この曲にまつわる裏話はあまりにも有名でしょう。
エリック・クラプトンが、親友ジョージ・ハリスンの妻パティに恋をしてしまい、その苦しい胸の内をさらけ出したのが「いとしのレイラ」です。
もともとは、インド文化に傾倒して、自分を省みてくれなくなったジョージに嫉妬させようと、パティの方からエリックに近づいていったようです。最初はいろいろと相談にのっていたエリックですが、そのうち自分が本気で親友の妻であるパティに恋をしてしまった、というわけです。
パティ・ボイド
この一件でジョージとエリックは仲違いしたかというと、そうでもなさそうです。ドラッグに溺れるエリックを再生させようと、ジョージはこの後もいろいろ力を貸していたみたいですし、だいぶ後のことになりますが、エリックが息子を失って落ち込んでいた時には、エリックを自分のツアー・バンドの一員に加え、立ち直るきっかけを作ってやっています。
もしかして、その時にはすでにジョージは、パティに対する関心をすっかり失っていたのかもしれません。またはインドの文化・宗教に妻以上の価値を見出していたのかもしれません。だからジョージは、パティが誰と付き合おうが全く意に介さなかったのでしょうか。あるいは、エリックとジョージの絆はそんなことでは揺るがないほど固いものだったのでしょうか。
しかし、親友の妻に横恋慕したその気持ちを曲にして、世間に発表しようとする気持ちに共感できない人も多いと思います。きっと作家がスキャンダラスな私小説を書くのと同じで、それがミュージシャンの業というものなのでしょう。
左からエリック・クラプトン、ボビー・ウィットロック、ジム・ゴードン、カール・レイドル
曲は、あまりにも有名なギター・リフで始まります。ヴォーカルが入る直前に転調するのがとても印象的。思いのたけを吐き出すかのようなエリックのヴォーカルは悲痛でさえあります。途中からのデュアン・オールマンによる、すすり泣くようなスライド・ギターのソロは、まるで聴く者の胸をかきむしるかのようです。
曲の後半を彩るのは、ボビー・ウィットロックによる、温かみのあるピアノです。嵐の過ぎ去った後の穏やかさのようなピアノです。そのピアノをバックに、エリックとデュアンがソウルフルなツイン・リード・ギターを聴かせてくれます。
エリック・クラプトン デュアン・オールマン
さて、「レイラ」の後半のピアノ部分は、実はリタ・クーリッジのペンによるものだった、という話があります。ある音楽誌に掲載されたインタビューによると、リタにも「ドミノスに参加しないか」という話があったため、アルバム用の曲の候補として、ドミノスの面々に「Time」という曲を聴かせました。しかし、ドミノス加入の話は立ち消えとなりました。その後、突然ラジオから自分の作った「Time」が「レイラ」の一部となって流れてきたので、リタはとても驚いたということです。もちろんリタは作曲者としてクレジットされていないし、印税なども手にしてはいません。
「いとしのレイラ」のシングル・ヴァージョンは後半部がカットされており、1970年に発表した時はそれほど高い評価を得られたわけではありませんでした。のちロング・ヴァージョンが発表された時に、全米10位のヒットを記録しています。
近年では、三菱自動車のCMに使われていたので、耳馴染みのある人も多いと思います。
「レイラ」は、今でもエリックのライヴでは、ハイライト曲としてひんぱんに演奏されているようです。
デレク&ザ・ドミノスのファースト・アルバム『いとしのレイラ』(1970年)
[歌 詞]
[大 意]
孤独を感じた時あなたは何をしてるんだろう 一人ぼっちでいるんだろう?
逃げ回り長いこと隠れて過ごしてる ただ愚かなプライドのためだけに
※レイラ あなたの前に膝まづく
レイラ お願いだ 愛しい人よ
レイラ 愛しい人よ あなたは私の心の苦しみをやわらげてはくれない※
あなたの夫が失望させた時 私はあなたを慰めようとした
愚か者のように恋に落ち 私の全世界はひっくり返ってしまった
※~※Repeat
私の気が狂ってしまう前に この状況を何とかしてくれ
あきらめてるだなんて言わないで そして虚ろに響く愛の言葉を私にくれ
※~※Repeat
Layla(Derek & The Dominos : original)
Layla(Eric Clapton : Live Aid 1985)
■いとしのレイラ/Layla
■歌・演奏
デレク&ザ・ドミノス/Derek & the Dominos
■シングル・リリース
1971年
■作詞・作曲
エリック・クラプトン/Eric Clapton、ジム・ゴードン/Jim Gordon
■プロデュース
トム・ダウド/Tom Dowd、デレク&ザ・ドミノス/Derek & the Dominos
■デレク&ザ・ドミノス(Derek & the Dominos)
エリック・クラプトン/Eric Clapton (guitar,vocal)
カール・レイドル/Carl Radle (bass)
ジム・ゴードン/Jim Gordon (drums)
ボビー・ウィットロック/Bobby Whitlock (piano,keyboard,guitar,vocal)
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デュアン・オールマン(Duane Allmas : guitar)
■チャート最高位
1971年週間チャート アメリカ(ビルボード)51位、日本8位
1972年週間チャート アメリカ(ビルボード)10位、イギリス7位
1971年年間チャート 日本75位
1972年年間チャート アメリカ(ビルボード)60位