自棄な逃避行か?
答は簡単には出せないようです
今原作を読んでいます。
gooブログとの相性が悪いみたいでTB貼れないのでコメントで失礼しますー。
エミール・ハーシュの演技はすさまじいものがありますよねー。最後のシーンが忘れられません。
家族を顧みずに旅を続けた彼の気持ちは、家庭環境が複雑なので仕方ないのかなーという気も。
もうちょっと年齢を重ねても生きていたら、許せる時がきたのかもしれないのにねーと思わされました。
こっちの作品にもTBさせて頂きます。
個人的にはこの映画わざわざ行かない系でした。
が、鑑賞して話の深さ、映像の美しさに感銘しました。基本、ハリウッド大作は好みですが、今年度の洋画で感銘を受けた五本指にははいりそうです。
その辺の見る人の釈然としない気持ちもちゃんと包括して映画にしてるショーン・ペンは、さすがだなあと。
やっぱこの人も天才に入れたいです。
そうそう、ちょっとワイルドさを引いたディカプリオに見えました、エミール君。