9時に人と待ち合わせだったが30分遅刻だ。急いで自転車を走らせいつものジャズバーのドアを開けると、いつになく混雑していた。入り口の補助テーブルと椅子の上にも厚ぼったいコートやカバンが積み上げられている。
入り口近くのカウンターにはあの、巨匠サックス奏者H氏が座っていた。
「あ、Hさん、お久しぶりです!」
「おお、さっちゃん。元気?」
こんなに繁盛しているこの店を久しぶりに見たな。なんだか嬉しい。しばらく入り口付近で待ち合わせの人たちと立ち話をしているとさらに遅れて利樹がやってきた。
巨匠サックス奏者H氏の隣の男性が帰り支度を始めて「あ、早坂さんですね。先日の226素敵でしたよ。また来年も行きます。さあここにどうぞ。」と席を譲ってくれたので、私達もようやくカウンターの席に座る事ができた。
いつものピンガをダブルでもらい、ちびちびと飲み始める。店内に流れるジャズのレコードの音量がやけに大きい。奥のカウンターにはギャルがめずらしく4人もいて楽しそうな笑い声が響いてくるなあ、と思ってみて見るとなんと一番奥の2人はマスターの奥様と娘さんだった。母娘が父の店で友人達と楽しそうにお酒を飲む姿・・・素敵だなあ。
左の端に座っている巨匠Hの話し声がとぎれとぎれに耳に届く。
T「Hさん、はじめて彼女ができたのはいくつですか?」
H「俺?遅いよ。19歳。キャバレーのホステスでね・・・。でもその娘、17ぐらいだったんだよ。」
普段は無口な彼だが、お酒が入るととっても饒舌になり面白い話が次々に出て来る。かなりイイ感じw。
H「でね、俺、その娘と一緒になりたくて家を飛び出ちゃったんだよ。アパートを借りて。その始めての晩にその娘は帰ってこないんだよね~。むふふ。」
T「えええ?なんでえ?」
H「いやあ、トランペットの奴の彼女だったんだよね~。だから、その次の日に来て、3、4日するとまた帰らなくて・・・。しかも、ひどいんだよ、始めてキャバレーのバンドがお揃いのジャケットを新調して、着ていこうと思ったら、ないの。」
S「ど、どうしたんですか?」
H「ぐふふ。その娘が質屋に入れちゃった。」
S「きゃあ、凄い!でもサックスじゃなくて良かったですね。」
H「ううん、そのあとサックスも質屋に入れられちゃって・・・しばらく俺、ピアノ弾いてたんだよ。キャバレーで。ぐふぐふ。」
一同「ぎゃはは~~。」「それでどうしたんですか?」
H「見かねたバンマスが俺の実家にかけあってくれて、質屋から出してもらったんだ。その娘とは当然別れちゃったけど、ときどきやってくるんだよね、お金がなくなると・・・(笑)。ぐふぐふ。」
Hさん、キャバレー時代の話、また聞かせてくださいね。とほろ酔い気分で私だけ自転車をふらつかせながら、小雨の降り出した池袋の街をあとにした。
入り口近くのカウンターにはあの、巨匠サックス奏者H氏が座っていた。
「あ、Hさん、お久しぶりです!」
「おお、さっちゃん。元気?」
こんなに繁盛しているこの店を久しぶりに見たな。なんだか嬉しい。しばらく入り口付近で待ち合わせの人たちと立ち話をしているとさらに遅れて利樹がやってきた。
巨匠サックス奏者H氏の隣の男性が帰り支度を始めて「あ、早坂さんですね。先日の226素敵でしたよ。また来年も行きます。さあここにどうぞ。」と席を譲ってくれたので、私達もようやくカウンターの席に座る事ができた。
いつものピンガをダブルでもらい、ちびちびと飲み始める。店内に流れるジャズのレコードの音量がやけに大きい。奥のカウンターにはギャルがめずらしく4人もいて楽しそうな笑い声が響いてくるなあ、と思ってみて見るとなんと一番奥の2人はマスターの奥様と娘さんだった。母娘が父の店で友人達と楽しそうにお酒を飲む姿・・・素敵だなあ。
左の端に座っている巨匠Hの話し声がとぎれとぎれに耳に届く。
T「Hさん、はじめて彼女ができたのはいくつですか?」
H「俺?遅いよ。19歳。キャバレーのホステスでね・・・。でもその娘、17ぐらいだったんだよ。」
普段は無口な彼だが、お酒が入るととっても饒舌になり面白い話が次々に出て来る。かなりイイ感じw。
H「でね、俺、その娘と一緒になりたくて家を飛び出ちゃったんだよ。アパートを借りて。その始めての晩にその娘は帰ってこないんだよね~。むふふ。」
T「えええ?なんでえ?」
H「いやあ、トランペットの奴の彼女だったんだよね~。だから、その次の日に来て、3、4日するとまた帰らなくて・・・。しかも、ひどいんだよ、始めてキャバレーのバンドがお揃いのジャケットを新調して、着ていこうと思ったら、ないの。」
S「ど、どうしたんですか?」
H「ぐふふ。その娘が質屋に入れちゃった。」
S「きゃあ、凄い!でもサックスじゃなくて良かったですね。」
H「ううん、そのあとサックスも質屋に入れられちゃって・・・しばらく俺、ピアノ弾いてたんだよ。キャバレーで。ぐふぐふ。」
一同「ぎゃはは~~。」「それでどうしたんですか?」
H「見かねたバンマスが俺の実家にかけあってくれて、質屋から出してもらったんだ。その娘とは当然別れちゃったけど、ときどきやってくるんだよね、お金がなくなると・・・(笑)。ぐふぐふ。」
Hさん、キャバレー時代の話、また聞かせてくださいね。とほろ酔い気分で私だけ自転車をふらつかせながら、小雨の降り出した池袋の街をあとにした。