今日はどういうわけか、「コジカナツル3」、それもその中の「『マイ・バック・ペイジズ』を聴きたい病」にかかってるらしく、このアルバム、この曲ばっかり聴いてます。
それで、今日は以前に書いた記事をアレンジして再録することにしました。
「手抜き」とか言わないでね(^^;)。
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今日は「コジカナツル」のサード・アルバム、聴きまくりましたよ。
いや~、「期待を裏切らない」と言おうか、「期待にたがわず」と言おうか、とにかく相変わらずのヤンチャな大人が繰り広げる熱くてヤンチャな演奏に、大マンゾクです!
今回は、ゲストととして多田誠司(サックス)がフィーチャーされています。
また、2曲目の「カンタロープ・アイランド」のみ、TOKU(フリューゲルホルン)が参加しています。
彼らの奥行きの深さ、スケールの大きさに、改めて驚嘆します。
ピアノの小島良喜のプレイ、まるで尽きることのなく湧き出る泉のようですし、鶴谷智生のドラミングは、打楽器の範疇には収まりきれないような色鮮やかなものです。それを金澤英明が深みのある安定感バツグンのベースで包み込んでいます。
ゲストは多田誠司、TOKU。
このふたり、懐の深いコジカナツルの三人に支えられ、安心して自由奔放にブロウしているのがまた楽しい。
「コジカナツル・ワールド」の面白さ楽しさ、もうぼくはほとんどトリコになっているのかも。
ジャンルの垣根なんか超越した、素晴らしいユニットです。
このアルバムの9曲目に収められた「マイ・バック・ペイジズ」の演奏の凄まじいこと!
無私無欲、己を燃やし尽くすことだけに力を注いだ、神がかったような素晴らしい演奏です。
この曲に浸っていると、きれいなものや胸を打たれるものを見たり聴いたりした時に、「素直にそれに感動できる自分」になれる気がするんです。
「マイ・バック・ペイジズ」は、もともとはボブ・ディランの作品で、彼の4枚目のアルバム、「アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン」(1964年)に収録されています。
「あの時のぼくはずっと年寄りだった。今のぼくははあの時よりずっと若い」と歌っている曲です。とても抽象的かつ難解な歌詞で、自己批判的なものも含まれているようです。
ディランは、アコースティック・ギターだけをバックに、自分をさらけ出し、訴えかけるように歌っています。
ボブ・ディラン キース・ジャレット
「アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン」 「サムホエア・ビフォー」
原曲はトラッド・フォーク風の3拍子ですが、バーズが8ビートのフォーク・ロックとしてカヴァーしています。これを多少リハモナイズ(原曲のコード進行の再編)し、ゴスペル・ロック調にアレンジして演奏したのが、キース・ジャレットです。アルバム「サムホエア・ビフォー」(1968年)の1曲目に収められています。
コジカナツルの「マイ・バック・ペイジズ」は、このキース・ジャレット・ヴァージョンを踏襲しているようですが、キースが内省的に、ロマンティックに演奏しているのに対し、コジカナツルは、よりブルージーに、よりロック色を強めていて、外に向けて膨大な力を発しているかのような、実にエネルギッシュな演奏を展開しています。
「コジカナツル3」のライナーによると、この曲は、アルバム・レコーディング2日目の最後に録音されたそうです。それまでの録音作業でかなり疲れていた状態での演奏だったようですが、そんなことを微塵も感じさせない、異様な熱気をはらんでいます。三人それぞれが、自分の持てるものをとにかく楽器に注ぎ込むことだけに集中しているかのような、凄まじい演奏です。ほとんど無我の境地に近いものがあるんじゃないかな。そんな気さえするのです。
イントロはベースの金澤英明によるルバートでのソロです。最初の一音から、ふくよかで、深みのある音色に心を揺さぶられます。テーマをモチーフにしたこのソロは、金澤氏の心象風景を見ているようでもあります。すでにもうこのへんで泣けそうになるもんなあ。素晴らしいです、金澤氏。
インテンポになると、引き続きベースがテーマのメロディーを弾きます。そっと寄り添うように小島良喜のピアノがバックで鳴っている。そのままピアノがテーマを引き継ぐと、それを鶴谷智生のドラムが力強く盛り立てる。
左から金澤英明、鶴谷智生、小島良喜 (写真提供『ひげ』さん)
小島氏のピアノ・ソロが、これまた素晴らしい。ブルージーで、パワフルで、しかもとってもメロディック。そのうえ、えも言われぬ優しさにあふれている。とにかく「愛」が一杯に詰まっているような、そんなソロなんです。
バックで支えるベースとドラムは、よりグルーヴィーに、より激しさを増してゆきます。揺るがぬビートで低音をしっかりと支えながらサウンド全体を包み込んでいる金澤氏のベース、燃え盛っている内面があふれ出して止まらないかのような鶴谷氏のドラム。
この三人が一体となって頂点を目指し、突き進んで行くのです。興奮しないワケがない。やんちゃだけれど骨っぽい、そんな三者の息の合った様子は爽快感にあふれ、感動的でさえあります。
「魂がこもっている」、というのは、こんな演奏のことを言うのでしょう。
「名演」と言われているものは数多くありますが、近年では、コジカナツルのこの演奏も文句なしの名演だと言えるのではないでしょうか。
今日のぼくの心は、この演奏を聴きたがってやまないのです。
◆マイ・バック・ペイジズ/My Back Pages
■発表
1964年
■作詞・作曲
ボブ・ディラン/Bob Dylan
■演奏
[コジカナツル]
小島良喜(piano)
金澤英明(bass)
鶴谷智生 (drums)
■収録アルバム
コジカナツル3 (2005年)
■プロデュース
コジカナツル