貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

句作の歓び

2021-08-20 15:16:37 | 日記

句作の歓び

令和3年8月20日(金)

一露も 

  こぼさぬ菊の 

     氷かな

 一滴もこぼすまいと、寒菊はそこに

置く露を氷としていることだ、

の意。

 元禄六年(1693)年の作。

 前書き「苑蠡(えんれい) が

趙(ちよう)南(なん) のこゝろを

いへる『山家集』の題にならふ」

 菊がもつ隠逸のイメージと

黄金色に輝く姿とを、二つながら

示す。

◎ 菊という秋の花に露がかかって

いると思うと、露は氷っていた。

 外は寒い。

 しかし、氷った露の外光に輝く

ところは実に美しい。

 風が吹いても、びくともせぬ立派な

細工物である。

 このわび住まいの庵にも、様々な

自然の美が示されていて、実に楽しい。

 三句とも同じ甘酒造りの日の小景。

  寒菊をごく自然に詠み、菊の氷った

露の美しさを、自分は温かい庵の内

にいて見ているというだけなのだが、

すぐ近くの台所の下の花の様子に

秋の名残を見出し、やがて咲く梅を

望んでいる内心を書かずに

読者に想像させている。

 句作の手腕の軽やかで、

自然なところが素晴らしいし、

庵の狭い庭にも、普く目を巡らして、

句作に喜びを見出している芭蕉の

心が気持ちいい。