亭主ぶり?
令和3年8月6日(金)
おもしろき
秋の朝寝や
亭主ぶり
前書き「あるじは夜あそぶことを
このみて朝寝せらるゝ人なり。
宵寝はいやしく、朝起きはせはし。」
秋の朝寝は何とも心地よく、
亭主の配慮に感謝するばかりだ、
の意。
元禄七年(1694)の作。
「あるじ」・・車(しや)庸(よう) をさす。
「亭主ぶり」・・・亭主の心遣い。
「閉関之説」の
「宵寝がちに朝をきしたる覚(さめ)
の分別、何事をかむさぼる」にも通じ、
早寝早起きからはずれることも
時によしとする柔軟な姿勢が感じられる。
俳席後に車庸亭で一泊した翌朝、
ゆっくり休んだことを謝した挨拶吟。
◎ 車庸をいう前書きの家に泊め
てもらって、目が覚めたら、
まだ皆眠っていて、家の中は静かだ。
秋の晴れた日に、寒からず
暑からずで、朝早くから働くでなし、
のんびりしている。
ゆっくりと朝寝をさせてくれた
主人の気遣いにも気持ちがよい。
秋の爽やかな気候がよく出ている
一句である。
最後の亭主ぶりに、車庸への感謝が
こもっている挨拶句である。
元禄七年秋の初め、この頃芭蕉の
体調はまだよくなくて、
秋を喜んで迎えていた。
彼の病気はこの頃から二・三ヶ月で
急に募ってくる。
病気は分からぬが、急性の細菌性
のものであったという推測を
私はしている。
ゆっくりと悪くなる病気ではなくて、
急逝が襲ってくる病態と思う。