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「ロック・アラウンド・ザ・クロック」(1954年)をロック・ミュージックの歴史の始まりとするなら、ロックの誕生からすでに60年以上経っていることになります。
その中でも、1960年代後半から1970年代半ばくらいまでがより創造的でより革新的な空気に満ちていた時期だったのではないでしょうか。この頃がぼくの中でのロック界が燦然と煌めいていた黄金期なのです。
多くのミュージシャンがさまざまな方向性やスタイルを模索、確立していったその当時、「ニュー・ロック」「アート・ロック」と呼ばれていたサブ・ジャンルがありました。代表的なミュージシャンとして、クリーム、ジミ・ヘンドリックス、ドアーズ、ディープ・パープル、ナイス、フランク・ザッパ、そしてヴァニラ・ファッジなどの名が挙げられます。
1960年代後半当時のディープ・パープルとヴァニラ・ファッジは、曲におけるオルガンの比重が大きいこと、積極的にクラシカルな要素も取り入れていること、やや陰のあるサウンドを持っていること、など共通点も多いです。そのため、アート・ロックの旗手と見なされている部分もあったようです。
ヴァニラ・ファッジは、1967年にファースト・アルバム「ヴァニラ・ファッジ」とデビュー・シングル「ユー・キープ・ミー・ハンギン・オン」をともに全米6位に送り込み、順風満帆なスタートを切りました。
とくに豪快で重量感のあるティム・ボガート(bass)とカーマイン・アピス(drums)のリズム・セクションは一躍注目を集めるようになりました。
アート・ロックの旗手として評判を高めていったヴァニラ・ファッジが翌1968年に第4弾シングルとしてリリースしたのが「ショットガン」です。
「ショットガン」は、ジュニア・ウォーカー&オール・スターズが1965年に全米(ビルボード)3位に送り込んだ大ヒット曲です。
「ユー・キープ・ミー・ハンギン・オン」はシュープリームスのカヴァーですし、ヴァニラ・ファッジはR&Bからも多くの影響を受けていたのかもしれませんね。
イントロから重量感たっぷりのドラムが炸裂します。
オルガンとギターがサイケデリックで緊迫した空気を醸し出しています。
リード・ヴォーカルはオルガンのマーク・スタイン。ソウルフルな声質が曲によくマッチしています。
ヴィンス・マーテル(ギター)とマーク・スタイン(オルガン)のソロが、ヘヴィーでやや陰鬱な曲調を高めてゆきます。
そしてカーマイン・アピスのソロ。
ずっしりしたグルーヴ、独特の音色、ワイルドで血がたぎるようなフレーズ、どこを取ってもカーマインそのものの豪快なドラミングです。
この当時としては、存在感の大きさではジョン・ボーナム(レッド・ツェッペリン)と双璧をなしていたのではないでしょうか。
続くティム・ボガートのウェットでソウルフルなソロのシブいこと。
エンディング前のコーラス・ワークは、「アート・ロックたるヴァニラ・ファッジの本領発揮」といったところでしょうか。
ジュニア・ウォーカー・ヴァージョンの「熱さ」を受け継ぎながら、ブリティッシュ・ロックならではのダークな雰囲気と、ヘヴィーなサウンドを加味したヴァニラ・ファッジの「ショットガン」は、のちに全盛をきわめることになるハード・ロック・シーンに大きな影響を与えた、ロック界の重要なマイルストーンではないかと思うのです。
ティム・ボガートとカーマイン・アピスのふたりは、ヴァニラ・ファッジ脱退後はともにカクタスやベック・ボガート&アピスに加わり、1970年代屈指の強力なリズム・セクションとしてブリティッシュ・ロック界に君臨しました。
[歌 詞]
[大 意]
ショットガンだ
ぶっ放せ
ターンしろ、ベイビー 今すぐに
X線を装備してダンスしに行くんだ
今すぐショットガンを買うんだ
壊せ、装填してぶっ放せ、ベイビー
翔べ、ベイビー
翔ぶんだ、ベイビー
◆ショットガン/Shotgun
■歌・演奏
ヴァニラ・ファッジ/Vanilla Fudge
■シングル・リリース
1968年
■作詞・作曲
オートリー・デウォルト/Autry DeWalt
■プロデュース
ヴァニラ・ファッジ/Vanilla Fudge
■録音メンバー
☆ヴァニラ・ファッジ/Vanilla Fudge
ヴィンス・マーテル/Vince Martell (guitar, vocal)
マーク・スタイン/Mark Stein (keyboards, vocal)
ティム・ボガート/Tim Bogert (bass, vocal)
カーマイン・アピス/Carmine Appice (drums, vocal)
■チャート最高位
1968年週間チャート アメリカ(ビルボード)68位
■収録アルバム
ニア・ザ・ビギニング/Near the Beginning (1969年)
ヴァニラ・ファッジ『ショットガン』
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