趣向の一句!冬夏の二重構造
令和3年8月11日(水)
冬牡丹
千鳥よ雪の
ほとゝぎす
前書き 「桑名・本当寺にて」。
冬牡丹が咲く庭に聞こえる千鳥の
鳴き声は、雪中の時鳥といった恰好だ、
の意。
「冬牡丹」・・・春の蕾を摘んで、
冬に開花するようにした牡丹で、
寒牡丹ともいう。
俳諧独自の題。
貞享元年(1684)の作。
本当寺は本統寺。
木因と訪れた寺で、古益らと句会を
催したときの吟。
牡丹が本来は夏季であるのに因み、
千鳥を雪の時鳥言いなしたのが趣向。
千鳥も季語。
◎ 雪積もる庭に面して牡丹と千鳥を
配し、新年の雅会を巻いていると、
千鳥が時鳥のように鳴いた。
手の込んだ趣向の妙は、
夏になって、時鳥の鳴くのを待ち
焦がれている人々に、千鳥が時鳥
に変化すればという望みを起こ
させる。
同時に、雪景色が牡丹と千鳥に
よってこそ、美しく見えるという
満足感を与えてくれる。
この冬と夏の二重構造の句、
趣向の面白さで際立っている。