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映画『羊の木』 

2018年02月09日 | 映画鑑賞記
今日は、昨日見た、映画『羊の木』の感想をば。

原作は、コミックスとのことですが、原作は未読。
あらすじとキャストに惹かれて、鑑賞しました。

■映画『羊の木』 予告編



少し寂れた、地方の港町・魚深市に、6人の男女が移住してきたところから、物語は始まります。
主人公の市役所職員・月末は、彼らの受け入れ担当を命じられ、魚深市に単身でやってきた彼らの出迎えに行くのですが、やって来た彼らの挙動に対し、月末は何か違和感を感じるのでした。
というのも。
新たにやってきた移住者達は、全員、刑期を終えた、元犯罪者。
刑期を終えた元受刑者を自治体が受け入れる・・・という、新仮釈放制度により、魚深市が受け入れた者達だったのす。
しかも。
全員、刑務所に入っていた理由は、「殺人」を犯したから・・・。
移住者達の過去を住人に知られてはならない、また、移住者同士が接触するようなこともあってはならない・・・という決まりのもと、彼らに気を配る月末の毎日が始まりました。
しかし、彼らが越して来た途端、これまで静かで平和だった街に不審死事件が起こります。
先入観を持ってはいけないと思いつつも、疑いの目を向けてしまう月末。
また、元受刑者の女性は、自分の父親と結婚を考えるほどの恋愛関係に発展してしまったり、はたまた、若い元受刑者の男性は、月末が想いを寄せる女性と付き合うようになっていたり。
彼自身の日常も、また、街の日常も、少しずつ、歯車が狂っていき。。。

というお話。

静かで地味な展開なのですが、その静かな中に、物語が進むにつれ、ジワリジワリと迫り来る不安感があり、そして、それは、恐怖に変わって行きます。
実に面白くて、そして、色々と考えさせられるテーマの人間ドラマサスペンスでした。

役者さんそれぞれの演技も良かったです。

錦戸さん演じる主人公の月末は、平凡だけど、真面目で人が良い、市役所の職員さんって感じで。
過去に色々なものを背負ってきたであろう元受刑者達と、凄く対比されていました。

そして、全員が殺人を犯した経験があるという、癖のある6人の元受刑者達。
この6人を演じる役者さん達の演技も圧巻でした。

6人共、皆、殺人を犯していると言っても、その理由や事情は様々。

元暴力団員で、抗争の果てに・・・というケースや、暴行というケース、また、自分を苛めていた上司への恨みが募り・・・というケースも。
過剰防衛の人もいれば、酒乱の夫のDVに耐え兼ねて・・・という人も。はたまた、寝室での行き過ぎたプレイから誤って・・・など。

先入観や偏見はイケナイんだけど、そんな彼らは、皆、少し挙動や言動に不安定さがあって。。。

「また何かやらかしてしまうのではないか?」っていう不安感が、ずっと、拭えませんでした。

きっと、主人公の月末も、同じように感じていたのではないでしょうか?

でも、いくら怪しく見えたとしても、ちゃんと自分の罪と向き合い、必死で更生しようとしている人もいます。真剣に人を愛そうとしている人も居ます。

その一方で、全く反省してなくて、何かまた犯罪を犯そうと目論んでいる者。
また、サイコパスで、人の命を奪うことに何の感情も覚えず、いとも簡単に罪を繰り返す人も。

物語の冒頭では、皆が怪しく見えてしまい、とても怖いのですが、でも、真面目に生きようとしている人は、ちゃんと、地域の人達にも受け入れられていき、新たな居場所を手に入れて行く・・・という心温まるエピソードにも発展します。

そうそう。
ひとつ、どうしても、納得がいかなかったのが、優香さん演じる元受刑者と主人公の父親との恋愛のお話。

介護が必要なくらいの年の離れた男性と、真面目に結婚を考えるということは、余程、何か、二人の間で絆が生まれたのだと思いますし。もしかしたら、原作では、そういう二人の真剣な愛のエピソードが描かれているのかもしれません。
原作を読んでいないから分からないのですが、映画では、突然、二人が欲情したようにしか見えなくて(^^;;
描き方によっては、年齢を超えた素敵な愛の話なのかもしれないのに、なんか、もう、ホント、ポカーンと置いてけぼりを喰らった感じの展開でした。
そこは、ちょっと残念だったかな。

そして、元受刑者の女性と、自分の父親が結婚したいと言い出したり、自分が密かに想いを寄せ続けている学生時代の元恋人と、元受刑者の男性が付き合い始めたり・・・。自分の日常にも、彼らが深くかかわっていくことに戸惑う、主人公の心の動きも良く描かれていたと思います。

偏見や差別はしてはいけないと思いつつも、つい、過去のことを持ち出してしまい、その後に、悔やみ反省する主人公。

でも、私が主人公と同じ立場だったら・・・やっぱり、同じことを言ってしまうのではないかなぁと思ってしまったり。
偏見はダメだと思いつつも、どうしても・・・。
主人公が、本当にごくごく普通の平凡な人であればあるほど、彼らとのギャップが浮き彫りなって見えました。

で。
前知識無く見ていたので、このまま人間ドラマで終わるのかなぁと思っていたら・・・後半、一気に、主人公の身にも、命の危険が迫ってきます。

これは、正直、「ちょっと危ないなぁ」と思っていた人物絡みの出来事だったので、あまり驚きはなかったのですが、凄く怖く描かれていました。

主人公が帰宅したら、あの人物の仕事の車が家に止まっていた所とか、ホラー映画レベルにゾッとしました(>_<)

ずっと静かに物語が進んでいっていた分、ラストの展開は怖かったです。

そして、また、平和で平凡な田舎町の日常に戻っていく・・・。

ある意味、本当に悪い人達はいなくなり、過去に罪は犯したものの、真面目に生きようとしたいる人だけが、街に受け入れられたってことかなぁとも感じました。

物語と要所要所で絡んで来ては、ラストに大きな意味を持った、不気味なお祭の存在も良かったです。


個性的な6人のドラマをもっと掘り下げて欲しかった感は否めませんでしたが、色々と考えさせられるテーマの作品だったと思います。

そして、映画を見終わった後も、ずっと考えてしまう事。
自分は、殺人者を偏見や差別なく受け入れることが出来るのだろうか?って。

答えは、まだ出ません。