目を覚ます自然の歓喜!
令和3年8月31日(火)
8月もあっという間に大晦日。
春雨や
ふた葉にもゆる
茄子(なすび)種(だね)
春雨の中、茄子床に蒔いた種から
双葉が萌えだしている、の意。
元禄三年(1690)の作。
前書き「ふる里このかみが園中に
三草の種をとりて」
「このかみ」・・・長兄。芭蕉の兄、
松尾半左衛門。
「三草の種をとりて」・・・三種類の
種。茄子、唐辛子、芋の三種。
「もゆる」・・・萌ゆる。芽生える。
春雨の本意である植物を育てる
イメージを生かした句。
◎ 細かい粒の春雨が降っている。
その雨の中に、自分が蒔いた茄子の
種から双葉開いている。
雨も植物も春になると、自然が
目を覚ましたように、活動し出す。
雪で氷って動かなかった植物も
柔らかな双葉を赤ん坊が両手を挙
げて伸びをするように開いている。
自然は天も地も呼応したように、
明るい誕生の運動を始める。
「ふた葉にもゆる」運動である。
何と不思議で、美しく、可愛らしい
ことだろう。
ところで、この句には、
推敲ではなくて、別の記述の句もある。
「春雨」を「こまか成(なる)雨(あめ)」
と書き、
「ふた葉にもゆる茄子種」を、
「二葉のなすびだね」
と記すのだ。
すなわち・・・つづく。