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精子戦争---性行動の謎を解く (河出文庫) |
秋川 百合 | |
河出書房新社 |
本屋で見つけた。
以前何かの本で紹介されて、読みたいなと思った記憶があった。
この本は1996年出版の「Sperm Wars」の翻訳である。
「またそんな本を読んで」と思う方がいるかもしれない。
しかし、著者の「ロビン・ベイカー」は生物学者である。
1980年代半ばから行われた、性行動の科学的調査の方法と内容は生物学者を驚かせたという。
どんな調査か、それは詳しい性行動についてアンケート調査をしたり、ボランティアカップルから精液を採取した。
本を読んで考えた。
人が生まれた目的とは、そして成功とは。
昔、「負け犬」という言葉が流行ったが、生物にとっての勝ちとは。
それは、いかに多くの自分の遺伝子を残すかである。
子供の数だけではない、孫ができて、ひ孫ができて、玄孫ができて・・・。
子供をたくさん産んだとしても、その子が育って次に遺伝子をつなげていかなくてはいけない。
そのために男性は多くの卵子に出会うように行動をする。
そのために女性は質の良い精子を選択する。
それは、頭で考えているのではなく、本能的な行動として起きている。
男性は、常に自分の精子が精子戦争に勝つための行動をとっている。
精子にもいくつかの種類があるそうだ。
卵子と結びつくもの、受精能力はないが敵を攻撃するもの、行く手を邪魔するもの。
自分の決まったパートナーが別の精子と受精しないよう、常に自分の精子で子宮の中を満たしておく。
精子は5日~7日で死んでしまうからルーティン・セックスが必要となる。
では、決まったパートナーではない時、その時は新鮮で元気な精子を送り出す。
子宮にいるであろう、別の古い精子に勝つためである。
もちろんそこにいた、古い受精能力のない精子はそれを阻み、精子戦争が勃発するのである。
では、女性はというと。
どうしたら優秀な遺伝子が残るのかを考え選ぶ。
優秀な遺伝子が残るためには、二つの事が重要である。
ひとつは、健康で優秀で外観が良い精子を選ぶ。
ひとつは、財力があり遺伝子を安心して育てられる環境を作れる精子を選ぶ。
これも本能で選んでいるらしい。
そして、条件がそろわなければ妊娠したくても妊娠ができない場合もあるそうだ。
女性は良い精子を探している。
だから浮気もする。
健康で優秀で外観が良い精子を受精し、財力があり遺伝子を安心して育てられる環境の男に育てさせる。
「本当の事は母親しか知らない」と言われるが、母親だって本当の事がわからない時もある。
いつも貞淑な女性が、急に性欲が高まり不倫をすることがある。
「なんて事をしてしまったの・・・」
これも、遺伝子を残すための行動だという。
納得したのは「外観がいい」である。
子供の外見が良ければ、沢山の女性がよってくる。
そうなれば、子供は沢山の精子を多くの女性にまき、自分の遺伝子が増えて行く。
では、子供は男子の方がいいかと言えば、孫に自分の遺伝子がつながっているのかはわからない。
そのためには女子の子供の方が確実である。
しかし、女子では遺伝子の増え方には限界がある。
この本を読んでいると、遺伝子を残すために人だけでなく動物たちは必死になっている。
それは、脳で考えている事ではなく、本能的に動いていること。
いつ、プログラムされたかわからないが、よくできている。