貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

俳諧の謎を解く鍵の句

2021-08-28 17:22:40 | 日記

俳諧の謎を解く鍵の句

令和3年8月28日(土)

木曾の情 

   雪や生ぬく 

      春の草

    木曾義仲の心意気をそのまま、

春草は木曾塚あたりに残る雪の下

から芽を伸ばしている、

の意。

 元禄四年(1691)の作。

「木曾の情」・・・木曾義仲の心情・気質。

 底本の編者史邦(ふみくに)  の自序中

に引かれた句で、義仲寺(大津市)での吟。

◎ 木曾義仲こそ、芭蕉が最も敬愛

する武将であった。

 木曾の山の奥に隠れていて、不意に

平氏を急襲して都に攻め入る。

 田舎の荒々しい男が、京で高位の公達

になって威張っていた平家の武士たちを、

忽ちに一掃した。

 その義仲の所業が、積もった雪を

撥ね除けるような春の草の生命力の

強さを示していて面白いと

芭蕉は詠んでいるのだ。

 芭蕉は生前義仲寺の墓「木曾塚」の

近くに庵を結んでいて、

死後は塚の横に自分を葬るように

言い置いていた。

 塚のあたりの四季の眺めをこよなく

愛し、それを知らなければ良い句は

生まれてこないと、門弟に語っていた。

 四季の眺めは、義仲の心中を

知ってこそ、それを写しても

強い感銘を受けるとも語っていた。

 この一句に込められた俳人の

心の深さを読み取ることこそ、

芭蕉の俳諧の謎を解く鍵である。