深夜にはどうしてもジャズが聴きたくなってしまう。
周りの静けさと、アコースティックな楽器の響きが自然に溶け合っている気がして、気持ちがとても安らぐのだ。
そして、ジャズについて文章を書くのも、気分的にしっくりくる気がする。
そういうわけで、今夜もピアノ・トリオの演奏を聴いている。
金澤英明氏のリーダー作、「ハッピー・トーク」だ。
この拙いブログの中で、金澤氏の参加する「コジカナツル」のCDを取り上げているが、有難くもそこを訪ねてくれる月子さん、moonさんのお二方が、その記事を盛り上げて下さっている。お二人の、心で音楽を楽しんでいる様子に刺激されて、ぼくはこの「ハッピー・トーク」をCD棚から取り出して来たのだ。
これは金澤氏が、ジャズ・ピアノの重鎮、ハンク・ジョーンズ氏、日野元彦氏の愛弟子、力武誠氏と組んだ、珠玉の作品である。
ジョーンズ氏のピアノ、とにかく素晴らしい。お酒の飲めないぼくではあるが、『ホロ酔い加減』というのはきっとこんな感じなんだろう、と思えるような演奏だ。スウィング感といい、柔らかく転がるようなフレーズといい、心が安らぐような音色といい、どこを取っても気持ち良い。
そして、ジョーンズ氏のピアノをリラックスさせているのが、金澤氏のベースであるようにも聴こえるのだ。
太くて重量感がたっぷりな金澤氏のベースの音色を聴いていると、ジョーンズ氏でなくとも自然に体が揺さぶられるに違いない、と思う。こんなベースに支えて貰ったならば、どんなピアニストだって笑顔になるだろう。
4ビートでは力強いグルーヴでトリオをぐいぐいと引っ張り、バラードでは温かみのあるフレーズでサウンドを包み込んでいる。
ベーシストのリーダー作は、そのベーシストの「音楽」が感じられるなら、ベース・ソロがなくとも成立すると思う。
この作品は、「金澤氏の音楽観が表れている」という点で、見事なベーシストのリーダー・アルバムだと思う。
このアルバムが録音されたのは1999年10月だが、その年5月に金澤氏とも深いつながりのある日野元彦(drums)氏が亡くなっている。
元彦氏と、元彦氏の実兄である日野皓正(trumpet)氏の曲が1曲ずつ収められていることや、元彦氏の愛弟子・力武誠氏がドラマーに起用されていることなど、きっとこのアルバムは元彦氏へのトリビュート的性格を持っているのだと思う。
このアルバムが録音される数ヶ月前、金澤氏にお目にかかる機会があった。その時に「今度はハンク(ジョーンズ)のピアノで録音するんだ」と教えて貰ったのだが、その口ぶりはとても楽しみにしている様子がありありとわかるものだった。その表情と口調だけで、ぼくは「必ずそのCDを買おう」と決めたのだ。
このアルバムは、その時の金澤氏の「プレイするのが楽しみで仕方がない」という表情そのものが詰まっているような気がしてならない。
◆Happy Talk
■演奏
金澤英明 with ハンク・ジョーンズ
■アルバム・リリース
2000年1月28日
■録音
1999年10月31日 キング・レコード#2スタジオ(東京)
■プロデュース
中尾洋一
■レコーディング・エンジニア
辻裕行
■収録曲
① ハッピー・トーク/Happy Talk (Richard Rodgers)
② ホワッツ・ニュー/What's New (Bob Haggart)
③ リル・ダーリン/Lil' Darlin (Neal Hefti)
④ カム・サンデイ/Come Sunday (Duke Ellington)
⑤ イッツ・ゼア/It's There (日野元彦)
⑥ ララバイ/Lullaby (Hank Jones)
⑦ ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ/You Don't Know What Love Is (Gene DePaul, Don Raye)
⑧ オード・トゥ・ワークマン(日野元彦氏との想い出に捧ぐ)/Ode To Workman (日野皓正)
⑨ 夢はひそかに (ベース・ソロ)/A Dream Is A Wish Your Heart Makes (M. David, A.Hoffman, J.Livingston)
⑩ 夢はひそかに (トリオ・ヴァージョン)
⑪ ハッピー・トーク (リプリーズ)
■録音メンバー
金澤英明 (bass)
ハンク・ジョーンズ/Hank Jones (piano)①~⑦、⑩⑪
力武誠 (drums)①②③⑤⑧⑩⑪
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私もまだKKTのライブの興奮が覚めずに、サードアルバムを聴きながらブログを拝見させていただいてました。
1時42分にMINAGI さんからのコメントをいただいて、私がニタニタと読んでいる時に「Happy Talk」を聴いてらしたんですね
同時刻に金澤氏にお互い酔いしれていたとは・・
「Happy Talk」はやはり素晴らしいアルバムのようですね。
私がこのアルバムの存在を知った時には、すでに購入不可能で、私にとっては幻のアルバムです。
MINAGIさんは「Bass Perspective」も聴いてるのでしょ?
Bassに興味を持つようになり、神様と言われたジャコパのアルバムも聴いてはみたものの、なにかしっくりこず、、{hiyo_shock2/}
私はやはり、ウッドの響きが好きだと強く思いました。
そして、Bassをまるで女性を抱くかのように愛おしく弾く金澤氏の
優しく力強い姿が忘れられません
できるなら、MINAGIさんの耳になりたい
「Happy Talk」を聴いてる耳に・・・
金澤氏の声を聞いた耳に・・・なりたいです
もう恋する乙女と言う年齢ではないけれど、金澤氏のBassに恋してるみたい お~恥ずかしい
そうなんですよ、ちょうどその時刻に「Happy Talk」、聴いて浸ってました。
独特の木の響き、温かみのある音色、ウッド・ベースならでは、ですよね。
>女性を抱くかのように
そういえば、バイオリン系の楽器の形って、女性をかたどったものだという説があるそうです。
金澤氏の音楽にホレこんでいる月子さんの気持ち、金澤氏のCDを聴きたくてたまらない月子さんの気持ち、うーん、なんとかしてあげたいな~