ぼくが中学生の頃、友人のS君と一緒にレコード店に行ったことがありました。
S君には欲しいレコードあって、それを買いに行くというので、一緒について行ったんです。
S君が何を買ったのかは覚えていませんが、ともかくレコードを持ってレジへ行きました。ちょうど年末のセールかなにかだったんでしょう、店員さんから「クジをひいてください」と言われました。
S君は「オレ、クジ運弱いから、お前代わりにひいてくれない?」とやけに弱気な発言。そこてぼくが満を持して(?)代わりにクジをひくと、見事に「当たり」だったんです。
景品は「レコードをもう1枚」。そして貰って帰ったのが、この「ラバー・ソウル」というアルバムでした。
もっともぼくが貰ったわけではなくて、S君が持って帰ったんですけどね。
「ラバー・ソウル」は、ビートルズの6枚目のアルバムです。
ライヴ活動からレコーディングに比重を移しつつあったビートルズが、初めて充分な制作期間をかけて作り上げた作品です。
このアルバムによって、ビートルズは「アイドル」から「アーティスト」へと変貌をとげたと言ってもいいでしょう。
この作品は、ロック史上初のトータル・アルバムだと言われています。
サウンドはもちろん、ジャケットからタイトルに至るまで、アルバムをトータルな芸術作品と捉えるメンバーのコンセプトに基づいて制作されており、収録曲も、初めて全曲をオリジナルで固めました。
それまでの、「シングル曲を寄せ集めたものがアルバム」という概念を変えた作品だとも言えます。
ビートルズは、当時まだ珍しかったシタールの導入、社会問題を取り込んだ歌詞、複雑化した曲の構成、意識的に凝った曲作りなど、さまざまな新しい手法を試みました。
こうして生まれた「ラバー・ソウル」という作品は、ビートルズのひとつのターニング・ポイントとなりました。
音楽的実験の色合いが濃くなったため、この作品からステージで演奏されたのは「恋をするなら」と「ひとりぼっちのあいつ」だけだそうです。もはや四人だけでステージ上で曲を再現することが難しくなってきたんですね。
全体的に落ち着いた雰囲気が漂っています。
とくに目立つのが、ジョンの内面的世界が表面に現れてきたことでしょうか。「ひとりぼっちのあいつ」や「イン・マイ・ライフ」などでそれが顕著に現れています。
もちろん佳曲ぞろいです。R&B風で、ハード・ロックのはしりとも言われる「ドライヴ・マイ・カー」、イントロのギターから風景が見えてくるような気分にさせられる「ノーウェジアン・ウッド」、アカペラのコーラスによるイントロと多重録音によるコーラス・ワークが素敵な「ひとりぼっちのあいつ」、「イエスタデイ」と並ぶバラードの傑作「ミッシェル」、これも旋律が美しい「ガール」、中間部のバロック風ピアノ・ソロが際立っている「イン・マイ・ライフ」などなど・・・。
しかしビートルズのアルバムって、同じ場所にとどまっているものがひとつとしてないんですね。改めてそんなことを思いました。
もはや「どのアルバムが好きか」ではなく、好きなアルバムの順番はどれなのか、が問題なのです。
◆ラバー・ソウル/Rubber Soul
■歌・演奏
ビートルズ/Beatles
■リリース
1965年12月3日(イギリス)
1965年12月6日(アメリカ)
1966年3月15日(日本)
■プロデュース
ジョージ・マーティン/George Martin
■収録曲
[side A]
① ドライヴ・マイ・カー/Drive My Car (Lennon=McCartney)
② ノルウェーの森(ノーウェジアン・ウッド)/Norwegian Wood (This Bird Has Flown)(Lennon=McCartney)
③ ユー・ウォント・シー・ミー/You Won't See Me(Lennon=McCartney)
④ ひとりぼっちのあいつ/Nowhere Man(Lennon=McCartney)
⑤ 嘘つき女/Think For Yourself (George Harrison)
⑥ 愛のことば/The Word(Lennon=McCartney)
⑦ ミッシェル/Michelle(Lennon=McCartney)
[side B]
⑧ 消えた恋/What Goes On(Lennon=McCartney=Starkey)
⑨ ガール/Girl(Lennon=McCartney)
⑩ 君はいずこへ/I'm Looking Through You(Lennon=McCartney)
⑪ イン・マイ・ライフ/In My Life(Lennon=McCartney)
⑫ ウェイト/Wait(Lennon=McCartney)
⑬ 恋をするなら/If I Needed Someone (George Harrison)
⑭ 浮気娘/Run For Your Life(Lennon=McCartney)
■録音メンバー
[Beatles]
ジョン・レノン/John Lennon (electric & acoustic-guitars, organ⑤, percussion, lead-vocals①②④⑥⑨⑪⑫⑭, harmony & backing-vocals)
ポール・マッカートニー/Paul McCartney (bass, electric & acoustic-guitars, piano①③⑥, percussion, lead-vocals①③⑦⑩⑫, harmony & backing-vocals)
ジョージ・ハリスン/George Harrison (electric & acoustic-guitars, sitar②, percussion, lead-vocals⑤⑬, harmony & backing-vocals)
リンゴ・スター/Ringo Starr (drums, percussions, organ⑩, lead-vocals⑧)
[additional musicians]
ジョージ・マーティン/George Martin (piano⑪, harmonium⑥⑬)
マル・エヴァンス/Mal Evans (organ③)
■チャート最高位
[オリジナル盤=パーロフォン盤]
1965年週間アルバム・チャート イギリス1位
1966年週間アルバム・チャート イギリス1位
[アメリカ盤=キャピトル盤]
1966年週間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)1位
1966年年間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)4位
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「ああ~ガ~ルすう~」のところを はじめて聴いたとき、ジョンよ歯医者行ってから録音すればよかったのにと思いました。(うそ!)
”イン・マイ・ライフ”
昔を想い出させてくれる曲調に引き込まれます。思い出にひたりながらも新しい恋人とともに次の旅立ちに向うというジョンの詩もぐっと胸にきてフェイバリットな曲です。(ホント!)
>ガール
>「ああ~ガ~ルすう~」
あの「すう~」は、なんでもマリファナを吸うことを表しているんだ、という説があるそうですね。
「ルーシー・イン・ザ・スカイ~」ではLSD云々が取り沙汰されるし、やっぱりビートルズとクスリや葉っぱとの関係は深いと思われてた?
>イン・マイ・ライフ
ぼくもこの曲、好きです。ちょっぴりせつないメロディー、間奏のピアノ、もちろん歌詞も含めて。
自分でビートルズのベストを編集する時には、絶対に外せない曲です。
また遊びに寄ってくださいね(^^)
ビートルズはどれもスゴイし、いったいどう説明したらいいのか悩んでしまうので、こうして他の人が紹介する記事っていうのはある意味大変助かりますね!ホッとします。(^^)ありがとうございます!
ぼくはこのレコードに触れるまでは「Rubber」じゃなくて「Lover」だと思ってました(^^;)。
>どう説明したらいいのか悩んでしまう
同感です。できれば自分がどう感じたかをもっと書きたいんですが、ありきたりな解説もどきになってしまったかもしれません。。。
ほんとにビートルズってすごいですよね。解散してから40年近いのに、未だに曲の持つパワーが生きてるような気がします。