梅の花‥春を待つ冬籠り
令和3年8月9日(月)
暦の上では、既に秋。
今日から、冬の句へ。
先祝へ
梅を心の
冬籠り
前書き「しばしかくれ人に申遣す」
来るべき春を何よりも祝うがよい。
今の境遇は梅が諸花に先駆けて咲く
ことを心に思い、厳しさに耐えて
春を待つ冬籠もりなのだ、
の意。
貞享四年(1687)の作。
「かくれゐける」・・・罪を得た
杜国を指す。
「難波津に咲くやこの花冬籠り
今は春へと咲くやこの花」
(古今集・仮名序)を踏まえており、
『刷毛序』の句文「権七に示す」から、
杜国の前途を期して詠み、その家僕
権七に与えたものと知られる。
◎ 冬の扉を開けるのが梅。
今は仮に世を偲ぶ冬籠もりをしていても、
百花に先んじて冬に咲く梅の花を思え。
冬籠もりの境遇にあっても、
おのれが梅のように一番先に
美しい花を咲かせようと思う
矜持を持とうぞ。
この一句は、『古今和歌集』の
紀貫之の「仮名序」を下敷きに
している。
「そへ歌」としてあげる。
王仁が仁徳天皇の即位をお勧め
した歌である。
すなわち、
「難波津に咲くやこの花冬ごもり
今は春へと咲くやこの花」
という梅の花を仁徳天皇になぞらへ
歌ったのを真似ているというのが
一般的らしい。
芭蕉が梅の早咲きにならって
冬籠もりから抜け出し、
おのれを祝う心地になる意気込みは
しかと読み取れる。