詠嘆の助詞「も」の効用
令和3年8月30日(月)
二日にも
ぬかりはせじな
花の春
二日にはしくじったりしないで、
日の出を拝んで、初春を祝うのだ、
の意。
貞享五年(1688)の作。
「二日にも」・・・『三冊子』に
よれば、「二日には」というべきところ、
それでは平板で趣がないため、
「二日にも」にしたという。
「ぬかり」・・・手抜かり、失敗。
紀行本文に、除夜に酒を飲んで、
夜更かしをし、元日は寝過ごして
しまったとある。
◎ 元日の朝はよってしまい、
初日の出を見損なってしまった。
そこで、二日に日の出を見ること
にした。
春の朝の暁の桜を見るのに、
「二日には」とするのは、
「あまり平目にあたりて、聞なく
いやし。」と避けたという話が
残っている。
「二日にも」の「も」は、
詠嘆の助詞で「二日に」とするのと
同じである。
しかし、「字足らず」となって
形が悪くなる。
わずか一文字だが、一字でも
おろそかにしないところが、
芭蕉の面目である。
井本・堀両氏注解の『松尾芭蕉集①全発句』
には、去来の
「凩の 地迄おとさぬ しぐれ哉」を、
芭蕉が「地迄とかざりたる迄の字いやし」
と教え、
「凩の 地にもおとさぬ しぐれ哉」
と改めさせたとあり。
我が師匠も大いに啓発された。
漢字と平仮名の用い方を芭蕉は教えている。