「つながり」の旅 in Paris ~ 人と人、自然、地域との「つながり」 ~

人・自然・地域との「つながり」をテーマにした旅や暮らし(エコツーリズム、スローライフ等)について日々の想いを綴ります。

正木高志「木を植えましょう」を読んだ

2006年03月06日 | Slow Life
筆者は、妻の癌を契機に、自然環境も人間の経済活動によって瀕死の重症であることに気づく。もともと自然の一部であるはずの人間は、経済成長を是とする物質文明により、その自然を傷つけ、エコよりもエゴを優先し、そのツケを未来世代に先送りしている。

自然の中で狩猟採集経済を営んできた縄文人の時代から農耕社会になり富が蓄積されると、経済的に豊かであることが重んじられ、富を巡る争いや自然破壊が起きた。

縄文の血を引き、物質的な豊かさよりも自然との一体感や「わびさび」を重んじてきた日本人は、その本来の霊性を取り戻し、自然を犠牲にした消費的物質文明ではなく、エコロジカルな原則に基づく、仕事や生活の質の豊かさを感じるように舵を切るべきである。

その具体的で、多くの人に受け入れられる行動の一つとして、筆者は木を植える事を選んだ。

木を植えるという具体的行動を通して、自然を犠牲にした経済成長よりも自然とともにある「もう一つの豊かさ」に向けて、日本人の歴史的文化的背景や仏教・インド哲学の思想も織り交ぜつつ、新たな価値観への転換を説く一冊。


シューマッハ-の「スモール・イズ・ビューティフル」、辻信一の「スロー・イズ・ビューティフル」にも通じる、分りやすくも含蓄に富んだ本である。