1980年代に入り、デヴィッド・ボウイはRCAからEMIに移籍しました。
移籍後第1作にしてボウイの14枚目のアルバムが、イギリスのほかカナダ、フランス、オーストリア、オランダ、ノルウェイ、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランドなどで1位を獲得、世界的メガ・ヒットとなった「レッツ・ダンス」です。
シックのナイル・ロジャースが共同プロデュースに加わっただけあって、ダンサブルでスタイリッシュな作品に仕上がっています。しかしサウンドは、それまでの英国的な香りのする作風から打って変わってファンキーかつポップになりました。先鋭的だったボウイが売れ筋サウンドを後追いしたことは、古くからのファンの間で批判的に迎えられました。「ボウイは産業ロックになってしまった」「いや、進化を続けるボウイだからこそ良いのだ」なんていう論争も巻き起こったようです。
評論家の間でも評価は分かれていたようで、概ねロック系評論家からは批判的に、ポップ系評論家からは好意的に迎えられたみたいですね。
ぼくは、ミュージシャンというのはいろんな面を持っているのだし、「こうでなくてはならない」と思い込む必要もないと思っているので、80年代以降のボウイのサウンドもアリかな、なんて思ってます。
常に過去の自分を脱ぎ捨て、新しい自分を模索し続けていたボウイは、猫も杓子もディスコ調になっていた80年代の「時代の波」を敏感に感じ取ったのでしょうね。ボウイがダンサブルなビート積極的に取り入れ、ニュー・ロマンティックスの影響を受けたポップなサウンドに傾いていったのは当然と言えば当然なのかもしれません。
このアルバムがリリースされた1983年頃というのは、MTVなどの影響でプロモーション・ヴィデオの制作も盛んになっていましたが、そのPVを効果的に駆使したことや、同年に話題となった映画「戦場のメリー・クリスマス」の公開なども、「レッツ・ダンス」の大ヒットの呼び水になったと言えるでしょう。
深みのある知的なヴォーカルは健在です。その声がダンス・ビートに乗ってホットに聴こえてきます。
アフター・ビートの効いたヘヴィーでタイトなドラムと、打ち込みっぽいベースはいかにも80年代風です。
1曲目の「モダン・ラヴ」から、ヒットした「チャイナ・ガール」「レッツ・ダンス」という流れはとてもノリが良くて、ハイになるにはもってこいですね。
名ギタリストの故・ステイーヴィー・レイ・ヴォーンが参加、「チャイナ・ガール」や「レッツ・ダンス」を始めとして、ほぼ全編でギターを弾きまくっているのもこのアルバムの聴きどころのひとつでしょう。かなり自己主張の強いギター・プレイですが、曲にうまくマッチしていると思います。
このアルバムに起用されたことが、スティーヴィーのブレイクのきっかけになったというのは有名な話ですね。
社会現象となるほどの大ブームを巻き起こしたディスコ「マハラジャ」。それに続くかたちの「バブル景気」。日本中が刹那的に燃え上がった1980年代でしたが、その時代を象徴するような音楽のひとつが、この「レッツ・ダンス」だったような気がします。
総じてポップなロック・ナンバーが多く、しみじみ聴くというよりは、全身でビートを浴び、サウンドに体を委ねて自然にグルーヴするほうがより楽しめるアルバムだと言えるでしょう。
◆レッツ・ダンス/Let's Dance
■歌
デヴィッド・ボウイ/David Bowie
■リリース
1983年4月14日
■プロデュース
デヴィッド・ボウイ & ナイル・ロジャース/David Bowie & Nile Rodgers
■収録曲
[side A]
① モダン・ラヴ/Modern Love (David Bowie) ☆
② チャイナ・ガール/China Girl (lyrics=Iggy Pop, music=David Bowie) ☆
③ レッツ・ダンス/Let's Dance (David Bowie) ☆
④ ウィズアウト・ユー/Without You (David Bowie) ☆
[side B]
⑤ リコシェ/Ricochet (David Bowie)
⑥ クリミナル・ワールド/Criminal World (lyrics=Peter Godwin, Duncan Browne, Sean Lyons, Bowie music=Godwin, Browne, Lyons)
⑦ キャット・ピープル/Cat People(Putting Out Fire) (lyrics=Bowie, music=Giorgio Moroder) ☆
⑧ シェイク・イット/Shake It (David Bowie)
☆=シングル・カット
■録音メンバー
デヴィッド・ボウイ/David Bowie (lead-vocals)
ナイル・ロジャース/Nile Rodgers (guitar)
スティーヴィー・レイ・ヴォーン/Stevie Ray Vaughan (guitar)
ロブ・サビノ/Robert Sabino (keyboards, piano)
カーマイン・ロハス/Carmine Rojas (bass)
バーナード・エドワーズ/Bernard Edwards (bass④)
オマー・ハキム/Omar Hakim (drums)
トニー・トンプソン/Tony Thompson (drums)
サミー・フィゲロア/Sammy Figueroa (percussions)
マック・ゴールホン/Mac Gollehon (trumpet)
スタン・ハリスン/Stan Harrison (baritone-sax, flute)
ロバート・アーロン/Robert Aaron (tenor-sax)
フランク・シムス/Frank Simms (backing-vocals)
ジョージ・シムス/George Simms (backing-vocals)
デヴィッド・スピナー/David Spinner(backing-vocals)
■チャート最高位
1983年週間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)4位、イギリス1位、日本(オリコン)6位
1983年年間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)28位、イギリス2位、日本(オリコン)22位
1984年年間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)64位
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当時、デヴィッド・ボウイのこの曲を聴いて、肯定、否定以前に、
「こんなになっちゃっていいのかな?」
っていう戸惑いがあった気がします。
でも、結局は気に入りましたけどね。
彼の声は最高です。
オヤジでも、シビレますね。
以前からのボウイ・ファンからすると、やっぱり戸惑ってしまうと思います~。
ぼくはスティーヴィーのギターとかオマー・ハキムのドラムなども好きなので、バックのサウンドも楽しめました。
このあたりの曲はダンス・パーティなどで結構弾かされました。そういう意味でも懐かしいです。
あ、ボウイの声、ぼくも大好きです~♡ 声優も務まりそうな美声ですよね。
・・・実はワタスは、デヴィッド・ボウイの存在は映画を観るまで、あまり知らずにいました><
もちろん大島渚監督の「戦場のメリクリ」の事です。北野たけしサマがデヴィッド・ボウイに「センキュー ミスター・●×!」とか言う台詞で・・・ああ、この人がデヴィッド・ボウイなんだ! と知った次第なのでございます(最近ボクも・・・むちむちしてます)ボウイのブルージーンはもっと後の作品でしょうか? その曲はオボロゲに覚えております^^;
彼は近所の方にそっくりです(笑)
「レッツ・ダンス」と言われると、思わず聴いてしまうんですよね(汗)
私は、正直、グラムロックってよくわからないんですが、彼の怪しい雰囲気は好きです♪
ずっと宇宙人だと思っていましたが、
笑うんだ・・・
初めて知りましたが
ドラムにオマーハキムが参加していたのですね
彼はスティングのバックとかもやってましたよね
私は何故か彼のソロのステージを埼玉で見たことがあってアルバムも持っているのですが
ボウイのアルバムに参加していたとは知りませんでした
それにしても打ち込みが流行りだした頃から
良いドラマーが出てこなくなりましたね
あ!!本題のボウイの話でなくてすみません
「戦場のメリー・クリスマス」は北野武さんの俳優としての評価を高めた映画でもありましたね。
デヴィッド・ボウイと坂本龍一教授のキス・シーンも大いに話題になった、と記憶しております。
ボウイはその美形を生かして、時々映画にも出演していたようですね。
「ブルー・ジーン」は1984年か85年くらいにヒットしたんではなかったでしょうか。「ブルー・ジーン」もダンス・パーティーでよく演奏しました。これもノリの良いダンス・ミュージックでしたね。(^^)
サウンド的にもあんまり古さを感じないです。
ご近所にボウイ似の方がいらっしゃるんですか!
ぜひぜひ「レッツ・ダンス」を歌ってもらいましょう~(^^)
あ、やっぱり持ってましたか~ さすがに有名どころは押さえてますね。
グラム・ロックは音楽的な分類法じゃないみたいですね。ビジュアル的なものを重視した分け方だと思っているので、ぼくの中ではグラム・ロック=化粧・退廃的・美形・怪しい、となっております(^^)
>ずっと宇宙人だと思っていましたが、笑うんだ・・・
宇宙人のフリをしてたんですね~ youtubeでほかのライブ映像を見ましたが、ニッコニコの表情を見せてましたよ。
そうなんですよ。エントリーするために久々(何年かぶり)にこのアルバムを引っ張り出して聴いてみたんですが、その時にぼくもようやく気がついた次第です(汗)。
オマーは売れっ子ドラマーですよね。昔ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、スタンリー・クラークと組んだステージの映像見ましたが、とても重厚で、なおかつグルーヴィーなドラムを叩いていて、大御所三人をグイグイ引っ張ってました。それを見てから結構オマーが好きになったんです。
>打ち込みが流行りだした頃から~
そうですね。8ビートを横ノリ(というかアフターノリ)でグルーヴしてみせるドラマー、確かに少なくなったような気がします。ドラマーを起用しても、ガイド・リズムを被せたりして、わざと打ち込みっぽいことをしてみたり・・・。やっぱり人間の温もりが感じられるビートの方が断然良いですよね。(^^)
なんのなんの、どんな話題でもオールOKです~