ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

シアー・ハート・アタック (Sheer Heart Attack)

2007年06月11日 | 名盤

 
♪自分的名盤名曲167


 これは、ぼくが初めて買ったクイーンのアルバムです。「ハートに直撃」とでも訳したらいいのでしょうか。クイーンの3枚目のアルバムです。
 中学時代でした。たまたま姉が「キラー・クイーン」を聴いていたことと、友人のY君が「キラー・クイーン」にハマっていたことが重なったので、クイーンというバンドに興味を持ったのです。





 ちょうどぼくの住む町の図書館内に、当時日本でもまだ珍しかった音楽図書館がありました。借りることはできませんでしたが、リクエストには応じてくれるのです。主としてクラシックのレコードを置いてありましたが、わずかながらポピュラーのレコードも置いてありました。その中に、この「シアー・ハート・アタック」があったんです。
 リクエストできるのはLPレコードの片面だけだったので、A面、即ち今のCDで言うところの1~6曲目ばかりをかけて貰っていました。A面にはキラー・クイーンが入っていたからです。


  
 
 
 最初に耳に飛び込んでくるのは遊園地の喧騒を思わせるサウンド・エフェクトです。それに引き続いて入ってくるのはブライアン・メイのハードなギター、そしてファルセットと地声を効果的に使い分けるフレディ・マーキュリーのエキゾチックな歌声です。この1曲目の「ブライトン・ロック」はブライアンのギターを大々的にフィーチュアしたハード・ロックです。

 
 そして2曲目がお目当ての「キラー・クイーン」です。フィンガー・クラップで始まるこの曲は、日本でのクイーン人気を決定的なものにしました。日本ばかりでなく、彼らの初めての世界的なヒット曲と言っていいでしょう。いわばヨーロッパ的デカダンスとビートルズの持つポップ性が結びついた曲で、それまでハード・ロック・バンドと見られていたクイーンのイメージを変えた曲でもあります。
 この冒頭の2曲がとても気に入ったぼくは、レコードが買えるまではY君に録音してもらったカセット・テープを何度も繰り返して聴いていました。


  
     

 クイーンは、本国イギリスよりも日本でいち早く認められました。そして、レッド・ツェッペリンやイエスなどの後を継ぐブリティッシュ・ロックの正統派バンドと見られていました。しかし、今こうして聴き返してみると、クイーンはすでにこの頃には「ハード・ロック」というカテゴリーにひと括りすることのできない幅広い音楽性を持っていたことが分かります。


 とくにB面(CDでは7~13曲目)はメドレー風に展開されていて、さまざまに曲調が変わってゆくのが面白いのです。壮麗なコーラスで始まるドラマチックな「神々の業」に始まり、スラッシュ・メタルのはしりのような「ストーン・コールド・クレイジー」(のちにメタリカがカヴァーして話題になった)、ピアノとコーラスが美しい小曲「ディア・フレンズ」、ヴォードヴィル調の楽しい曲「リロイ・ブラウン」などが続き、最後はフレディ作の朗々たる「神々の業(リヴィジティッド)」で幕を閉じます。

 
 クイーンの音楽の美しさは、綿密に声を重ねていった分厚い鉄壁のコーラス・ワークと、華麗なギター・オーケストレイションにあると思います。
 またメンバー全員が作曲できるため、ドラマティックなフレディ、ハードなブライアンとロジャー、ポップなジョンというふうに、作風がよりいっそう多様化していると言えるでしょう。
 ハード・ロックの枠から抜け出したクイーンは、次作「オペラ座の夜」でひとつの頂点に立つことになります。そういった意味では、このアルバムはクイーンのターニング・ポイントとなった重要な作品だと思います。



 
 
シアー・ハート・アタック (Sheer Heart Attack)
  ■歌・演奏
    クイーン/Queen
  ■リリース      
    イギリス1974年11月8日、アメリカ1974年11月12日
  ■プロデュース
    ロイ・トーマス・ベーカー & クイーン/Roy Thomas Baker & Queen
  ■収録曲
   Side-A
    ①ブライトン・ロック/Brighton Rock (May)
    ②キラー・クイーン/Killer Queen (Mercury)  ☆全米12位、全英2位
    ③テニメント・ファンスター/Tenement Funster (Taylor)
    ④フリック・オブ・ザ・リスト/Flick Of The Wrist (Mercury)
    ⑤谷間のゆり/Lily Of The Valley (Mercury)
    ⑥誘惑のロックンロール/Now I'm Here (May)  ☆全英11位
   Side-B
    ①神々の業/In The Lap Of The Gods… (Mercury)
    ②ストーン・コールド・クレイジー/Stone Cold Crazy (May,Mercury,Taylor & Deacon)
    ③ディア・フレンズ/Dear Friends (May)
    ④ミスファイアー/Misfire (Deacon)
    ⑤リロイ・ブラウン/Bring Back That Leroy Brown (Mercury)
    ⑥シー・メイクス・ミー/She Makes Me(Stormtrooper In Stilettoes) (May)
    ⑦神々の業/In The Lap Of The Gods…Revisited (Mercury)
    ☆=シングル・カット
  ■録音メンバー
   【Queen】
    フレディ・マーキュリー(Freddie Mercury/vocals, piano)
    ブライアン・メイ(Brian May/guitar, piano, vocal, ukelele-banjo)
    ジョン・ディーコン(John Deacon/electric-bass, double-bass, acoustic-guitar)
    ロジャー・テイラー(Roger Taylor/drums, percussion, vocal)
  ■チャート最高位   
    1975年週間チャート     アメリカ(ビルボード)12位、イギリス2位、日本(オリコン)23位
    1975年年間チャート     アメリカ(ビルボード)38位、イギリス39位、日本(オリコン)32位
 
 
 

コメント (4)
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