★ベルの徒然なるままに★

映画、ゲーム、アニメ、小説、漫画・・・管理人ベルの、大好きな物をいっぱい集めた徒然日記です。

映画『武士の一分』

2007年02月17日 | 映画鑑賞記
そういえぱ、今日って、土曜日だったんですよね(><)
オットが、昨日(今朝?)もam2時過ぎに帰宅して、で、仮眠だけとって、また、朝から休日出勤していったので、なんだか、平日だとばかり思っておりましたA^^;;

明日くらいは休めると良いのですが。

さてさて。
これまた、かなり前に観た映画なのですが、感想を(*^^*)

藤沢周平原作小説の映画化、『たそがれ清兵衛』、『蝉しぐれ』に続く、第三弾。
キムタク主演の時代劇です。

実は、歴史物は好きなのですが、時代劇には、あまり興味が無くって。
『たそがれ清兵衛』も、色々な方から、「すんごく良いから、見てvv」と勧められたものの、結局、未だに見ていないという私なんですA^^;;

そんな私が、『武士の一分』を見ようと思ったのは、やっぱり、キムタクの時代劇が見てみたかったからですね(*^^*)
特に、キムタクのファンという訳ではないのですが、彼の演じる武士・・・って、どんなんだろう~と思いまして。

という訳で、見に行ったという訳です。

この映画、後悔は確か、昨年の12月上旬からだったと思いますが、私が行ったのは1月末。
もう、公開からふた月ちかく経っているというのに、平日で、シネコンの大きなシアターでの上映、しかも、満席でした。
やはり、キムタク・パワーでしょうか??

以下、ネタバレ全開な感想ですので、ご注意下さいませ。


結構長い映画なのですが、物語自体は、とても簡単で単純なストーリーです。

主人公の三村新之丞は、下級武士。
夫想いで、美しく、そして奥ゆかしい妻の加世と、奉公人の徳平と暮らしています。
そんな彼の、お城での仕事は、毒味役。お殿様の食事に毒が入っていないか、事前に自らが食べて確認する・・・というお役目。
けれども、このお役を、「たいした仕事ではない」と言って、あまり仕事意欲を見せない新之丞。彼の本当の夢は、早くに隠居して、剣術の道場を開くこと。そして、身分を問わず、剣術を学びたいという子すべてに、門戸を開き、子供のそれぞれの体格や個性にあった技を教えてやりたい・・・そんなささやかな夢を抱いているのでした。
けれども。
ある日、貝のお刺身を毒味した新之丞は、その毒に当たり、倒れます。生死の境をさまよったあげく、命だけは取り留めるものの、毒に当たり、失明してしまいます。
失明しては、お城仕えも出来ない。
しかも、親戚一同からは、今後の新之丞達の生活を誰が面倒見るのか・・・と、お荷物扱い。
生き恥をさらすよりはと、自害を決意するものの、妻の加世に止められ断念する新之丞。
一方、加世は、新之丞の処遇に関し、なんとか、少しでも良い「お沙汰」を頂けるように・・・と、お城での位も高い、島田という男に口添えを頼むのです。
島田は、美しい加世に、昔から目を付けていた様子で・・・口添えの代償として、加世に自分と肉体関係を持つように強要します。夫のためと思い、島田の言いなりになり続ける加世ですが、いずれ、その事実は、夫である新之丞の知ることとなり・・・。
怒った新之丞は、加世を離縁します。
そして、目が見え無いながらも、再び、剣を取り、稽古に励むのでした。
自分の妻を、嬲り物にした、島田と「果たし合い」をするために。
そんな彼は、かつての仕事仲間から、衝撃の事実を聞かされるのです。
目が見えなくなった新之丞を厚遇するお沙汰が下ったのは、島田が口添えをしてくれたからではなく、殿自らによるご配慮だったと。
つまり、加世は島田に騙されて、弄ばれていただけだった・・・。
島田だけは絶対に許せないと誓った新之丞は、とうとう、島田に「果たし状」を送りつけ・・・果たし合いの日がやってくるのでした・・・。


単純なストーリーですが、見所、見せ場は、たくさんあったと思います。

まず。
なんと言っても、描かれている「世界」の「雰囲気」が凄く良いです。
しっとりと、落ち着いて、柔らかな感じ。
今では、もう見られなくなってしまった、昔の日本の良さ・・・というものが窺えました。

夫を想い、夫のために陰ながら尽くす、妻・加世の姿は、なんだか、現代では忘れさられたものを思い出させてくれる、女性の美しさがありました。
もちろん、決して、なんでも、黙って男性に尽くすのが良いと言っている訳ではありません。現代では現代の、やり方、生き方での女性の良さがあり、それは、昔のそれとは、相反するものが多いことでしょう。
けれども、ここで描かれている、妻の姿の、細やかな愛情、伴侶を大切にする姿、柔らかな物腰は、奥ゆかしい態度などは、本当に美しかったです。

そして、奉公人の徳平。
俳優さんは、笹野高史さんが演じていらっしゃいますが、もう、物凄く良かったです!
新之丞の父親の代から三村家に使えている様子で、時に厳しく新之丞を悟しながらも、奉公人としての分を弁え、新之丞夫婦を支えます。
加世が浮気をしているのでは・・・と疑惑が持ち上がったときも、加世を信じ、庇い、まるで、家族の一員のように、二人の行く末を案じています。
決して出しゃばるわけではないのに、ひしひしと伝わる、行き届いた気配りや想いが、物語を一層深い物にしていました。
時にコミカルに、時にシリアスに、笹野高史さん演じる徳平は、脇役といえども、物凄い存在感がありまして。
きっと、この徳平無しでは、この映画は成り立たなかったのでは・・・。彼こそ、キーパーソンなのでは・・・と想わずには居られませんでした。
笹野高史さんの演技は、さすが、助演男優賞ものです!!!
実は、正直言うと、キムタクの新之丞より、笹野高史さんの徳平が、終始気になっていました^^

そして。
主人公の新之丞。
キムタクの演技も、本当に迫真の演技でした。

失明するまでの新之丞は、本当に、ごく普通の青年と言った感じなんです。
今の仕事に不服を持ちながらも、渋々、お役目を果たしている癖に、将来の夢・・・子供達に剣術を教える道場を開きたいということを語るときだけは、目がキラキラと輝いていて。
道を歩いているときに見かけた、魚釣りをする子供にちょっかいをかけてみたり、家で冗談を言ってみたり、奉公人をからかってみたりと、どことなく、子供っぽさが垣間見える・・・そんな青年でした。

けれども、一転。
失明してからの彼は、ガラリと人が変わります。

見えぬ目のまま、生き恥をさらすくらいなら自害した方が良いとまで思い詰めた絶望。
仕事をすることも出来ず、家の中すら一人で歩くことの出来ない自分への苛立ちや焦燥感。
そんな中、急に持ち上がった妻の不貞疑惑に悩みながらも、徳平に妻の尾行をさてしまうことへの葛藤。
そして、理由はどうあれ、妻の不貞を知ったときの激しいまでの怒り。
島田と果たし合いをするために、剣術に励む、静かながらも、その裡は激しさを持った覚悟。

まるで、これが、同一人物か・・・と思ってしまうくらい、新之丞は人が変わります。
彼の中にある、子供っぽさは消え、絶望と怒りと覚悟を抱いた、「武士」の顔になるのです。

「目が見えない」という難しい設定の中、あんなに、静かながらも裡に秘めた激しい感情を表現しきっていたキムタクの演技は、本当に素晴らしかったと思います
本当に、魅入ってしまいました。

 そして。
 登場人物、それぞれがそれぞれ思いやる「愛情」もしくは、「絆」に溢れた物語です。
 妻を思う夫、夫を思う妻、主人を思う奉公人、奉公人を思う主人。
 
 当時は、今の日本のように、自由で便利で恵まれているような生活では、決して無かったはずです。
 けれども、この映画の人たちを見ていると、今の日本よりも、もっと豊かな家族や、人と人との愛情、絆を持っていたのかも知れない。一人の人間としての、誇りと尊厳を持って生きていたのかも知れない・・・と感じずには居られませんでした。

 本当に、役者さん、一人一人の役割や演技も最高で、昔の日本の美しさを堪能させてくれた作品だと思いました。

 ちょっと贅沢を言えば、「果たし合い」のシーンが、意外とアッサリとしていた所かなA^^;;
 もう少し、引っ張ってくれても良かったかも知れません。
 けれども、逆に、果たし合いのシーンを、長くすることなくアッサリと描いているからこそ、そこに至るまでの、新之丞が覚悟を決めるシーンが際だって見えるのかも知れませんね。

 そして、最後の最後には、心和む結末が待っています。
 色々と失った物や、哀しかったことはあっても、最後のシーンで、すべて救われたような、そんな気持ちになりました。

 日本人として忘れていたことを思い出させてくれて、そして、感動する・・・。時代劇映画は、こんなに素晴らしいんだと、初めて思えた・・・そんな作品でした。